第40話 山頂で3

サイモンは、女性として気になっており、話す機会を増やしたいクリスティーンにばかり、乗る直前まで話しかけていたが、下山用ロープウェイが来ると、ミカエルの隣へ進み半ば強引に、二人が定員のロープウェイにミカエルと乗った。


「クリスティーンと乗りたかったのでは?四捨五入すれば40の男とそんなに乗りたかったんですか。」


ミカエルは心底不思議そうに尋ねる。やはり、最近サイモンがミカエルの異変に気がついている自覚はないようだ。隠せている気でいるらしい。


「だってこういうときじゃないと話してくれなそうだから。


、、ミカエルさん、先々月からコンサート前に錠剤飲んでますよね。それにそれくらいの頃からいつもほど演奏時に指揮や周りのアンサンブルへの反応がよく無い感じします。ミカエルさん普段がキレキレすぎるからそれでも良い演奏だけど、、。

身体どっか良くないんスか?さっき話にも出てましたけど、前に風邪拗らせたときみたいに無理は良くないっスよ。

、、顔色は悪くないですけどね?」


サイモンに顔を覗かれながら言われ、普段はガサツで荒っぽいのに、他人の体調や調子にやはりサイモンは敏感だとミカエルは感心しながらも内心焦る。


「、、ああ、、最近すこし頭痛がね。

、、眼精疲労みたいなので。病気ではありません。ありがとう。」


ミカエルは言ったが、目がサイモンから逸れ、サイモンの後ろの窓の外を見つめる。ミカエルは冷静ではあるが率直で嘘がつけない性格だ。

話からも嘘なのは分かっていたが、サイモンは怒りやら無力感やらが抑えられず、立ち上がる。


「嘘つきましたね。目が逸れました。

それに、あの錠剤が頭痛薬じゃないの、俺知ってますよ!、、俺んちのアル中のクソ親父が飲んでた精神系の薬ですよ??

、、答えてください!俺じゃ力不足なんスか?ミカエルさん?」


「、、頑丈な作りとはいえ、随分高い場所にいるので危ないですよ。立ち上がらないで。」


ミカエルは話を逸らそうと言ったがサイモンは首を振る。


「別に危なくありません。高さはあるけど四方に壁もあるし天井も床もしっかりしてますから。ミカエルさん、」


「あなたにも聞かれたくないことがあるように、私にも聞かれたくないことがあります!

きちんと演奏はしていますから、プライベートを話す必要はないでしょう?」


ミカエルにいつになく強い口調で言われ、サイモンはとりあえずは黙ったが納得いかず、その後2人は口を利かないまま帰路についた。

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