第271話
「、、私、明さんが過労で心臓悪くしたとき、自分の父をすごく憎んだんです。、、司が勉強が出来すぎて、私立の小学校に入って、、ギフテッド支援がある学校なのもあり、お金がかかるから明さんがより一層稼ごうと頑張って、、でも司はその学校の勉強すらつまらなそうで、、そんな中、父が司は頭が良いからもっと良い環境にしろとか明さんに圧もかけてきて、、そのせいで明さん、疲れから風邪をこじらせて心臓に来て倒れたんです。
、、でも明さんが、一度日本に帰って父と私が納得するまで話してきてって、、明さんが倒れてるのに言ってくれて、、司と一緒に日本に帰って話してよかったです。
、、あのとき、病気の明さんを1人にできないって父ときちんと話さなかったら、、私ずっと父と仲悪かったかもしれません。」
「、、そのことはうっすら知ってるが、、ヨハンのガザ行きとは話が繋がらないけど?」
「、、先生は、マリアさんがヨハンくんを産んだのもあり早く亡くなってしまったの、どうやって乗り越えたんでしょうか。
、、ゾフィーさんに先生の精神状態を心配されても、助けを借りながらヨハンくんと向き合ったからじゃないかな、、と私は勝手に想像していて。
、、先生もしかしたら、ヨハンくんを産まなければマリアさんの子宮がんが悪くならなかったのにと、ヨハンくんと一緒にいなくなりたいと思ったんじゃないでしょうか。先生はヴァイオリンの帝王なんて言われて、外見もダンディでカッコ良いけど繊細な人柄だもの。違いますか?」
礼の黒い大きな瞳はリチャードを怒らせるのではという不安も、リチャードを説得したいと言う強い意志も滲ませている。リチャードは、礼の言及が当たっていただけに礼を我慢できずに本気で睨む。マリアが死んだ後、一時期躁鬱で薬が手放せなくなったのはまさに礼が言及したことが原因だ。でも、罪ない、そして可愛らしいヨハンのことを憎むこともできず、代わりに自分のせいでマリアは死んだと言い聞かせてしばらくは生きていた。
「、、君の妄想だね。言っていい事と悪いことがあるよ。優秀で可愛い長年の愛弟子でも。ヨハンに今のことを言ったら君を師弟関係から切る。」
「、、言うわけないわ。ヨハンくんも先生に似て繊細だもの。、、、図星ですね。そんなにお怒りになって。
、、大事な手が痛んでしまうからやめてください。お願いします。、、デリカシーにかけました。すみません。」
礼は、リチャードが礼に声を荒げたいだろう感情を堪え、テーブルに置いた自分の右手を左手の深爪に近いほど切ってあるが故に、鋭い先端で血が出そうなほどつねっているのを見て、礼の片手をそこに優しく添える。
「、、明に言われたか?君が私に話せと。、、あいつは心理把握は上手いものな。、、それに優しい心根だ。だからヨハンも懐く。ヨハンも優しい子だから。」
リチャードは睨むのをやめて伏目になり、一旦気持ちを落ち着けながら手をつねるのをやめて礼をいつも通りの視線で見つめる。
「、、私が話す方が先生も聞いてくださるかも、とは言われましたけど。お話ししたいと決めたのは私です。
、、明さんならまた違うこと言うと思うし、、明さんは今回は私と意見違うんですよ。父親気分なのかガザ行きは反対してます。先生にはヨハンくんともう少し話すべきとは思ってるみたいですが。、、私が行ってきたら、って言って反論されましたから。」
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