第18話 楽しくてもおさぼりは禁止です!

「はあっ!」


「これで今日は20体目かな?かなり慣れてきたね。」


「はい!信之さんが補助魔法で援護してくれているので凄く体が軽いし、危険が無いです!」


イリスのレベル上げを行って今日で5日目だ。


1日目はゴブリンを殺すことにかなり躊躇していた。

人型ということに抵抗があったのだろう。


だが、何回か倒して行くうちにだんだんと慣れてきたようだ。

殺すことに慣れていくという文字面はかなり狂気を感じるが…。


モンスターは倒した際に消えるということもあり、トラウマになるということもなさそうで安心した。


ちなみにイリスが戦う際は、防御や攻撃力、素早さが上がる支援魔法を使っている。まだまだレベルが低いということもあり、自力でゴブリンを複数倒すというのは危険が危ないからだ…(故意)


「うんうん、ちなみに今のレベルはどのくらい?」


「先ほどレベル8になりました!もう少しで魔力操作スキルが取れそうです!」


分かったこととして、やはりゴブリンはメタル系のモンスターと比べるとかなり経験値が劣るようだ。


某ゲームのスライムとまではいかないが、このレベルになるまでに200体以上のゴブリンをイリスは屠っている。


そう、200体以上なのだ。


信之が富士樹海に到着した際に探知をかけたとき、ゴブリンの数は100体程度であった。


しかし、今信之が探知でゴブリンの数をざっと数えたところ、現在80体ほどのゴブリンがいる。


これについて信之が考え導き出した答えは、この富士樹海が「ダンジョン化」しているということだ。


一日目に信之とイリスは、30体程度のゴブリンを倒した。信之はその後探知を使い、ゴブリンの数が70体ほどであることを確認してその日はレベル上げをやめた。


その二日後に信之とイリスは、再度富士樹海に赴き、レベル上げを行った。行う際にゴブリンの数を確認したところ、100体に戻っていたのだ。


三日目も四日目も同じようにゴブリンの数は100体に戻っていた。これは恐らくポップする最大上限数が100体で、このダンジョンのボスが探知に引っかかった一回り大きいゴブリンリーダーなのではないかと推測した。


「信之さん?」


「ん?ああ、ごめん。ちょっと考え事してた。」


信之がこのダンジョンの事を考えていると、イリスから声がかかった。


この五日間で信之はイリスに自分の正体を明かした。

少ない日数だが悪い人間には思えなかったし、何よりピエロの格好をした際に自分で設定した紳士的態度を続けるのが面倒になったからだ。


勿論、信之であることは他の人に話さないようお願いしてある。


「そろそろ少しずつ支援魔法を切っていってもいいかもね。」


「本当ですか?…うう…ちょっと怖いですが、自分がどれだけ強くなったのかを確認したいのでやってみたいです!」


「OK。んじゃ、まずは素早さからバフを切ろうか。イリスはもともと速いから、素早さの支援魔法切っても全く問題ないと思う。」


「わかりました!」


ちなみに信之はちゃっかりイリスちゃんから、イリスへと呼び方を変えていた。


結果として、イリスはもう支援魔法無しで問題なく戦えた。

これはレベルが高いから、というだけではなく戦闘の才能があったようだ。


「やあっ!…あ!信之さんレベル上がりました!魔力操作のスキル取れそうです!」


「お、ようやく取れるんだね!おめでとう。」


「えへへ!ありがとうございます!では早速…。」


イリスは魔力操作のスキルを取得し、ウインドショットを発動させる。

ウインドショットはイリスの3メートルほど先の木に着弾し、木をなぎ倒す。


「うわぁ~~!!凄い凄い!!魔法凄い!!」


語彙力が低下したイリスは、興奮しすぎてその場でぴょんぴょんと跳ねる。


「初めて魔法使った時ってすごい感動するよね。その気持ちわかるよ。」


信之はイリスに共感した。

共感してから信之は、自分が魔法を初めて使った時、感動よりも検証を行う気持ちの方が強かったような気がしたが、気のせいということにした。


「よし、ここからもっとレベルを上げようか。具体的には15レベルくらいまで上げよう。」


「15レベルですか!わかりました。頑張ります!…ちなみに15レベルというのは、何か理由があるのでしょうか。」


「恐らくなんだけど、そのくらいのレベルがあればこの樹海のゴブリンリーダーは倒せるかなと思ってね。」


「!ここがダンジョンの可能性があるということは聞いていましたが、とうとうダンジョンボスを倒すんですね!」


「うんうん、この間ゴブリンリーダーを見に行って強さを確認してきたんだけど、15レベルくらいあれば倒せそうだったからさ。」


強さの確認は現状所持しているスキルではわからないので、信之はしっかりゴブリンリーダーと戦っていたりする。勿論、倒さないように信之からの攻撃は行っていない。


「わかりました!初めてのボス戦ですね!気合いを入れてレベル上げします!」


両手を握り胸の前に持っていくイリスはとても気合いが入っているようだ。


しかし…


「一昨日みたく、仕事をずる休みするのは禁止だからね。」


「うぐっ…。あ、あれは反省しております…。」


そう、イリスはレベル上げが楽しくて仕事をさぼったのだ。

流石の信之もそれに関しては注意した。

駄目だよ。と言ったらイリスが泣きそうな顔になってしまい、そこから注意はできなかったが。





1か月の時が経った。


「信くん。15レベルになったよ!」


「おめでと。さて、ゴブリンリーダー倒しにいこうか!」


「うん!」


1か月が経ってイリスはレベル15になった。

ちなみに1か月の間でイリスは信之への敬語が無くなっている。


これは信之からお願いしたことだ。


理由としては、戦いで連携が必要になった際に敬語では話す言葉が多くなってしまい、時間のロスとなってしまうことだ。


…というのは建前で、イリスともっと仲が良くなりたくて、まずは敬語をやめさせようと画策したためである。


信之とイリスは、森を歩いて1時間ほどでゴブリンリーダーのもとへとたどり着いた。



イリスの初ボス戦が始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る