第68話 ウルの成長?
ソフィアたちと共に家へ戻って来ると、その手前で突然アメリアに抱きつかれる。
「トーマさん! やっと帰って来てくれましたぁぁぁっ!」
「えっ!? アメリア!? ど、どうしたんだ!?」
「どうしたじゃないですよぉぉぉっ! お店……お客さんが物凄く待ってますーっ!」
「えぇっ!?」
いや、アメリアはそういうけど、店は閉まっているし、お客さんは誰も居ないんだが。
「えっと、お昼前に来たらお店が閉まっていて、トーマさんも居なくて、それなのにお客さんの列が凄くて……で、私が並んでいる順番を記して、一旦帰っていただいたんですよー!」
どういう事かと聞いてみると、アメリアが機転を利かせてくれたらしい。
その証拠に、
「あら? 今日はお店はお休みなのかしら?」
アメリアと話している間にも、二人組のお客さんがやって来た。
「すみません。今日はちょっと用事があって、開店が遅れているんですが、出来るだけ早く準備をするので、少しだけお待ちください」
「と、トーマさん。この方の前に、二十人くらい待っているお客さんが居るんですけど、大丈夫ですか!?」
「あぁ、任せてくれ。今日のランチは持ち帰り可能な物にしよう。容器の回収は俺がするからさ」
「だ、大丈夫ですか? ……いえ、トーマさんがやると言っているんですから、私も頑張りますねっ!」
そこからはとにかくスピード勝負で、冷めても美味しくて、運び易く、見た目も悪くないクラブハウスサンドを全力で作る。
前にホットサンドを出しているので似ていると言われればその通りだが、毎日違うものを出し続けるのは無理なので、たまには許してもらおう。
「アメリア、出来たよ! こっちが二人前で、こっちは四人前! 次は何人前だっけ!?」
「次は、三名で来店されていたお客さんが二組です! ではこれを配達に行ってきますね! あと、帰りに容器を買い足して来ます!」
「あぁ、すまない! 申し訳ないが、頼むよ」
大急ぎで作った六人分の料理を持って、アメリアが配達に行ってくれたので、次の料理を作りながら、エプロンに苦戦しているウルを呼ぶ。
「ウル。やってあげるから、おいで」
「でもパパは、おりょーりで、いそがしいでしょ? ウル、がんばる!」
そう言って、ウルが自分でエプロンを着ようと頑張っている。
これが子供の成長という奴だろうか。
料理を作る手は止めずに、ウルの言葉でほっこりしていると、
「お兄ちゃん。机の設置完了したよー!」
「助かる! ソフィアは、店の前で待ってくれているお客さんを席に案内して、飲み物をお出ししてくれないか?」
「任せてっ!」
外で作業をしていたソフィアが戻って来たので、そのまま接客をお願いする事にした。
それから料理を作り、時間は掛ったものの一人でエプロンを着られたウルを褒めちぎり、お店に来てくれたお客さんに料理を提供してもらう。
……って、気付いた時には最初に来た二人以外にも、結構お客さんが来ていたんだな。
それから、戻って来たアメリアがまた配達に行ってくれて……最終的に何とか、配達とお店のお客さんへの料理の提供を終わらせる事が出来た。
「みんな……特にアメリアは、今日もありがとう。家の場所を教えてくれたら、籠の回収は俺が行くから、ゆっくり休んで欲しい」
「あはは。これくらい大丈夫だよー」
「しかし……」
「まぁまぁ、本当に大丈夫だから。あ、それなら……散歩を兼ねて一緒に行きます?」
「アメリアが良いなら、そうしよう」
三人に感謝しながら、まかない料理を作り、少し遅めの昼食を食べる。
しかし日本だったら、紙袋や紙の箱で、配達に行った容器を回収せずにそのまま捨てて貰えるのだが……ここは何とか改善したいところだな。
そんな事を考えながら、夕方に皆で散歩をしながら、容器を回収していった。
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