第37話 お店のお礼
「いやー、このウドン? っていう料理……最初はスープの中に太くて白いパスタが入っていたからビックリしたけど、食べてみたら旨かったよ!」
「ありがとうございます」
「あと、一緒に付いていた、かき揚げっていうのも初めて食べた味だけど、旨いな! スープに浸しても旨かったし! ありがとよ!」
翌日。最後の客となったモルガンさんが笑顔で帰って行った。
何でも、昼に急ぎの仕事が入ったそうで、閉店ギリギリになってしまったそうだ。
ただ、喜んではもらえたけど、今日はかき揚げうどんだけだったからなー。
出来れば、おにぎりとか稲荷寿司とかをつけたかったんだけど……小麦粉はあるのに、米が無いんだよね。
「トーマさん、お疲れ様でしたー」
「パパー、おつかれさまー!」
「二人共、今日もありがとう。えっと、アメリア。お米って作物は聞いた事がないか?」
この世界で……貴族である実家に居た時も、米を食べた事はなかったが、そもそも米は存在するのだろうか。
ドキドキしながら聞いてみると、
「お米……ですか? 残念ながら聞いた事がないですね」
悲しい答えが返ってきてしまった。
日本人として米は食べたい所だが……待つんだ。
まだ俺にはラーメンという希望がある。
こっちなら作れる可能性があるから、まずはラーメンを完成させてから、お米の事を考えよう。
「あ、そうだ。話が変わるんだけど、アメリアとウルにプレゼントを贈りたいんだが……」
「え? プレゼントですか!? ま、まさか指輪とか……あ、でもウルさんにもか」
「アメリアは指輪が欲しいのか? モルガンさんに言えば作ってくれるかな?」
少なくとも、宝石を乗せる台座? みたいなのと指輪は作ってくれるだろうけど、宝石とかデザインとかはどうなのだろうか。
「ま、待ってください。いつかは欲しいですけど、それは置いといて、プレゼントって何の話ですか?」
「ん? あぁ、いつもお店を手伝ってくれているからさ。給料は要らないって前に言われたから、せめて何かプレゼントを贈ろうかと思って」
「そんなの良いのに。でも、何かくださるというのであれば、そうですね……な、何かトーマさんの手作りの物とか」
「手作りなら何でも良いのか?」
「はいっ!」
手作りの物……って、何だろう。
木彫りの熊とかか? 作った事はないが、やってやれない事はない気もする。
日本のイメージだと、鮭を咥えているが、こっちの世界の熊はどうなrのだろうか。
「わかった。アメリアには何か作ってプレゼントするよ。ウルはどうだ?」
「ウルは、パパがいっしょにいてれれば、それでいいの」
「ま、待ってください! わ、私もそっちで! と、トーマさんが私と一緒に居てくだされば、十二分に幸せですっ!」
ウルはともかく、アメリアは……アレか。俺と一緒に居て、美味しいものが食べられれば幸せ……というような話か。
とはいえ、アメリアに何かを渡して、ウルには何も無しというのもな。
「そうだ。明日は店を休みにするから、ウルは一緒に他の村や町へ何か探しに行こうか」
「おみせ、やすむのー?」
「元からそのつもりだったからな。いくら昼だけとはいえ、流石に毎日働きっぱなしで休みなしっていうのはな。それに、新たな食材探しもしたいし」
前世はそれに近い状態だったし、毎晩遅くまで翌日の仕込みをして、大変だったからな。
料理を作るのは楽しかったが、休みはしっかり取らなければ。
「他の村や町へ行くのなら、私も行きますっ! ほら、お隣のトオーク村ならそれなりに知っていますし、道案内とかも出来ますから」
なるほど。アメリアが居れば、別の村や町で新たな食材を見つけた際に、この村で手に入る食材か否かわかるか。
「休みにするのに、アメリアは良いのか?」
「はい! だって、それってデー……こ、こほん。明日ですよね? ちょ、ちょっと準備があるので、今日はこれで失礼致しますねー!」
アメリアが何か言いかけたかと思ったら、慌てて帰ってしまった。
とりあえず、明日は休みだと板に書き、店の前に立てておく。
「パパー! とおくへいくの、はじめてー!」
「そうだな。……そうだ。馬車が使えなくて、結構歩くはずだから、お弁当を持って行こうか。ピクニックだ」
「ピクニックー! ……って、なーにー?」
「皆で楽しくお散歩しようって事だよ」
「わーい! ピクニックー! たのしみー!」
異空間収納もあるので、早々に明日のお弁当作りに取り掛かり、ウルと一緒に就寝する事に。
……町で海産物が手に入るといいな。
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