第40話 変態に気に入られるアメリア
「おらぁぁぁっ! 追加報酬の金貨は俺の物だっ!」
冒険者のうちの一人、剣を持った男が俺に突っ込んで来た。
最優先なのは、ウルとアメリアの命を守る事で、ナギリとコズエの力を使えば、こいつらを倒して二人を守るというのは達成出来る。
だが、幼いウルに……目の前で母親を亡くしたウルの前で、人を倒すというのは出来れば避けたい。
冒険者の命を助けるなんて甘い事は考えていなくて、単純にウルとアメリアに変なトラウマを植えつけたくないからな。
「よっ……≪ハイ・ウインド≫」
「なっ!? どうして子供用の小杖で、こんな突風を……ぐゎっ!」
コズエの力を使った状態で強風を起こす魔法を使い、近付いて来た男が後ろへ吹き飛ぶ。
槍使いの男が巻き込まれて、一緒に後ろへ転がっていき、地面に倒れた。
よし。血も出ていないし、あれくらいなら二人が見てしまっても大丈夫だろう。
同じ要領で、次に迫って来ていた斧使いや短剣使いも吹き飛ばし……残るはレオンと馬車の中の奴らだけだな。
「くそっ! どうしてお前は、小杖しか持たないのに、そんな魔法が使えるんだよっ!」
「小杖で何度も何度も魔法の練習をしてきたからな。努力の賜物だよ」
「はっ! 練習? バカが。スキルさえあれば、努力なんてしなくても魔法は使えるのに」
レオンの言う事は、半分正解で半分誤りだ。
確かにスキルがあれば、魔法は使える。
だけど、普段から練習しておかなければ、魔法の精度が大きく変わって来るし、応用だって思い付かないだろう。
努力不足で普通の使い方しか出来ないのであれば、俺に中級魔法は効かないが、レオンはどうするのかと思ってみていると、馬車に向かって声を掛ける。
「ふ、フランクリン様。いかがいたしましょう。冒険者たちが皆倒れてしまいましたが」
「ふむ。ならばお前が行けば良いではないか。あの女性はお前の婚約者なのだろう?」
「そ、それはそうですが、そのお力添えを……す、すみません。何でもありません」
あの馬車に乗っている者との関係性は分からないが、アテが外れたのか、レオンが若干しょぼくれながら杖を構えた。
「アメリア! 最後の警告だ! 今からでも遅くない! 俺のところへ来い! アメリア!」
「お断りします」
「バカが……≪ファイアーボール≫」
いや、バカはお前だろ、レオン。
正面から真っすぐにファイアーボールを撃つだけでは、俺に効かないというのを覚えていないのだろうか。
「≪ハイ・ウインド≫」
風魔法でレオンが生み出した火球を上空へ逸らし、今度はこっちの番だと小杖を構えたところで、
「――っ! パパ……」
「ウルちゃんっ! きゃあっ!」
「えっ……アメリアっ!」
突然、背後に気配が生まれ、振り向いた時にはアメリアと共にその姿が消える。
しまった! 気配を消したり、瞬間移動するような類のスキルか!
「ぱ、パパー! おねーちゃんが、ウルをかばって……」
「そうか、すまない。俺がレオンに気を取られてしまって……」
「えっ!? あ、アメリアは!? フランクリン様、アメリアはどこにっ!?」
ウルを抱っこして周囲を見渡して居ると、レオンが騒ぎ出した。
どうやらレオンも何が起こったか分からない……というか、何も知らないのか。
「パパー! あそこ! やねのうえー!」
「アメリアっ! おい、そこの女! アメリアを放せっ!」
「残念ながら、フランクリン様との契約がありますので」
契約……冒険者か?
先程の男たちとは強さの次元が全く異なる女性が、ぐったりしたアメリアを抱え、馬車の屋根から奥側へ飛び降り、俺から見えない位置へ。
アメリアは気絶させられているのか? 早く助けないと!
先程の二の舞を避ける為、コズエの力を使いつつ、ウルを抱っこしたまま馬車に向かって走り出す。
「ほほぅ。お前の婚約者と言うから、中古だろうし、年増だと思っていたが……これは中々ではないか。十六歳くらいか?」
「へ? は、はい。その通り、アメリアは十六歳です」
「そうかそうか。成人なのに、十四、五歳に見える少女とは良いではないか。良し、この女は僕の妾にしてやろう」
「はい? い、いえ、ですからアメリアは俺の婚約者で……」
「うるさいな。僕が気に入ったと言っているんだ。口答えするなっ! ……≪クリムゾン・フレア≫」
レオンが馬車の中に居る誰かと話をしていると、突然その身体が紅く光り輝き……大きな火柱が生まれた。
え……? 一体、何が起こって居るんだ!?
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