挿話2 戻って来たレオン
「レオン、ここで暫く自分がやった事を反省するんだな」
牢屋なんて初めて入れられたから、今まで知らなかったが……村長の家の地下にあるんだな。
流石に入り口は別の場所で、スタッフも取り上げられているし、両手が縛られているから何も出来ないのだが、この真上にアメリアが居ると思うと少し興奮してしまう。
だが、今の俺に出来る事は、寝る事しかないので、横になって居ると、かなり時間が経った後、
「……な、何でもないですっ!」
今、確かにアメリアの声が聞こえたっ!
幻聴か!? とも思ったが、ここは村長の家の下だ。
狭い牢屋が幸いして、天井に耳が付けられるので、ピッタリくっつけてみると、
「……トーマさん、凄いですっ!」
しっかりとアメリアの声が聞こえる。
とはいえ、大きな声で話している時しか聞こえないが……トーマって、あの男だよな!?
な、何が凄いんだっ!? というか、今もアメリアの家に、あの男が居るって事かよっ!
畜生、許せねぇ!
その後も暫く聞き耳を立てていると、アメリアの驚く声が聞こえてくる。
「……万個っ!? ……えぇぇぇっ!?」
あ、あの男……アメリアに何をしているんだっ!?
何としても、あの男からアメリアを救い出さなければ。
牢屋にいるあいだ、ずっとアメリアの様子を聞き、あの余所者の男が家に入り浸っている事がわかった。
しかも、膝枕までしてもらっているようだ。
羨まし過ぎるだろっ!
どうやって、あの男を潰してやろうかと考えていると、
「出るんだ、レオン」
村長に言われ、久々に地下の牢屋から出る事が出来た。
「レオン。今回は初犯という事で、これで許そう。だが、次に村の中で何かを起こした場合、騎士団に連行する。わかったな?」
「騎士団に……チッ! わかったよ」
騎士団はマズいな。
牢に入れられたら幸運で、基本はその場で処刑だからな。
今回の件で、村の中で攻撃魔法を使ってはならないと定められてしまった。
あの男の潰し方を考えないと。
「……で、俺は元の生活に戻って良いんだな?」
「あぁ。反省しているならな。それと、村の外の魔物を追っ払ってもらおうか」
「へいへい」
なるほどな。
騎士団に連行とか言いながら、結局この村で一番攻撃魔法に長けた俺の力を借りたいって訳か。
まぁ魔物を追い払わないと、あいつらはどんどん寄ってくるからな。
……待てよ。この村は俺が居ないと困るんだよな?
つまり、余程大っぴらにやらなければ……例えば、村の外で魔物を追い払う為に放った攻撃魔法に、あの男が巻き込まれても咎められないって事か!
「じゃあ、早速南の森にでも行ってこよう」
「あぁ、そうしてくれ。……魔法を使うのに必要だからスタッフを返すが、さっきも言った通り、変な事は考えないようにな。次はないぞ?」
ふはははっ! バカだな。スタッフの無い魔道士は無力だが、逆に言うと、スタッフさえあれば無敵だというのに。
牢に居た時に聞こえていた言葉から、あの男の家は大体見当がついている。
早速南へ向かい、まずはあの男の家へ……中から人の気配がしないな。
朝から何処へ行ったんだ?
「ん? レオンでねーか。トーマさんの家で何をしてんだ?」
「えっ!? あ、あぁ、先日の件について、その……そう、あ、謝ろうと思って」
「あー、レオンもちゃんと反省したんだな。しかしトーマさんは留守かー。まぁ家の前に置いていってもえーか。じゃーな。もう変な事すんじゃねーべ」
くっ、家具屋の野郎に見られてしまったか。
あの男が何を注文したかは知らないが、この変な箱が家の外に置かれたまま、奴が行方不明なったら、俺が疑われる可能性が高くなるな。
仕方ない。今日は真面目に南の森で魔物を追い払うか。
実際に魔物を倒さなくても、適当に魔物を何体追い払ったと言うだけで金が貰える美味しい仕事だから、やめられないしな。
まぁ実際に遭遇したら追い払うが、森の奥にでも行かなければ、まず遭わない。
牢屋で身体が鈍っているし、散歩でもするか。
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