第52話 お手伝いするソフィア
「トーマさん、おはようございますっ!」
「おはよう、アメリア。すまないが、今日もよろしく頼む」
「いえいえ、私に遠慮なんて無用ですよ。何でも言ってくださいね」
お昼前になり、アメリアがやってきて、早速エプロンを身に着ける。
ウルもエプロンを着せてもらい、やる気満々だ。
「今日は、昨日食べてもらった焼きそばにしてみたんだ」
「これ、美味しいですよねー! また食べたくなっちゃった」
「言ってくれれば、いつでも作るから、声をかけてくれよな」
アメリアの言葉を聞いて、ウルが自分も食べたいと言わんばかりに抱きついてくる。
好評なようで良かった良かった。
少ししてお店を開けると、いつものようにお客さんが来てくれているので、早速ウルとアメリアに行ってもらう。
「パパー! やきそば、みっつー!」
「いらっしゃいませー! こちらの席へどうぞー」
「ウル。このお皿、持って行けるかな?」
俺は事前に作って異空間収納に格納している焼きそばがあるので、本当にヤバくなったらそれを出すという奥の手の存在により、忙しいけど心にゆとりがある。
ウルはいつも通り楽しそうにしていて、お客さんにも可愛がられているのだが、その一方でやはりアメリアの負担が大きいな。
何とかアメリアの負担を減らしたいと考えていると、
「ふっ……お兄ちゃん。ここはソフィアの出番のようね」
黙々と、まるでノルマをこなすかのように牛乳を飲んでいたソフィアが立ち上がる。
「ソフィア!? いや、無理しなくて良いんだぞ?」
「でも、正直言って忙しいでしょ? ソフィアはお兄ちゃんの役に立ちたいの」
「そうか? すまない。では、お客さんが食べ終わった食器の回収を頼むよ」
「ふふっ、任せて! ……ふっふっふ。アメリアさんより、ソフィアの方が出来る女だっていうアピールよ……」
ソフィアが何か呟いていたような気もしたが、予備のエプロンを身に着けたソフィアが店の外に……って、ストップ!
「ソフィア、一旦戻って」
「ん? お兄ちゃん、どうしたの? もしかして、いってらっしゃいのチュー?」
「何を言っているんだ? というか、エプロンが裏表だ。その上、傾いているし……なおすから、じっとしていて」
「え? うーん。エプロンって意外に難しいのね」
「よし、出来た。じゃあ、すまないが頼むよ」
任せて! と、意気揚々にソフィアが出ていき、
「すみませーん。ランチ、四つお願いしまーす」
「……」
「あ、あの。そこの銀髪の方ー? そのエプロンって店員さんですよね?」
食器を下げる前にお客さんから話し掛けられて、固まっている!?
マズい。フォローに入らないと……と厨房から覗いていたら、アメリアが助けに入る。
「四名様ですねー。では、こちらの席へどうぞー。すぐにお水をお持ちしますねー」
「おみずー! どうぞー!」
「あら、可愛い店員さん。ありがとう」
アメリアだけでなく、ウルも頑張ってお水を運んで行き……事なきを得た。
しかし、これは俺のミスだな。
何の練習もしていないソフィアを、いきなり店員として出してしまったのは俺だ。
反省しながら焼きそばを作って居ると、お皿を持ったソフィアが戻って来た。
「ソフィア、大丈夫か?」
「お兄ちゃん……ビックリしたー! 店員さんって、話しかけられるんだねー」
ん? ……あー、わかった。ソフィアは一テーブルに一人、給仕係がつくようなレストランにしか行った事がないのか。
家は家で、メイドさんが何人も居て、何も言わなくてもベストなタイミングで料理や飲み物が出て来るもんな。
アレはアレで、ゲストを完璧におもてなししようという凄い技術だし、素晴らしいと思うのだが、流石にこの店では無理だ。
「じゃあ、もう一回行って来るねー!」
「え? ソフィア!?」
「……はい。三名ですねー。では、こちらへどうぞ」
おぉ、一度どういうものか分かれば、即実践出来るのか。
何気にソフィアも適応能力が凄いよな。
我が妹ながら、凄いなと感心しながら、ひたすら焼きそばを作り……今日も無事にお店が終わった。
さて……初めてなのに、しっかり手伝いをしてくれたソフィアに、何かご褒美をあげたいな。
……ソフィアなら、アレでどうかな?
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