第250話
ヨハンが、物資を運搬に出かけた現地人スタッフとともにワゴンに乗って出かけたサクマを見送ってからパソコンで司と医療品の在庫や需要の確認をしたりしながら引き続きメールチェックや在庫管理をしていると、隣の席のカレンの業務用ケータイが鳴った。カレンはトイレで席を立っている。
「はい、、。代理で取りました、カレンさん、席を立っていらっしゃいます。伝言なら承り、」
「ヨハン!?
、、その、、大変なことになった。。、、ルノーに繋いでくれないか?」
「サクマさん。ヴェルレーヌさんに?、、緊急なんですね。わかりましたが、、ご自分でかけた方が早いのでは?」
「市民に受け取りを頼んだけど強盗に割りいられて、、捕まってしまった。副代表の番号を追跡されたら困るし、、お願いする。」
「えっ!!さ、、サクマさん大丈夫なんですか?わ、わかりました!!繋ぎます!」
「ヨハン?どうした?」
エイドリアンがヨハンが険しい顔で叫ぶのを見て訊ねる。
「、、サクマさんが強盗に襲われました、、物資を盗られそうなのかも。ヴェルレーヌさん呼んできます!僕が呼んでくる間電話お願いします。」
「そんなわけにいかん!私は君のガードで、」
エイドリアンは事態を聞いて余計に嫌な予感がして立ち上がったが、ヨハンはリチャードが怒ったときを思わせる視線でこちらを睨む。
「僕よりサクマさんが危ないんだ!!融通利かせてください!!僕だって銃は習いましたし護身ナイフもつけてます。防弾下着だって父さんがうるさいから着てるだろ!」
「ヨハン!!」
「何怒鳴りあってるの。ヨハンもらしくないわよ、落ち着いて。ケイスケがどうしたのよ。」
「電話代わりに出ました。、、聞けばわかりますよ。僕はヴェルレーヌさん呼ばないと。」
ヨハンがドアを開けた瞬間、思い切り開けたため、戻ってきたカレンがぶつかりそうになり訊ねる。ヨハンに言われ、カレンは急いで電話に出る。長い足を活かしかなりの速さで駆けて行くヨハンをエイドリアンは追って行った。
ヨハンは副代表のデスクに行ったがおらず、先ほど徒歩で市民へのヒアリングに向かったと事務員から聞き、街に出た。辺りを見回すがいない。
「はあ、、はあ、、いない、、電話するか、、」
ヨハンは焦って泣きそうな気分になりながら業務用ケータイを取り出す。
いかにも街に慣れなそうな、品の良い欧米人のヨハンに早速物色するように眺める市民や強奪目的のような男の視線が集まっている。ヨハン自身は全く気が付いていないので、エイドリアンは当て所なく走りながら電話するヨハンを護るため目を光らせながら、ついて行く。
(くそ、、頭は良いし思ったより胆力があるようだが、無警戒な品の良いお坊ちゃんだな。。あのリチャードの息子だし当たり前か、、。
このままふらふらされたらいくらなんでも、)
「ヨハン!!何してる!帰れ!街に出るなと行ったろ!!!」
後ろからルノーの声がし、ヨハンは弾かれたようにそちらを向き走り寄る。
場慣れしたルノーと、ルノーと一緒に回っていた看護師のやはり場慣れしたスタッフ、ルノーの護衛も兼ねて一緒にいる現地の戦闘経験もあるスタッフがヨハンを囲み、先ほどのヨハンを物色したり狙っていた視線が引いて行く。それでエイドリアンはようやく少し安堵した。
「貴方を探していたんです!!さっ、、サクマさんが!!!物資運搬中に人質に、、」
「わかってる。さっきカレンからも電話あった。だから事務所に戻ろうとしてる。、、こっちで上手くやれば多分ケイスケは助かるよ。、、相手はハマスやイスラエルじゃあなくて市民の強盗みたいだ。無防備にふらふらする君をじろじろ見ていたような、ね。」
ヨハンは自分より背が低いルノーの肩を掴み揺らして必死に話したが、ルノーはお見通しと言った口調で返し、丁寧にヨハンの手を離すと走って事務所の方へ向かう。
「えっ?僕が?」
「やっぱり気づいてなかったのかい。頭は良いけど警戒心は薄いね。育ちが良い証拠だが、、。
エイドリアンさんがいなきゃ身包み剥がされて奪われていたかもな。、、市民は寝る場所すらない人も多い。市民同士だって奪い合いや強奪している。君みたいな金持ちそうな外国人は金塊に見えるだろうね。わかったら君も戻、、
いや、、君、ケイスケに合流して。君は場所わかるんだろ?徒歩でも少し遠いけど行けると聞いてるよ。」
ルノーに突然人質に合流しろと言われ、ヨハンは耳を疑う。
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