第2章 イーナカ村でスローライフ

第45話 妹ソフィアとの再会

 フランクリン事件の後に家へ戻って来てから、数日。

 再びお店も再開したし、お客さんも……というか、数日間店を開いていなかった反動なのか、再開初日はいつもよりも更に忙しかった。

 とはいえ二日、三日と経つと、客足も落ち着いて来て、事件前と同じくらいになったが。


「ありがとうございましたー!」

「ありがとー! またきてねー!」

「えぇ、ごちそうさま。美味しかったわ」


 お客さんたちが食べ終わり、席に着いているのはあと一人か。


「アメリア、ちょっと良い? 少し相談したい事があるんだけど……」

「トーマさん、どうされたんですか?」

「いや、お店にお客さんが多いのは有難い事なんだけど、待っている行列が長すぎるというか、せめて席に着けるようにしてあげられないかなと思ってさ」

「それはつまり、テーブルと椅子を増やすという事ですか? 私は全然良いと思いますけど?」

「んー、まぁつまりはそういう事なんだけど、今はアメリアが手伝ってくれているから良いものの、席を増やすと、アメリアが来られない日は俺とウルでは回せないかもしれないと思ってさ」


 アメリアは、あくまで俺が村へ来てまだ日が浅いので、助けてくれているだけだ。

 いつまでもそれに甘え続ける訳にはいかない。

 とはいえ、お客さんを待たせてしまっているのも事実だ。

 日本の店舗だと、行列を解消させるのはなかなか難しいけど、隣の家まで距離が結構ある上に、オープンカフェや屋台のようにテーブルが外にあるから、席を増やす事が容易といえば容易なんだよね。


「私は構わないと思いますよ。その、こ、今後は毎日……というか、一緒に……」

「ん? すまない。最後の方が聞き取れなかったんだが」

「な、何と言いますか、いずれ私たちは……」


 アメリアが何か言っているのだが、俯いている上に声が小さく、よく聞き取れない。

 改めて聞き直そうと思っていると、


「ありがとう。旨かったよ」

「どーいたしましてー!」

「えっと、こんなに旨いのに、銅貨五枚で良いんだよな? じゃあ、これ」

「ありがとー!」


 最後のお客さんが帰ったようだ。

 とりあえず後片付けと、ウルを労ってあげようと、家から外に出ると、慌ててアメリアも着いてきた。


「パパー! おしごとおわったー!」

「ウル、今日もありがとうな」


 ウルが嬉しそうに走って来て、脚に抱きついてきたので、抱きかかえてあげると、首に小さな腕を回してくる。

 そんなウルの頭を優しく撫でていると、


「お、お兄ちゃん! これは一体どういう事なのっ!?」


 どこか懐かしい気がする、可愛らしい声が聞こえて来た。

 というか、俺の事をお兄ちゃんと呼ぶ者は一人しか居ないか。

 声のした方に目を向けると、柔らかそうな長い銀髪の美少女――妹のソフィアが立っていた。


「ソフィア! どうしたんだ? こんな所に」

「どうした……じゃないよっ! お兄ちゃん! ソフィアが居るのに、別の女の人と結婚するなんて、どういう事なのっ!?」

「あ、あの……トーマさん。こちらの女の子は? い、一体どういうご関係なのでしょうか?」


 久しぶりの再会だというのに、何故かソフィアは怒っていて、アメリアが困惑した様子で俺の腕に抱きつく。

 ソフィアは俺の事をお兄ちゃんと呼んでいるし、妹だとわかりそうなものだが……紹介しておくか。


「パパー! だーれー?」

「ん? あぁ、この女の子はソフィアって言って、俺の妹なんだ。ご挨拶出来るかな?」

「うんっ! ……ウルだよ。はじめまして」


 おぉ、ウルを地面に降ろすと、恐る恐るだけど、ソフィアに向かってお辞儀して……成長したなぁ。

 まぁすぐに俺のところへ戻って来て、俺の脚の後ろに隠れてしまったが……これはソフィアが不機嫌そうにしているから、仕方ないよな。


「あぁ、トーマさんの妹さんなんですね。はじめまして、アメリアと言います。トーマさんは私の命の恩人なんです」

「……ソフィアです。お兄ちゃんの妹であり、妻です!」

「では、よろしくお願い……って、妻!? えっ!? 妹なのに!? 妻ってどういう事ですかっ!?」


 いや、ソフィアは久々の再会なのに、何を言い出すんだよっ!

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