第26話 裏面2
「どうしてですか!!ヨハンから聞いた条件通り、入賞はしました!!ヨハンみたいにメダルは取ってないですけど。。お願いします。この通りです。」
リチャードは、コンクールのファイナル後にイザベラから頭を下げられたが、首を振る。
「頭を上げてくれ。、、無理なものは無理なんだ。言葉が違ってしまい申し訳ないけれど、スケジュールもカツカツだから、、」
リチャードが断る理由をなんとか捻り出しつつ話していると、イザベラが6位で、選外ながら聴衆賞を取ったのに対し、2位で受賞したヨハンがこちらにつかつかとやってくると二人の間に入る。
「どうしてだ!!約束したじゃないか!
イザベラが10位以内にファイナルで入って、何かしらの賞を貰えば一回はレッスンしてくれるって!」
「できないものはできない。約束が違うのは謝る。私があまりスケジュールを調整できなくてすまなかった。
二人とも時間も遅いんだし明日も学校だろう。さっさと支度して帰らないと。」
リチャードは話を逸らしたが、感情表現がはっきりしたイザベラは泣き出す。
「、、どうしたんだい、二人とも。何か騒いで、、レイノルズさん!?、、ああ、そうか。ヨハンくんのお父さんでしたね。」
二人のギムナジウムでの個人レッスン担当の、ドイツ国内の有名オケのコンマスのミュラーがやってきて、リチャードに一瞬狼狽えたものの、すぐに落ち着きを取り戻して泣いているイザベラを宥めた。
「ミュラーさん。先日はコンチェルトでお世話になりました。息子のこともありがとうございます。ご指導の賜物です。私は教えるのはあまり上手くないので。」
リチャードは、10才以上年上で、演奏も堅実な上、人柄も良いので尊敬しているミュラーに微笑む。
「ミュラー先生、父は、、イザベラにコンクールに入賞したら一回レッスンをしてくれると約束したのに、、破る気なんです。
僕では聞く気もないようです。父とプロの奏者として親交がある先生から何か言っていただけませんか。先生は、、複数の先生につくのは賛同してくださる方でしょう。僕だって先生にも、父にも教わっている。」
ヨハンは父を睨み、次にミュラーにも強気な視線を向けて説得を試みる。
(、、レイノルズさんによく似た意志が強そうな目だ、、。それにやはり歳の割に大人びているし利発だな、、この子は。ヨハンの気持ちもわかる。けれどレイノルズさんは、、多分イザベラの才能を見抜いて、、。)
ミュラーは色々と三者の考えに思いを馳せつつ、リチャードに視線を向ける。
「レイノルズさん、イザベラはまだヨハンほど技術がありませんが、、吸収力はピカイチです。
私としては一回見てあげてほしいです。
ですが、、ご予定もありますし、、楽器のレッスンは先生との相性は大事ですね。
、、もう一度ぜひ考えてみて頂ければ嬉しいです。」
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