挿話3 ラングトン公爵の三男フランクリン
「ソフィア嬢はまだ見つからないのか!?」
「も、申し訳ありません。まさか領内で賊に攫われるなど、想定しておりませんで……」
「油断し過ぎではないか? あの綺麗な顔に傷でもついたらどうしてくれるのだ!」
くそっ! ようやく……ようやく、この僕にもチャンスが回って来たというのに、よりによって肝心のソフィアちゅぁんが人攫いに攫われるなんてっ!
許せないっ! ソフィアちゅぁんは僕のお嫁さんになる女の子だぞっ!?
それを汚い手で触ったりしたら……その人攫いは、僕の超凄い魔法で消してしまわないと!
「フランクリン様。ひとまず、私は今後の捜索方針について、主と――ハイランド公爵と相談してまいります」
「うむ。許可する」
「はっ! では、また適宜状況をご報告に上がります」
ソフィアちゅぁんの家、ハイランド公爵家の遣いの者が、うやうやしく頭を下げ、僕の部屋から出て行った。
今からハイランド家に戻り、ソフィアちゅぁんを探して、また報告に来るのか。
ソフィアちゅぁんが見つかったという報告が来て、僕が安心してぐっすり眠れる日はいつになるのだろうか。
ソフィアちゅぁんの事が心配すぎて、このままだと夜しか眠れないよ。お昼寝は大切なのに。
その姿を見送り、お母さまが口を開く。
「フランクリンちゃん。人攫いに攫われた女性だなんて、やめておいた方が良いんじゃないかしら」
「母上。今回の件に関しては、ソフィア嬢に罪はありません。責めるべきは、悪事を働いた人攫い共と、ソフィア嬢を守れなかったハイランド家です」
「まぁ、フランクリンちゃん……流石ね。そんな立派な事を言うなんてママは嬉しいわ……ただ少しだけ、攫われたというのが自作自演な気も……こほん」
ママが何か言っていたけど、ソフィアちゅぁんを手放すだなんて、有り得ない!
長くて綺麗な髪に、小さな顔。大きな瞳と、まだ成長途中な控え目の胸と、低い身長。そして何より、まだ十四歳という幼さ。
これも、見事にスキル授与でやらかしたハイランド家の長男のお陰だな。
ハイランド家の現当主は魔力至上主義なくせに、格が低いけど魔力が高い令嬢を娶っておいて、この有様。
ソフィアちゅぁんもハズレスキルかもしれない……と心配しているようだしね。
「さて、フランクリンちゃん。ソフィアさんの捜索はハイランド家に任せて、お昼寝にしましょうか」
「……そうですね」
はぁ……この昔から続く、ママとのお昼寝が、早くソフィアちゅぁんとのお昼寝に代わってくれないかなー。
アニキの子が男の子だったら、ママも孫の方へ行ったのかもしれないけど、現時点では娘が二人だからな。
俺としてはアニキの娘――姪と結婚でも良いんだけど、悲しい事に何故か嫌われているんだよ。
あぁ……早くソフィアちゅぁんを妻として迎えたい!
あ、違った。僕が婿としてハイランド家に行くんだっけ。いや別にどっちでも良い。幼いソフィアちゅぁんとイチャイチャしたいんだっ!
「そうだっ! 母上……ソフィア嬢の捜索に、僕も行ってきます」
「ふ、フランクリンちゃん!? いきなり何を言い出すのっ!? 相手は人攫いよっ!? そんなの危険だわっ!」
「はっはっは。母上も、僕の魔法の才能は御存知でしょう? 人攫い如きに遅れはとりません。それに、未来の妻の窮地を救うのは、夫として当然の事です」
「まぁ……フランクリンちゃん。そうまで言うなら、わかりました。流石に、うちの騎士団を出撃させてしまうと、戦と勘違いされかねないので、冒険者を雇いましょう」
「冒険者? 母上。私は護衛など必要ありませんが」
「フランクリンちゃん。貴方は、このラングトン家の男の子なのです。万が一の事あってはいけません。危険な事は冒険者にやらせ、フランクリンちゃんは安全な場所から魔法を使うのです。良いですね?」
うーん。危険な事か……って、相手は人攫いだから、心配し過ぎなんだけどな。
まぁでも、面倒な事を冒険者にやらせるっていうのはアリか。
「わかりました。では念には念を入れ、冒険者を雇ってソフィア嬢を捜索に行ってまいります」
「えぇ、くれぐれも無理はしないようにね」
「はい。ソフィアちゅぁ……こほん。ソフィア嬢も僕が直々に行けば、すぐに見つかるでしょう」
うへへ……ソフィアちゅぁん、僕が行くから待っていてねー!
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