第25話 開店準備
翌朝。今日は昨日アメリアに作ってもらった、淡いピンク色のワンピースで出掛ける事に。
「パパ……この、パンツ? はかなきゃダメ?」
「うん。それは履こうな」
「んー……あついよー。スースーしなくなるし」
「スースーしないのが普通だからね」
昨夜、新しく作ったお風呂へウルと一緒に入った後、パンツとシャツを着せて就寝したのに、朝起きたら何故か全裸になっていた。
ワンピースはゆったりしているから着てくれていたみたいだけど、肌に密着する下着は嫌で、寝ている間に無意識で脱いでいたようだ。
とはいえ、女の子をノーパンで外出させる訳にもいかず、ちょっと嫌そうにしているが、ウルに下着を履かせて外へ。
昨日のレオンの一件で、ウルが俺から一切離れなくなってしまったので、手を繋いで歩いて行く。
「パパー、どこへいくのー?」
「あぁ。昨日、お仕事で得た素材を買い取ってもらうんだ」
「そざいー? このせなかのー?」
「うん。ここだよ」
森で倒した大量の一角ウサギを冷蔵庫から出し、モルガンさんの所へ。
「おはようございます」
「トーマか。おはよう……って、その子は? お前さん、娘が居たのか」
「えぇ。ウルって言うんです。ウル、ご挨拶しようか」
そう言うと、ウルが俺の背中に隠れながら、少しだけ顔を出して挨拶する。
「……ウル。お、おはよーござ……ます」
日本で育児の経験はないけれど、子供は人見知りもするだろうし、こんなものだろう……たぶん。
……アメリアには普通に接していたから、モルガンさんを怖がっているだけという可能性もあるが。
「はっはっは。怖がらなくても良いぞ。それより、今日はどうしたんだ?」
「えっと、また魔物の素材を買い取って欲しくて」
「おぉ、構わんぞ。とはいえ、肉は街へ卸しにくいから、程々にしてもらえると助かるが」
「えーっと、これなんですが……」
肉は要らないという意向には沿わないが、籠に入れて来た大量の一角ウサギを出すと、モルガンさんが驚き、床に座り込む。
「なっ!? まさかこれは……一角ウサギなのかっ!? しかもこれだけの量を!?」
「昨日、集団に遭遇してしまいまして。五体程、角を別の支払いの代金に充てたのですが、それ以外はそのままです」
「一角ウサギの角を五本……って、畑でも買ったのか?」
「え? 畑?」
「違うのか? 一角ウサギの角は一本で金貨一枚だ。金貨五枚もあれば、この村では余裕で畑が買えるのだが」
あー、周囲に何も無くて、土地が広いもんな。
東側では牛を飼っているくらいだし。
「とりあえず、量が多いからざっくりとした計算だが……これなら、角や毛皮の買取価格から魔物の解体費用を引いて、そうだな金貨二十五枚でどうだ?」
「えっ!? そんなにですか!?」
「あぁ。角ほどではないが、毛皮もそこそこ高く売れるからな。ただ肉は代金支払い時に引き取ってもらう事になるのだが、構わないか?」
「はい。むしろ、その方が助かります。料理屋を始めようと思っているので」
「なるほど……そうだ。それなら、必要な鍋や皿なんかを、店にある物を持って行って良いぞ。店を開くくらいに買っても金貨一枚程度だ。さっきの買取価格と相殺しておこう」
金貨一枚で、そこまで揃うのか。
イノシシとウサギ……肉も大量にあるし、アメリアから野菜についても教えて貰った。
そろそろ開店準備を始めても良いかもしれないな。
「わかりました。では、幾つか選ばせてもらいますね」
料理屋をやるとなると、タイミングによっては洗い物をしている暇がなかったりするから、鍋やお玉、フライ返しなんかも沢山欲しいし、客が使う食器類も沢山必要だからな。
日本で働いていた店の事を思い出しながら、必要そうな量を買わせてもらい、解体作業に時間がかかるからと、差額の代金は夕方に貰える事となった。
一旦、家に帰って調理器具や食器類を置くと、次は家具屋さんへ。
テーブルや椅子を注文し、最後にアメリア……というか村長のところへやって来た。
「トーマさん、おはようございます。ウルちゃんもおはよう!」
「アメリア、おはよう。ウルの服、凄く助かるよ。ありがとうな」
「えへへ。そ、それくらい当然……あ、えっと、ウルちゃんが着てくれて、私も嬉しいです。あ、あの……今日はどんな御用でしょうか? つ、次はべ、ベッドのシーツとか、毛布とか……」
「あぁ、村長は居るかな? 野菜を沢山作っている人を紹介して欲しくて」
「あ、お父さんですか? では、どうぞ中へ」
ウルが昨日の服を着ているからか、何やら嬉しそうなアメリアと共に、家の中で村長を待つ事にした。
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