第164話

3人は、待ち合わせ場所の学食に着く前に鉢合わせたため、学食は通過して、ケネスの研究室へ向かった。リチャードが顔が知られた有名人なので、話自体は研究室でするようだ。


「その辺好きに座って。紅茶出すよ。」

ケネスは二人に微笑み、書籍や論文で散乱したテーブルから、書類を取り出す。


書類は古いようでやや茶色くなっていて、クリアファイルに入っている。カザリンがチラリとみると、リチャードの、25近く前に受けたGCSEのスコア表のようだ。青年と言うより少年に近いリチャードの白黒写真が添付されている。


「ふふ、、すごく緊張した顔してるわね。昔の写真。でも面影はしっかりあるわ。」


カザリンは写真の幼いリチャードがこちらを睨む調子なのを見てくすりと笑う。


「あーー、、まあね。演奏なら慣れてるが勉強の試験は慣れてないからな。」


リチャードは気まずそうに片手で頭をかきながら、長い足を組んだ。


「何言ってんだ、試験だからじゃないだろ。お前刺々しくて構内でも怖がられてたじゃないか。黙ってるとただでさえ嫌味なくらい顔が整ってるから怖いのにな。すぐ人に突っかかるわ、警戒心は強いわ、野犬かよ。って感じだったな。」

ケネスは紅茶を二人に置いてから、自分の作業机のデスクトップパソコンを起動させる。


「ええっ?そう、なの??人と話すの大好きじゃない。昔は違ったの?」


「ケネス、、余計なことを、、。まあね、、。

ヴァイオリンのこともあるし顔も目立つからな。マスコミに追いかけられたり、学校でも街中でも珍しいもの扱いでうんざりだったんだ。

寄ってくるやつはみんな、私を見てるんじゃ無く、私の顔とヴァイオリンと、有名であることと、家に金があることしかか見てないんだから、、。兄さんも学校では一緒だったけど、体が弱い兄さんにそれで心労かけるのも嫌で。


舞台に上がれば人と競うか大人と渡り歩くかだし、、まだ15かそこらでナイーブだったし、ずっとギスギスして攻撃的になって、人を遠ざけて自分を保っていた。


あんまりしつこいと掴みかかったりはしていたよ。良くなかったとは思う。


、、本当は人が好きだし話したいんだって素直になれたのは、癪だけどそいつのおかげなんだ。、、ケネスは自分が家柄も富も容姿も良いし、あんまり周囲に影響されない奴でね。

そんな私にも臆さずに接してきた。、、、ヴァイオリン弾いてみてくれとか、サインくれとか他のやつみたいに言うんじゃ無く、なんの曲が好きなのか、君はヴァイオリンの魅力はなんだと思ってる?っていきなり席が近くなったら聞いてきた。、、私の考えに関心を持ってくれていた。


まあ変わり者同士お近づきになったわけだ。

ケネスもケネスで変わっていたからな。」


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