第30話 雨だれ3

ミカエルは、雨がひどいため車で思い当たる場所を見回っていたが、細かい路地や店についてはコートを羽織って傘を持ち、中まで入ってリチャードを探した。


1時間半探し、夜の1時を回ったが見つからずに電話も相変わらず繋がらず、途方に暮れた。

途方にくれてぼんやり前を見ながら歩いていると、見覚えのある背格好の男性が目に入る。駅からミカエルの家へ向かう街路のベンチに、小さい折りたたみ傘だけで、頼りないカーディガンとシャツにズボンで座り込むリチャードだった。あまりに取り乱しているらしく、自分が顔が知られているのに帽子やメガネ、マスクなどの対策もせずに深く俯き、折りたたみ傘もささずに膝に置いて、肩を震わせている。さむいからと言うよりは、泣いているようだ。


「リチャード!!傘もささずにこんな薄着で何をやってるんです!ヨハンなら私の家に来ています。スタンツがファストフード店で見つけてからあなたに電話をずっとしていたのに。」


ミカエルは、自分の服も濡れるが構わず隣に座って、一時的に自分の厚手のコートをリチャードの肩にかけると、自分の大きい傘を、二人入るように気をつけて開く。


リチャードは身体は丈夫なものの、流石にドイツの寒い秋に雨の中何時間も薄着で歩いたせいか、軽く咳をしており、顔も紅潮している。

風邪をひいたようだ。


「そう、、だったのか、、頭が真っ白で、、全然わからなかった。。。ごめん。でも、良かった、ヨハンが無事ならそれで、、。」


リチャードはミカエルより身長が15cmほど高いため、ミカエルのコートをかけるのでは小さかったが、そのままミカエルは熱がある様子のリチャードの腕を支えつつゆっくり歩き出す。しかし、予想よりも熱が高かったらしく、リチャードはぐらりと身体が揺れ、ミカエルは自分より背が高く体格が良いリチャードを片手で咄嗟には支えられずに、少し遅れて傘を放り、膝をついてリチャードの両肩を支える。


「リチャード!!しっかり!リチャード??」

ミカエルは叫びながら両肩を持ち揺らしたが,熱で荒い呼吸が繰り返されるだけで、レイノルズは目を覚まさない。


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