第33話 日本のご飯
更に乗せた料理を切り分けてアメリアとウルの小皿へ乗せると、先ずは食べ方の説明をする。
「この料理は幾つかソースを用意してあるから、好きなのをかけて食べて欲しい。ちなみに、俺のお勧めはこの黒色のソースと白いソースの重ね掛けかな」
「味付けが選べるんですねー。じゃあ、私はトーマさんのお勧めで……んっ!? 黒いソースっていうのがどんなのかと思ってドキドキしていたんですけど、甘辛くて美味しいですっ!」
アメリアが喜んでくれたようで、良かった。
ちなみに、今回作ったのはお好み焼きだ。
本当はお好み焼き用のソースが欲しかったけど、流石に作り方が分からなかったので、自家製ウスターソースと自家製マヨネーズで食べて貰った。
思いっきり和食というか粉ものだけど、口に合って良かったよ。
「ウルは……ピンクのにするー! ……おいしーっ!」
「それは、オーロラソースって言う、ケチャップ……まぁその、トマトをベースにしたソースなんだよ」
「トマトー! すごーい!」
ウルは辛いのがダメかも……と思って、自家製ケチャップとマヨネーズを混ぜたソースを用意しておいたのだが、これも好評だった。
アメリアもウルも、それぞれソースを替えてみたり、ウスターソースだけにしてみたりと、色々楽しんで食べてくれて……あっという間に完食している。
「トーマさんの料理は本当に凄いですよね。どうやったら、こんなのが思い付くんですか?」
「ん? あぁ、俺の故郷の料理なんだ。それより、明日はこれをランチに出してみようと思うんだけど、どう思う?」
「良いと思いますっ! 見た目や生地はキッシュみたいですけど、味が全然違って、食べた事の無い味でした!」
ふむ。やはり異世界だからだろうか。
キッシュといえばフランスの郷土料理なんだが、これはアメリアも知っているんだな。
という事は、和食というか、日本の食事に寄せていくのが正解なのだろうか。
……日本といえば、いつかラーメンを作りたいなぁ。
少しずつ研究してみようかな?
「パパー! ウル、おてつだい。あした、まぜまぜするー!」
「そうだな。材料の準備だけしておけば、ウルに手伝ってもらう事も出来るな」
「うんっ!」
嬉しそうなウルの頭を撫でながら、既に外が暗くなっていたので、三人でアメリアの家へ。
「トーマさん。村の中なので、送っていただかなくても大丈夫でしたのに」
「いや、流石に女性一人で夜道を歩かせる訳にはいかないよ」
「え、えへへ……ありがとうございます。では、また明日、お昼前に伺いますね。ウルちゃんも、ありがとうね」
ウルがバイバイと手を振り、家に戻る。
うーん。さっき、ラーメンの事を考えてしまったから、無性にラーメンの研究がしたくなってきてしまった。
異世界で手に入る食材でラーメン……イノシシの骨で、豚骨の代わりになるだろうか。
そういえば、この村って魚介類が全く手に入らないよな。
近くに海が無いのは仕方ないけど、川でもあれば川魚とか川エビとかで、またこれまでとは違う食材が手に入るのだが。
「パ……パーパ!」
「え? あぁ、すまない。ウル、どうしたんだ?」
「……あのひと、いる」
「えっ!?」
ウルに呼ばれて我に返り、周囲を見渡すと……居た! 月明かりしかなくてハッキリとは見えないが、遠目に見えるあのシルエットは間違いなくレオンだ!
またウルやアメリアに何かする気だろうか。
すぐにウルをおぶさり、腰に差している小杖に手を伸ばしたところで……姿を消した。
「逃げた……か? 一体何がしたかったんだ?」
ウルをおんぶしたままアメリアの家に引き返し、念の為にコズエの力を借りて、水の膜で家を覆っておく。
家に帰って、俺たちの家も同じ様に覆ったところで、とりあえず風呂へ。
水魔法で幾らでも水が出せるので、いつもは風呂を出たら浴槽の水を全て捨てるが、今日はそのままにしておいた。
レオンは何故か火系統の魔法を使う事が多いからな。
何もなければそれで良いし、警戒するに越したことはないだろう。
それからベッドに入り、
「パパー、おやすみー!」
「あぁ、おやすみ」
暫くウルが寝付くのを待つ。
今晩は、レオンを警戒してもう少し起きておこうと思うのと、ついでにラーメンの研究をしようと思っていたのだが、
「……ウル。ウールー。ちょーっと手を離して欲しいんだけどなー」
「……トーマ。せっかく眠ったのに起こすのは可哀想だよー」
「……トーマ君。ウルちゃんは頑張ったんだから、傍に居てあげて。あと、私たちとも一緒に居てね」
小さな寝息を立て、完全に眠っているはずのウルが俺にしがみついて離れず、コズエとナギリも俺にくっついていて……ラーメンの研究は後日チャレンジする事になってしまった。
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