第71話 青い髪の女神

 青い髪の女神様? が現れ、落下する俺たちを助けてくれるかと思ったのだが……助けてくれない!?


「ちょ、ちょっと待ってくれ! ど、どうすれば落下を止められるんだ!?」

「簡単だよ。空を飛べば良いんだ」

「いや、だからどうやって!? ……あ! 飛行の魔法が使えるようになっているとか!? ≪レビテーション≫……って、発動しないのかよっ!」


 どうすれば良いんだ!?

 考えろ……あ! もしかして、空を飛ぶ系の神様では無いって事か?

 というか、そもそもこの神様は、どうして現れたのだろうか。

 コズエとナギリは、俺が小杖と菜切包丁を何度も使ったから、その姿が見えるようになった。

 なら、この青髪の女神様は?


「あの、名前を聞いても良いですか?」

「ボク? エアっていう名前だよ」

「エア……って、空気?」

「正解! ボクは空気の神だよー!」

「……で、どうすれば? 空気を読めって事?」


 エアが何の神様かわかったものの、何が出来るのかわからない。

 コズエの力は愛用の小杖を使っている時にしか使えないし、ナギリの力だって菜切包丁を持っている時だけ……って、ちょっと待った!


「≪八百万≫」


 どうやら俺は、相当パニックになっていたらしい。

 八百長スキルをそのまま使用すれば、その効果が一覧で表示されるじゃないか。

 早速、目の前に銀色の文字が書かれた青い板が現れる。


『使用するスキルを選択してください。

 ・小杖装備時の魔法効果向上

 ・包丁装備時の敏捷性向上

 ・狼と接している時、その狼と共に炎無効化

 ・キスした相手の身体能力を一定時間向上

 ・???の時、空気操作魔法を使用可能』


 ……って、使用条件が表示されてないっ!?

 どういう事なんだ!?

 姿は見えているのに……あ! そういえば、世界樹さんが「別の世界の神たちとより近くした」って言っていたけど、それがこの効果なのか?

 八百万スキルで詳細はわからないけど、神様とは会えるっていう。

 いや、そういうのは後だ! とにかく空気操作魔法で……って、空気操作魔法って何だ!?

 さっきのレビテーションはダメだったんだが、単に発動条件を満たしていないだけなのか!?


 空気操作魔法というのと、その発動条件がわからないので、ひとまず俺の知識にある風魔法を使ってみる。


「≪ウインド・アロー≫……発動しない! というか、これは発動したところで、今は意味が無かった! 次は……≪トルネード≫」


 色々試してみたけど、発動しない。


「もしかして、空気操作魔法って風魔法とは別というか、風魔法の中でも空気を操作したり、変化させたりする魔法なのか? 例えば……≪エアリー・シールド≫」


 動のイメージがある風魔法の中でも、風とは少し種類が異なる、静のイメージがある中級魔法を使うと……発動したっ!

 空気の壁を盾にする魔法だけど、これを足下に展開すれば……おぉ、落下速度が一気に遅くなった!

 パラシュートとはちょっと違うけど、考え方としては近いのかも。


「トーマ、正ー解! 良かったねー!」

「あぁ、ありがとう。だけど、どうせならエアから教えて欲しかったけどね」

「自分で考える方が面白いでしょ? という訳で、発動条件は自分で見つけてねー!」


 うぐっ! 今はたまたま発動したけど、どうしてこの魔法が発動したのかは分かっていない。

 とりあえず、この空気の壁は無事に着地するまで消えないでいてもらいたいのだが、俺の願いが届いたのか、空気の壁が消える事なくゆっくりと着地し、全員怪我一つ無く、地面に降り立った。


「良かった。エア、ありがとう」

「どういたしまして。ただ、ボクの力で敵の攻撃を防いだりしようとしないでね。きっと発動しないから」

「≪エアリー・シールド≫……あ、本当だ。発動しない」

「でしょ? いや、トーマがちゃんと発動条件を理解していれば使えるよ? けど、それは教えてあげないよー」


 えぇー! まぁ確かにいざという時に発動しませんでした……というのは困るから、おいおい発動条件は調べなければならない。

 だけど、今はそれよりも、あの村を救わなきゃ!


「ソフィア、ウル。家に帰れる? 俺はあの村を助けに……」

「お兄ちゃん! ソフィアも一緒に行くから!」

「ウルもーっ!」


 出来れば、二人には安全なところで待っていて欲しいのだが、そのやり取りをする時間も無さそうなので、再び三人で村へ戻る事になってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る