第28話 雨だれ
「ヨハン?こんな時間にどうしたんだい?」
ヨハンが、24時間営業のファストフード店でケータイでゲームをやりながらチュロスとオレンジジュースを口にしていると、近所の友人、ベネディクトがやってきた。母親のコンスタンツェと、妹のエリザベトも一緒のようだ。
「ベン?、、ベンこそ家族揃ってどうしたんだよ?」
「あら、ヨハンくん。こんな時間にレイノルズさんが出歩かせるなんて珍しいね。心配症なお父さんなのに。
、、、元気が少しないように見えるけど、大丈夫?」
コンスタンツェは、父のオーケストラの同僚で有名フルーティストのミカエルの妻で、出版社で編集長をこなすいわゆるバリキャリだ。
家が近いこともありヨハンとベネディクトは幼なじみで、家族ぐるみで親交がある。家出してきた今会うのは非常に気まずい。
「それは、、、父とレストランで食べてから帰宅したけれど、父が帰ってすぐ寝てしまって。
僕は明日の授業の予習をしてましたがお腹が空いたからちょっと父に言わずに出てきました。食べたら戻ります。
皆さんは?スタンツさんはお仕事後ですか。」
ヨハンは上手く取り繕いつつ、話題を逸らす。
「私は仕事後にこの子達と、ミカエルの木管アンサンブルのコンサートに行ったのね。帰りに4人でレストラン行く気で私が運転したけど、ミカエルが車の中で寝ちゃってね。私、家事が苦手だから。ここで買って帰ろうかなと。
、、一人じゃ危ないから。ベン、ヨハンくんと一緒にいて。」
「わかった。僕にはサーモンとイクラのサンドにしてよ。あとスープとチキンもつけて。」
ベネディクトはコンスタンツェと、後ろをついていくまだ5才のエリザベトを見ながら言うと、ヨハンの隣に座る。
「嘘だな。あのお前のことばっかりなレイノルズさんがお前が起きてるうちに眠るはずないね。、、母さんにも多分嘘だってバレてるぜ。」
ベネディクトは勝手にチュロスの一部を折ると、話してから口に入れる。
「あっ!!僕が買ったのに。。、、ふん。
僕のことばっかだから嫌なんじゃないか。ヴァイオリンじゃなければ僕を過度に心配するか、しかない。、、、別にここで寝れば良いんだし帰らないからな。
お前は良いよな、スタンツさんもミカエルさんもそんなに心配症でもなさそうだし、興味が仕事とベンとエリーゼに分散されてる分。うちは二人だけだからさ。。」
「帰らないなら多分うちの母さんがうちに連れてくだけじゃないの?で、周り回ってレイノルズさんが迎えに来るだけだ。
、、まあ、それはそうかな。兄妹な分、分散はされてるか。」
ベネディクトは雨が降る外を見ながら話す。
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