第14話 femme fatale 3

「リチャードが不愉快な話をして悪かった。もう少しハンスの様子を見ながら話すべきなのに。本当に勝手な奴だ。

、、お前の質問に、当時二人と親交があった俺の視点から答えるよ。

ジャニスとリチャードはそのころ喧嘩していてな。原因は確かにリチャードがわざわざ自分のキャリアには必要ないコンクールに出て、ジャニスを追い落としたのがきっかけだが、、リチャードの兄が、、ミシェルが生まれつき心臓が悪くてな。あと二ヶ月持つかって体調だった。リチャードは安心させたかったのもあったのかもな。でもジャニスにしてみれば、彼女は繊細な人だったし、リチャードの事情を知っていても深く傷ついた。」


「私の個人情報を勝手にお前の解釈で話すな。」

リチャードはビリーに言ったが、ビリーは無視してようやく顔を上げたハンスに続ける。


「、、でもリチャードは自分より表現力に秀でたジャニスを羨んだりもしていたからな。追い詰め方が苛烈だったし、恋人として酷いのはその通りだ。、、ジャニスはそのあと、別れないまま複数の男とデートした。、、彼女に悪気はない。リチャードを試すためにだ。

、、たがリチャードはそれに激怒してな。一方的に別れを告げてから,これ見よがしに複数の女性とデートし、更には、このときからは本気でコンクールで叩きのめしてジャニスを追い込んだ。

、、俺もその時ばかりはこいつと縁を切ろうとしたし軽蔑したよ。これが俺の観点からの話だ。」


ビリーの落ち着いているが力強い低い声での語りを聞きながら、ハンスは散らかった思考を整理しようと、途中から飲む気力もなくなり手を伸ばさなくなったサングリアを見つめながら努力した。

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