第72話 救助活動

「ウル! 俺から離れないように! ソフィアは俺の後ろで無茶しないように!」

「はーい!」

「わかったわ、お兄ちゃん!」


 着地したのが村から少し離れたところなので、ウルを抱きかかえて走っていると、


「お兄ちゃん! 煙が!」


 村の中から煙が登っているのが見えた。

 さっきの爆発魔法を村の中で使ったのか?

 それとも他の奴が、さっきの騎士みたいに無茶苦茶な事をしでかしたのか!?


 ようやく村まで戻って来たのだが、そこら中が燃えていて、中に入れない。


「≪アクア・クリエイト≫」


 コズエの力を借り、水魔法で周囲の火を鎮火しながら村の中へ入ると、大勢の村人が倒れていた。


「ひ……酷い。な、何なのこれっ!」

「ソフィア! それより助けよう!」

「は、はいっ!」


 先程の騎士たちは村の奥に居るみたいで、幸い村の入り口付近には居ないようだ。

 なのでソフィアと二手に分かれ、倒れている人たちの様子を見てみるが……煙を吸って倒れたのではなく、斬られたのか!


「≪スロウ・ヒール≫」


 コズエの力を使った治癒魔法で怪我を治すと、その人にも倒れている人の様子をみて欲しいと依頼する。

 気絶しているのであれば、家の外へ。

 怪我をしていれば俺を呼んでもらい、治癒に当たっていると、


「お兄ちゃん! ちょっと来て!」

「これは……すみません! 皆さん、手伝ってください!」


 崩れた家屋の下敷きになってしまっている人が居たので、治癒した男性数人と一緒に助けだす。


「≪スロウ・ヒール≫」

「えぇっ!? 凄い! この怪我を治すだなんて……アンタ、凄いな!」

「それより、他に倒れている人が居ないか捜してください!」

「あ、あぁ。そうだな」


 村人たちが他の怪我人を探し始めたところで、


「ソフィア。俺は奥を見てくる。すまないが、怪我人を頼む」

「えっ!? お兄ちゃん!?」

「頼むぞ! 絶対にここで待っていてくれよ!」


 初級だけど、治癒魔法が使えるソフィアを残し、村の奥へ。


 そこでは、馬に乗った騎士が魔法で家屋を壊しながら、何かを探していた。

 騎士の一人が男性に詰め寄り、大きな声で恫喝している。


「おい! 黒い杖を持ったガキはどこだ! 言え!」

「そんなの知らないって……」

「チッ! なら、死ね!」


 知らないと言った途端に、剣で斬られ……滅茶苦茶だ!


「ウル。俺に抱きついているんだぞ?」

「うん」


 左手でウルを抱きかかえ、顔は俺の胸に埋めさせる。

 悲鳴はウルの耳に入ってしまうが、人が斬られたりする所を見るよりかはマシだと信じたい。

 先程の男が、次の村人を探そうとした所へ、


「≪ストーン・バレット≫」


 平たい壁状にした大きな石の壁を飛ばす。


「なんだ!? ……ぐはっ!」

「まずは、一人……≪スロウ・ヒール≫」


 威力は落としてあるし、石が覆いかぶさって動けないはずなので、骨折くらいはしているかもしれないが、死んだりはしていないだろう。

 先程斬られた人を治癒魔法で治し、他の騎士を探す。


「へっへっへ。俺の炎で燃え尽きろ! ≪ファイアー・ボール≫」

「さっきから家を燃やして回っているのは、こいつか! ≪アクア・クリエイト≫」

「な……にっ!? 俺の邪魔をするのは誰だっ!」


 俺の存在に気付いた騎士がこっちを睨み、魔法を発動させようとする。

 だが……


「邪魔すんな! ≪ファイアー・ボール≫」

「≪ハイ・ウインド≫」

「――っ!」


 この魔法に思い入れが強いのか、それとも同じ魔法しか使えないのか。

 何が来るかわかったので、騎士がファイアーボールの魔法を放った瞬間に強風を起こし、自分の魔法で吹き飛んでもらった。

 こんな事を何度か繰り返し、騎士たちを無力化していると、


「お前は外に居た……料理人というのは嘘だったのか!」

「え? 本当だが?」


 村の外で俺たちを吹き飛ばした騎士と遭遇した。

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