第8話 異世界の村で始める新生活
翌朝。家に泊めてもらった上に、アメリアが朝食まで作ってくれた。
ちなみに、レオンのファイアーボールが爆発したのがこの家の真上だった事と、水の膜で家を覆って音が遮断されていたからか、アメリアも村長も昨晩の事には全く気付いていないようだ。
作ってもらった朝食を美味しくいただき、礼を言って家を出ると、外で数人の村人に囲まれる。
「兄ちゃん、昨日はすまなかった! あの後、レオンが全て喋ったよ」
「何でも、アメリアの家に兄ちゃんが居た事を嫉妬したんだってね。……はぁ。レオンはもう二十歳になるというのに、中身が子供ね」
「けど、ちゃんと罰を与えておいたから、心配しないでくれ」
何事かと思ったら、昨日の夜にレオンの魔法で集まっていた村人たちらしい。
レオンの言葉を鵜呑みにして、何も確かめずに俺を敵視してしまったので謝りにきたのだとか。
「いえ、気にしないでください。それに、あの状況ではレオン言葉を信じでしまうのも仕方ないですよ」
「そう言ってくれると助かるよ。ところで兄ちゃんの名は……トーマっていうのか。南の……あぁ、あの空き家に住むのか。ワシはモルガンだ。鍛冶屋をやっているから、何かあったら来てくれよな」
「うちは酪農をやっているんだよ。牛乳なんかが欲しかったら、うちへ来ておくれよ」
集まっていた村人たちと互いに自己紹介をしていると、家の中から村長が出て来た。
「随分と家の前が騒がしいけど、何かあったのか?」
「おぉっ! 村長……治ったのか!」
「あぁ。トーマさんが俺に使ってくれたポーションでな。まったく……レオンの奴に毒を盛られるなんて、俺もまだまだ甘いな」
「は? 毒!? ……アイツ、全部話すって言っておいて、話してねーじゃねぇかっ! すまん、村長! 快気祝いはまた後でなっ!」
そう言って、モルガンさんたちが何処かへ移動する。
おそらく、何処かで罰とやらを受けているレオンの所へ行くのだろう。
「……トーマさん。結局、モルガンたちは何の用事だったんだ?」
「えーっと、新たに村へ来た俺に自己紹介してくれていたんだよ」
「そ、そうか。まぁとりあえず、今後も何かあったらうちへ来てくれ。何でも相談に乗るからな」
改めて村長に礼を言って、今度こそ南の家へ。
「さーて。これから、ようやく私とトーマの生活が始まるねっ」
「あぁ、そうだな。俺の異世界での料理人としての生活が始まる訳だが……まずは、これからやる事を整理だな」
「そんなの決まってるよー!」
「あぁ。先ずはこの世界の食材や調味料を知る事だろ?」
ハイランド家に居る時は、美味しい料理が出てきていたものの、料理に関する質問なんて一切出来なかったからな。
これは店を開く前に、アメリアや村長に食べてもらい、感想を聞かせてもらわなければ。
都市部と山間部では好まれる味も違うだろうし……そうだ。この村での価格設定も相談しないとな。
「……マ、トーマってば!」
「え? どうしたんだ? コズエ」
「どうしたんだ……じゃなくて、トーマが料理好きなのはわかったけど、それよりも先にやるべき事があるでしょ?」
「あぁ、そうか。この家の生活レベルの向上か」
食材を知る事も大事だが、そもそもこの家に調理器具が無い。
火や水は魔法で出せるけど、鍋とまな板と包丁くらいは無いと困るもんな。
それから、あとは毛布か。幸い、机や椅子にベッドなんかはあるんだけど、このままだと隙間風が吹く家の中で、毎晩過ごす事になる。
「だ、か、ら、違うってばーっ!」
「え? 違うのか? 他にやる事って……何だ?」
「もー、答えを言っちゃうけど、他の神様に認められる事だよー! トーマは私の力だけじゃなくて、いろんな神様の力を授かる事が出来るんだからねー?」
「いや、それはそうだが、今のところはコズエの力で十分事足りるんだが」
「んー、でも強い魔物とかと戦うのに不安じゃない? 昨日の熊だって、一歩間違えたら死んじゃってたかもしれないんだからね!?」
そう言って、コズエが今にも泣き出しそうになる。
あー、そうか。ここは異世界だもんな。
平和で安全な日本とは違うんだ。まずは自分の身を守る為に、他のスキルも授かるべきだと言っているのか。
「わかったよ。とはいえ、どうすればコズエ以外の神様に認めてもらえるか分からないし、時間が掛かる事かもしれない。他の事もやりながらも、神様の事は意識しておくよ」
「うん、そうしてね。私が与えた力は、トーマが魔法を使おうとしないと発動しないもん。例えばだけど、不意を突かれたりしたら、私の力は発動すらしないからね?」
確かに、そうだな。
よし、これからは食材を調べつつ、生活レベルを上げ、神様から認められる。
そんな活動を……って、どんな活動だ?
とりあえず最初は……調理器具を買いに行くか。
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