第50話 トーマのスキル

 夕食を終えたので、アメリアを家まで送る事に。

 ソフィアが居るので、ウルに家で一緒に待つか? と聞いたのだが、


「パパといっしょがいいの!」

「ソフィアもお留守番じゃなくて、一緒に行きたいです」


 二人もついて来る事に。

 アメリアを含めた四人で談笑しながら家に到着したのだが、何やら心配そうにソフィアへ顔を向ける。


「あの……ソフィアさんは、今日はどちらに泊まられるのですか?」

「もちろん、お兄ちゃんの家よ。何か問題でも?」

「い、いえ、問題はありませんが……トーマさんの家にはベッドが一つしかありませんよね?」

「一緒に寝るから大丈夫よ。実際、実家では毎晩同じベッドで寝ていた訳だし」


 なるほど。アメリアはソフィアの事を心配してくれているのか。

 多少狭くなってしまうが、ソフィアは小柄だし、まぁ一晩だけなら大丈夫だろう。

 明日には注文したベッドが届くだろうしな。


「うぅ……トーマさん。どうか御無事で」

「ん? いや、今から家に帰るだけだが?」

「家に帰った後が……いえ、で、ではまた明日」

「あぁ、おやすみ」


 アメリアに挨拶し、帰路へ。

 既にお風呂へ入り、お腹もいっぱいなウルが眠そうなので、抱っこしてあげると、


「すー……」


 限界だったのか、すぐに眠ってしまった。


「お兄ちゃん……ちゃんと聞いてなかったけど、このウルって娘は何なの? アメリアさんの娘……って訳でもなさそうだし、獣人だし」

「あぁ、そういえば説明出来ていなかったな。ウルは……ある男が倒そうとしていた狼なんだが、そこで俺のスキルが発動して、女の子になったんだ」

「……お兄ちゃん。ちょっと何を言っているか分からないんだけど。えっと……疲れてるのかな?」

「すまない。今のは俺の言い方が悪かったな。……そうだ。実際に見て貰った方が早いだろう。少しだけ来てくれ」


 眠ってしまったウルを抱っこしたまま、家の裏へ回り、そのまま森の入口へ。


「お兄ちゃん。森は……もう暗いし、流石に危ないよ?」

「いや、ここが目的地だから大丈夫だ。……さて、ソフィア。俺が今取り出して、手にした物は何だか分かるかい?」

「何……って、お兄ちゃんが幼い頃から毎日ずっと魔法の練習に使っていた、小杖だよね? 私も自分の小杖を持っているから、分かるよ?」

「あぁ、その小杖だ。じゃあ、この小杖で使える魔法と言えば?」

「え? 初級魔法だよね? 小さな種火を出したり、ちょっとだけ水を出したりする……」


 その通りだと頷き、早速コズエのスキルを発動させる。


「≪八百万:小杖装備時の魔法効果向上≫……ソフィア。よく見ておいてくれ。今からその初級魔法を使って、この木を切り倒すから」

「いやいや、お兄ちゃん。そんなの無理だって。せめて、燃やす……なら分からなくもないけど、切り倒すような威力の高い魔法は、小杖では使えないよ」

「あぁ、その通りだ。だが、少し見ていてくれ。≪クリエイト・ウォーター≫」


 早速初級の水魔法を発動させ、凄い勢いで水を出し、大きな木を切り倒した。


「え……? えぇぇっ!? お、お兄ちゃん!? 今のは何!?」

「俺のスキルの一つ、コズエが授けてくれた、小杖を使っている時に、魔法の効果が向上するんだ」

「あの、向上ってレベルではなかったんだけど。どうやったら、生活魔法系の飲み水を作り出す魔法で木が切れるのよ……って、待って。お兄ちゃんのスキルの一つ……ってどういう事?」

「あぁ。どうやら俺は、別の世界の神様に認められれば、複数のスキルを授けられるらしいんだ」

「複数のスキル!? 一人一つしか授からないスキルを!? えっと、お兄ちゃん……凄いっ! めちゃくちゃ凄いよっ!」


 それから、クララの異空間収納スキルを使用し、切った木を格納して、家へと帰る事に。


「流石はお兄ちゃんっ! ソフィアの予想の遥か上を行っていたんだ!」

「あぁ、どうやらそうみたいなんだ。最初はスキルの意味がわからなくて困ったけど、コズエが教えてくれたからな」


 そう言うと、すぐ傍に居るコズエが、嬉しそうに無い胸を張る。

 とりあえず褒めて欲しそうなので、頭を撫でていると、


「お兄ちゃん……今言った、コズエって誰? もしかして、そのウルって子以外にも、女の子が近くに居るの?」

「え? い、いや、居ないよ? コズエは、小杖の力を授けてくれた神様だよ」

「ふーん」


 ソフィアが見えていないはずのコズエにジト目を向けながら、頬を膨らませる。

 えっと、見えてない……よな!?

 というか、どうしてソフィアは突然不機嫌になったんだ!?

 訳がわからないけど、家に着いたので早速就寝する事にした。

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