第36話 ウルと楽しく過ごす時間

 今日の昼に出したお好み焼きが好評で、しかも持ち帰りが出来るという事がわかったので、雑貨屋へ持ち帰り用の箱を注文しに来た。


「すみません。今日の昼頃にアメリアが買いに来たようなバスケットが欲しいんですけど。出来るだけ沢山」

「あら、トーマさん。今日は忙しくて行けなかったけど、昨日のご飯は本当に美味しかったわ。今晩なら行けるんだけど、夜はやっていないのかしら」

「あー、申し訳ない。暫くはお昼のみの営業にしようと思って居るんです」

「そうなの? 残念ねぇ。物凄く美味しいのに」


 ありがたい話だけど、夜に店を開けたらウルが眠れなくなってしまうからな。

 それに、クララからもらった異空間収納スキルのおかげで、食材がダメにならない。

 だから、昼に売れ残りが出たとしても、夜に売り切ろうとする必要が無いし、必要以上に金儲けをしようと思って居ないから、夜に店をやらなくてもやっていけそうだからね。


「トーマさん。アメリアちゃんが買いに来たのは、このバスケットだけど……沢山って、どれくらい居るのかしら? とりあえず、今は二十個あるけど」

「では、二十個全て買わせてもらっても大丈夫ですか?」

「それは大丈夫だけど……じゃあ、全部で銅貨十枚ね」

「ありがとうございます。また似たような物を買いに来るかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」

「わかったわ。じゃあ、また来てねー! ウルちゃんも、またねー!」


 雑貨屋のネヴィアさんに手を振って店を出ると、次は鍛冶屋のモルガンさんの所へ。

 店にある一番大きな鍋を二つと、湯切り網、それから……残念。麺棒はないのか。


「トーマ、麺棒とは何だ?」

「えーっと、長くて真っすぐな丸い棒なんだけど……そうですね。だいたい、太さがこれくらいで、長さは……これくらいかな?」

「んー、槍の柄の部分みたいな感じか?」

「あー、そうですね。その半分くらいの長さで良いんですけど」

「わかった。待っていてくれ。それくらいなら、すぐに作ってやろう」


 そう言って、モルガンさんが奥に消え、あっという間に麺棒が出て来た。


「おぉ、流石です! 丁度、こんな感じのが欲しかったんです!」

「まぁ、そんな物をどうするのかは知らんが……そうだな。全部で銀貨五枚でどうだ?」

「はい、ありがとうございます」

「いや、礼を言うのは買ってもらったこっちの方だが……それより、トーマの店の料理がめちゃくちゃ旨いらしいじゃないか。村中で評判だぞ。今度、食べに行くからな」


 必要な調理器具が最低限揃ったので、ウルと一緒に家へ。


「パパー、なにをつくるのー? ウル、てつだうよー?」

「ありがとうな。じゃあ、手を洗って、一緒に作ろうか」

「はーい!」


 二人で綺麗に手を洗い、小麦粉と塩と水をウルに混ぜてもらう。

 暫くすると、まとまってくるので、大きなボールを作ってもらった。


「パパー、できたー!」

「ありがとう。じゃあ、次はパパが見本を見せるから、よく見ておいてね」

「うん!」


 元気よく返事をしたウルが、じっと俺の手元を見ているので、こねてくれた生地の半分を麺棒でゆっくり伸ばしていく。


「わー、ペラペラー!」

「うん。出来るだけ均等な薄さにするんだ。あとでウルもやってみような」

「やるー! たのしそー!」


 まぁその、簡単に見えるけど、実は結構難しいんだが……まぁ何事も経験かな。

 伸ばした生地を均一に切ったら……麺の出来上がり!

 本当は熟成させたりしたかったけど、まずは簡単に。

 という訳で、ラーメンの第一歩……の前に、うどんを作ってみた。


「ウルも、ウルもー!」

「ごめんごめん。じゃあ、やってみよー!」


 案の定、力加減が難しいみたいだけど、楽しんで作ってくれている。

 手伝って欲しいと言われたところ以外は、ウルに任せ……出来たっ!

 流石に包丁は危ないので、俺が切って……茹でる。

 最後に冷水でしめて、湯切り網でしっかり水を切っておく。

 俺としては温かい方が良いのだが、ウルの事を考え、冷やしうどんにしておいた。


「ウル、食べてみて」

「……んっ、ちゅるちゅるー! ……おいしー!」

「そうだな。あ、ちゃんと噛んで食べなきゃダメだからな? そのまま飲み込むなよ?」


 よし。明日はうどんだな。

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