第47話 ソフィアとお買い物

 エプロンを外して、先ずは家具屋さんへ。

 暫く家に居る事になりそうだし、ソフィアのベッドを買う事にして、アメリアには夕方に来てもらう事にした。


「ソフィア。先に言っておくけど、実家にあるような天蓋付きのベッドとかは無いからな?」

「別にそんなの要らないよー? ソフィアが欲しいのはお兄ちゃんの温もりなんだから。……そういう意味では、ソフィアのベッドは要らないよ? お兄ちゃんと一緒に寝れば良いし」

「いや、ウルも居るし、流石にそれは狭いと思うんだ。実家のベッドとは違って、大きく無いしさ」

「……お、お兄ちゃん。そろそろ聞いても良いかな? そのウルって女の子の事」


 ウルの話を出した途端に、ソフィアが恐る恐ると言った感じで、俺と手を繋いで歩くウルに目を向ける。

 そういえば、変な話になってしまったから、説明出来ていなかったな。


「一言で説明するのは難しいが……ウルは俺の娘なんだ」

「――っ!? そ、それは、隠し子という事ですかっ!? お兄ちゃん……ソフィアに隠れて、昔からアメリアさんと会ってたんだっ!」

「ん? アメリアは関係ないぞ? アメリアはこの村へ来た時に、魔物に襲われている所へ遭遇して、助けたんだよ。それ以来、俺のお店を手伝ってくれているんだ」

「あ、なるほど! 恋人ではなくて、店主と従業員……イケるっ! なら、まだまだ大丈夫。ウルって子に負けず劣らずの可愛い子供を産むんだから……」

「ん? ソフィア?」

「あ、いえいえ。何でもありませんよ?」


 よく分からないが、暗かったソフィアの表情が途端に明るくなり、物凄く喋り出す。

 あー、ソフィアはいつも、こんな感じでテンションが急激に変化していたっけ。

 暫くソフィアの話を聞きながら歩いていると、家具屋さんに着いたので、早速ソフィアのベッドを見繕ってもらう事に。


「んー、トーマさん。二人の関係は聞かないけど、アメリアは大丈夫なのかい?」

「アメリア……は関係ないと思うんだが?」

「えぇ……あんなに分かりやすいのに。えーっと、同じサイズのベッドにしておくかい? 並べた時に高さが同じ方が良い……よな?」


 並べた時に……か。暫くはソフィアが使うけど、おそらく実家へ帰る事になるはずだから、その後はウルが使う事になると思う。

 となると、ウルは俺にくっつきたがるだろうから、きっとベッドも並べるよな。


「そうだな。同じ高さので頼む」

「やったー! 久々にお兄ちゃんと一緒に寝られるー!」

「お兄ちゃん!? え、妹さんなのか!? あんまり似てないのと、ブラコン……こほん。いや、何でもないんだ。じゃあ、同じベッドを用意しておくよ。ただ、ちょっと立て込んでいてね。明日でも構わないかい?」


 明日になるのか。

 忙しいのは仕方がないから、今晩をどうするか考えないとな。


「わかった。では明日に……あ、そうだ。いくつか椅子が欲しいのだが」

「妹さんの椅子かい?」

「いや、それもあるけど、店の外で並んで居る人が座れるようにしようと思って」

「あー、なるほどね。トーマさんの店は、旨いけど結構並ぶんだよなー」

「すまない。いずれテーブルも増やそうと思って居るんだが……まだアメリアと相談中なんだ」

「アメリアなら、遠くない内に夫婦……あ、いやその、何でも無いです。何でも無いんですよ。えっと、トーマさん。妹さんを宥めていただけると……」


 ソフィアを宥める? 何の事かと思ってソフィアの顔を覗いてみると、


「ん? お兄ちゃん。ソフィアの顔がどうかしたー? あ! もしかしてソフィアが可愛いから、見つめたくなっちゃったのー?」


 普通に笑顔を浮かべ、小首を傾げている。

 んん? 家具屋さんが怯えていたような気もしたんだが……気のせいか?


「と、とりあえず、その椅子も含めて、明日お届けするよ」

「助かる。すまないが、頼むよ」


 ひとまず会計を済ませて三人で店を出ると、ソフィアに村を案内しようと思って、散歩する事に。

 暫く歩くと、ウルが甘えた声で呼び掛けてきて、


「パパー」

「ん? あぁ、そろそろ疲れたよな。おいでー」

「ありがとー!」


 みなまで言わずとも抱っこだと分かり、抱きかかえる。


「……くっ! お兄ちゃん。ソフィアも疲れたのー!」

「そうか。じゃあ、そろそろ帰るか」

「抱っこ……抱っこは!?」

「えぇっ!? じゃあ、おんぶ……か?」

「それでも良いですっ! えへへ、お兄ちゃんのおんぶー! 懐かしいねー!」


 あー、言われてみれば、ソフィアが幼い頃はおんぶや抱っこしてあげた事もあったな。

 何故かソフィアが幼児退行している気がするのだが……何とか無事に帰宅する事が出来た。

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