第28話 異世界の料理屋さん一日目終了

「美味しいっ! これは……一角ウサギのソテー!? 凄いっ! こんなに美味しいのねっ!」

「待って待って。お肉も美味しいけど、このソースが凄く合うの。これは一体……えっ!? 野イチゴのソース!? えぇぇぇっ!?」

「付け合わせの野菜が……サラダとはまた違う美味しさねっ! うちの野菜、ちょっと美味しくなりすぎじゃない!?」


 フィリアさんが連れて来てくれたお客さんたちが、メインディッシュを食べて大絶賛してくれている中、ウルが凄く嬉しそうにはしゃぐ。


「パパのりょーり、おいしいよね? やったー!」

「料理の上手なお父さんで良かったわねー!」

「うんっ! パパ、だいすきー!」


 ウルが飛び跳ねながら俺のところへ来て、ぎゅーっと抱きついて来た。

 しかし日本なら、ここで食後のデザートかコーヒーでも出すところなんだけど、残念ながら未だそっちは研究不足だったりする。。

 何か甘いデザートに使える食材を見つけるのが今後の課題だな。

 だがフィリアさんたちが楽しく談笑しているのでまぁいいか……と思って居ると、新たなお客さんがやって来た。


「トーマさん。お父さんと二人、お願い出来ますか?」

「あぁ、もちろん。ウル、お水を任せて良いかな?」

「はーい!」


 アメリアと村長がやって来たので、ウルに水をお願いし……嬉しそうに運んで行く。

 すると……


「きゃぁぁぁっ!」


 突然、アメリアの悲鳴が聞こえて来る。

 一体何があったのかと思って顔を向けると、


「ウルちゃん、可愛いぃぃぃっ! トレイでお水を運んでくれるの!? ま、まさかウルちゃんがウエイトレスさんっ!? こ、これは……トーマさん! ぜひウルちゃんのエプロンを作らせてくださいっ!」


 アメリアがウルを抱きしめながら、可愛いと叫んでいた。

 あ、うん。何かあった訳じゃなくて良かったよ。


「村長さん。トーマさんが来てくださって良かったねぇ。まさか、こんなに美味しい料理が食べられるとは思わなかったわ」

「あー、トーマさんの料理の腕は凄いよな。何度か家でごちそうになったが、何をどうしたら、あんなに旨くなるんだろうな」

「そうよねぇ。野菜だって、いつも出荷している物と同じなんだけどねぇ」


 調理に戻ると、外からフィリアさんと村長が話しているのが聞こえて来るんだけど、ちゃんと下ごしらえをしてあげれば良いだけなんだけどね。

 まぁそれだけでなくて、細かいコツとかはあるけどさ。


「んーっ! トーマさん! このスープ、美味しいですっ! この味は……オーニオンですか?」

「あぁ、その通り。フィリアさんの所のタマネ……じゃなくて、オーニオンだよ」

「うちのオーニオンの甘さをここまで引き出すなんてねぇ。流石だね」


 オーニオン――タマネギそっくりな野菜のスープなのだが、調理方法も同じで良かったよ。

 それから、メインディッシュを出したところで、フィリアさんたちがお会計となった。


「トーマさん。本当に美味しい料理だったわ。ごちそうさま。えっと、おいくらかしら?」

「はい。お一人様、銅貨五枚となります」

「え? い、今のがたったの銅貨五枚!? だ、ダメよっ! いくらなんでも、安すぎるわよっ!」

「そう言われましても……」

「いいわ。じゃあ、明日の野菜は少し多めに持って来るわね。……どうしましょう。こんなに安くて美味しいと、毎日来たくなっちゃうわぁ」


 ランチなので安めに設定しているし、デザート類が何もないので、安すぎるって事は無いと思うんだけどな。

 それに、この肉なんて実質タダだし。

 だけどフィリアさんだけでなく、他のお客さんも驚き、ざわついている。

 看板に銅貨五枚ってちゃんと書いておいたんだけどな。


「じゃあ、私たちはお友達にトーマさんのお店の事を宣伝しておくわ」

「そうね。こんなに美味しいのに銅貨五枚……明日は、お客さんが沢山来るわよー!

「トーマさん、ごちそうさま。本当に美味しかったわ」


 フィリアさんのお友達の方々は、安過ぎる代金の代わりに宣伝すると言ってくれているけど……まぁお客さんが沢山来てくれる分のは素直に嬉しいので良しとしよう。

 この後、モルガンさんや家具屋さんが来てくれて、目標の十食は完売した。

 さて、明日は何食分準備しておくのが正解なのだろうか。

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