第16話 レベル上げオタク爆誕
「痛い!離せ!離せぇ!!」
信之がテレポートを発動している最中、代々木公園ではディレクターがゴブリンに襲われ腕を噛まれていた。
「ディレクターさんから離れてください!!このぉ!!」
イリスはカメラの三脚を武器にしてパシパシとゴブリンを叩く。しかしゴブリンはまるでダメージが無く、ディレクターの腕を齧っている。
「ギギャアー!」
イリスの後ろ側から別のゴブリンが向かってくる。
「…!ひっ!」
イリスは以前ゴブリンに襲われたことをフラッシュバックし、動けなくなってしまう。
その時。
「なんだか、いつもぎりぎりのところだね。」
目の前に突然ピエロが現れた。
「ピエロ…さん?」
「ピエロさんですよ~。」
緩い感じで答えた信之は、手に持っている大鎌でイリスを襲おうとしたゴブリンを一閃する。
「ほいっと。」
次にディレクターを襲っているゴブリンにはアイスランスを放ち、ゴブリンを倒す。
「ま、魔法?」
「うん。魔法だよ。」
イリスの問いに答えながら、ディレクターの腕をヒールで治療する。
「う、腕が治った?骨も見えていたのに…。」
ヒールをかけてもらったディレクターは初めて見る魔法に驚く。
「おや?ゴブリン増えてるね。パパっと消してくるよ。」
そう言い、信之は姿を消す。瞬間移動だ。
数秒で5体のゴブリンを倒した信之は、魔石や耳を回収しイリスのもとへ戻る。
「そういえば、イリスちゃんは怪我していないかな?」
「は、はい!大丈夫です!助けていただきありがとうございました!以前も助けていただいたのにキチンとお礼できずにすみませんでした。」
イリスは頭を下げた。
「気にしていないよ。今回も間に合ってよかったよ。」
「本当にありがとうございました。お礼に、あの、一緒にご飯でも…あれ?」
ご飯に誘おうとしたイリスだが、目のまえに現れたものに驚きを隠せなかった。
「どうしたんだい?」
「目の前に文字が…えっと、初めてレベル上昇したため、ステータスを獲得しました。っていう文字が…」
「おお、ゴブリンに攻撃したのかな?恐らくゴブリンに攻撃したことで、経験値を手に入れて、レベルが上がったようだね。ステータスと念じることで自分の能力を確認することができるよ。」
「わ、わかりました。確認してみます。」
イリスは胸の前に両手を持っていき、まるで祈るかのようにステータスを念じる。
その姿は本当に天使のようだ。
「み、見えました。なんだかゲームみたいな感じですね。ただ、HPやMP以外はすべて一桁です…。」
一桁であることが弱いと思ったのか、イリスは恥ずかしそうに教えてくれた。
「恥ずかしがることないよ。私も初めは同じだったから。」
お分かりだろうか。ピエロ姿となっている信之は、さりげなく紳士的な物言いを心掛けている。姿は全く紳士ではないというのに。
「ピエロさんも初めは一桁だったのですか…。」
意外という顔でこちらを見てくるイリス。かわいい。
イリスに見惚れていると、イリスは何かを決心したかのような顔で信之に話しかけた。
「あの、ピエロさん。私を強くしてくれませんか?」
「ん?強く?」
「あの、えっと…あっ!2度も襲われてしまっているので私自身が強くなって自分で対処できるようにするのと、あと周りの人も助けたいと思いまして!」
理由は真っ当なのだが、なんだが違和感を感じた信之。
「…で、本音は?」
「はう…、そ、その…私、ゲームが好きで、特にRPGとかMMOが好きで…。」
どうやらイリスはゲーム好きのようだ。これは意外だった。
「あー、ゲームのようにレベルアップがあるとレベル上げしたくなっちゃうよね。」
「は、はい。私ゲームで最初の町でレベル20とかに上げちゃうくらいレベル上げ好きで…」
「…え?レベル上げすぎじゃない…?」
これには流石の信之もドン引きする。
「う…。で、でも、そうすると楽しいんですよ?道中の敵とかボスが簡単に倒せるので、気持ちいいんですっ!」
気持ちをわかって欲しいのか、顔を少し赤らめながら、胸辺りで両手を握り拳にして熱弁するイリス。まじ天使。
ドン引きはしたが、よくよく考えてみると信之も人のことが言えない。
なぜなら経験値の間であれ程レベルを上げたからだ。それに普通の人が倒すのが大変なゴブリンを自分が簡単に倒すことが出来るのは、確かに気持ちいい。
「うん、そうだね。分かるよその気持ち。でも強く…か。」
レベル上げをするにも東京ではあまりゴブリンを見かけない為、レベルはほとんど上がらないし、経験値の間にイリスを連れて行けるのかも分からない。
イリスは見た所とても好感が持てる娘だと信之は思っている。
ディレクターがゴブリンにかまれている時、自身の命の危険があるにも関わらず他人を守ろうとした。
それにイリスは既に2回もゴブリンに襲われており、今後も襲われる可能性は否めない。
そんな時に自衛ができる能力があったらそこまで気にかける必要が無くなる。
なので、イリスを鍛える事については全く抵抗は無い。
「気持ちは分かった。近いうち連絡するよ。」
現状レベル上げをする狩場が不明な為、ここで回答はせずに狩場が見つかるのであればYes、無ければNoとする事にした。
「あ、あの、連絡先を教えて貰っても良いでしょうか。」
「ん?あー。連絡方法はスマホのアプリじゃないよ。」
そう言って信之は念話のスキルを発動する。
(こっちで連絡するから。)
(え!?こ、これってアニメとかで良くある念話ですか?!)
(そうそう。レベルが上げられそうな狩場が有ったら念話で知らせるよ。)
(あ、ありがとうございます!あ、こちらから念話って使用出来ますか?)
(残念ながら念話のスキルを持っていないと始めの発信が出来ないんだ。念話スキルが無い場合は受け答えのみ可能だね。)
(そう…なんですね。もしレベル上がったら念話のスキル取ること出来ますか?)
(うんうん。それは可能だと思うよ。)
(やったぁ!頑張ってレベル上げます!)
狩場が見つかっていないのに喜んでいるイリス。
流石にそこを突くのは性格が悪いので、何も言わないでおくことにした信之。
(じゃあ、また連絡するね。)
(はい。よろしくお願いします。ピエロさん。)
信之は瞬間移動でその場を去った。
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