第10話 森で見つけた異世界の食材
「≪アクア・クリエイト≫」
何度か水を生み出す魔法を使い、まな板っぽくなった。
だが何年も乾燥させた板を使わないと、まな板が段々曲がってしまうとテレビで見た記憶があるけど……割と平らだし、とりあえずはこれで良しとしよう。
「……木を一本切って、まな板一つっていうのは勿体無いよな」
「そうだねー。トーマは火も使えるから、薪も要らないし……でも、魔法が使えないひと用に、薪にして売るっていうのはアリかも?」
「薪かぁー。出来れば、もう少し何か違う物を作りたいな」
いや、薪がダメな訳ではないんだが、折角なので何かを作って残したいんだよな。
「……そうだ! 食器が無いんだ。あと、おたまとか箸とか……いろいろ必要な物があるな」
「おたまやお碗は難しいけど、さっきの魔法でお皿や箸なら作れるかな?」
「そうだな。菜箸に、落とし蓋……調味料を入れる為の容器も必要だな」
まだまだ要る物が沢山ある事に気付き、皿や箸などを作っていると、お腹が空いてきた。
一旦帰って午後に戻ってこようと思い、作った食器などを持って歩いていると、見た事のある植物がある。
「これって……まさか、小豆!?」
「あー、ホントだねー! 私は植物に詳しい訳じゃないから正確な事は分からないけどー、かなり似てる……っていうか、これもう小豆で良いんじゃない?」
「だよねー……あと、これはどう見ても栽培されている訳じゃなくて、自生だよな? ……採取しちゃっても良いよね?」
「良いんじゃないかなー? 小豆は日本でも自生してるし。あと、この世界の人たちは豆類は食べないみたいだしねー」
そうなのか? ……と思ったけど、朝に行った青果店でも、豆の類は一切なかったな。
あー、豆って大昔は動物のエサだったとかって、何かで読んだような気もする。
とりあえず、誰かが栽培している訳ではなさそうだし、しかも沢山生えているので遠慮なく貰う事にしよう。
「そうだ! 家まで戻るのも面倒だし、今日の昼食は小豆にしよう」
といっても、煮ると時間が掛かってしまうので、簡単に蒸すだけだが。
豆は栄養いっぱいだし、良いんじゃないかな?
持ってきていた菜切包丁でスパスパ小豆のサヤを切っていき、お茶碗半分くらいの量を集めたら、
「≪アクア・クリエイト≫」
もちろんコズエの力を借りない普通の水魔法で豆を洗い、適当に見つけた大きな葉っぱで豆を包む。
「≪ボンファイア≫」
小さな焚火で小豆の入った包みを暫く熱して……おぉー、良い感じに出来た。
「いただきます……っ!? 味が濃いっ! 日本で食べた小豆とは味も香りも違うっ!」
これが異世界だからなのか、それとも採りたての小豆を調理したからなのかは分からないが、口の中で小豆の味と香りが弾ける。
一切味付けをしていない、素材の味だけでここまで美味しいのであれば、調味料を使って味を引き出したら、一体どれだけ旨くなるのだろう。
試したい……家に帰れば、青果店で買った食材たちも待っている。
この世界の食材……待っていてくれっ!
「えっ!? と、トーマっ!? どうしたのっ!? さっきの続きをするんじゃなかったのー?」
「すまん。気が変わったんだ。こんなに凄い食材を見つけてしまったからさ。料理がしたくてたまらないんだ」
「そうなの? まぁナギりんが喜んでいるから、いっか」
ナギりん? コズエが誰の事を言っているのかは分からないが、それよりも今は小豆の採取だ。
先程同様に菜切包丁で小豆を切りまくり、大きな葉っぱで包んだら、今回はこれを持ち帰る。
家にパンがあるから、小倉トーストなんかを作るのも良いかもしれない。
あんこを作って、ぜんざいに……って、流石にモチはないか。
何を作ろうかとウキウキしながら家に帰り、まずは持ち帰った小豆を鍋で煮る事に。
その間に、今朝買った食材を味見して……あれ?
「ん? トーマ、どうかしたの? さっきまで楽しそうだったのに、突然手が止まったけど」
「え? あー、うん。パンは美味しいけど、それ以外の野菜は普通……というか、ぶっちゃけるとマズいんだよね」
「そうなんだ。それは困ったねー」
「そうだな。料理屋を開こうとしているのに、そもそもの食材が……いやでも、アメリアが作ってくれたシチューや朝ごはんは美味しかったんだよな」
この村には青果店が一つしかない。
だからアメリアも同じ店で食材を買ったはずだけど……俺が買った食材が悪かったのか?
それとも、異世界ならではの調理方法があるとか?
「そうだ! アメリアに聞きに行こう!」
善は急げと、早速家を出る。
「……ふふっ。トーマ、頑張って。ナギりんが応援してるよ……」
コズエが小声で何か言っていたけど……早くもアメリアの家に到着した。
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