第35話 決戦!蓮見悠助
「うらあぁぁ!」
悠助は大振りの縦切りを放つ。
「ふむ。」
信之は大鎌の刃で縦切りを弾き、柄で悠助の鳩尾を狙う。
「…!ちぃ!!」
悠助は柄の攻撃を間一髪避ける。
(思ったより反応がいいな。あの時から結構レベルを上げているのか?)
「はっ!前よりてめえの動きが見えんぞ!!おらぁ!そんなもんかよ!」
悠助は以前とは比べ物にならないほどのスピードと攻撃力で信之に襲い掛かる。
(…おかしい。あの頃からそれなりにレベルを上げたとしてもここまで強くなれないはず。以前の何倍も強くなっている…まさか、蓮見悠助も経験値の間のようなものを持っているのか?)
「あははははっ!力がみなぎってくるぜぇ!どうしたぁ!?俺はまだ本気じゃねえぞぉ!」
悠助は愉悦に満ちている。確かにそうなってしまってもおかしくないほど強くなっているのだ。
想定を遥かに上回る悠助の強さを不審に思い、信之は悠助のステータスを確認することにした。
基本的に相手のステータスを確認する場合は、相手が自らステータスを出し、相手に見せることを了承しないとみることができない。
しかし、魔纏士のスキルである「魔纏の瞳」を用いることによって相手のステータスを見ることができる。
ーーーーーーー
蓮見悠助
職業 魔法剣士☆1
種族 人間
称号 復讐者
Lv 30/40
HP 280 復讐時2800
MP 200 復讐時2000
ATK 95(120) 復讐時950(975) ※攻撃力増加Lvアップ分含む
DEF 40 復讐時400
INT 21 復讐時210
AGI 16 復讐時160
スキルポイント 20
スキル
「天賦の才」、「リベンジャー」、「鑑定」、「攻撃力増加Lv3」、「ファイアショット」、「ファイアスピア」、「紅蓮斬」、「紅蓮連撃斬」
ーーーーーーー
(なんだこれ!?)
信之は驚く。それも当然だ。
悠助のステータス自体は大したことは無い。
しかし、隣の復讐時と記載されているステータスが凶悪過ぎた。
(通常の10倍!?そんなチートクラスのスキルがあるのか!?…復讐となるとリベンジャーというスキルが影響しているのか。)
信之はリベンジャーのスキルを確認する
ーーーーーーー
(名)
リベンジャー
(概要)
後天性スキル。
復讐対象者が要因で、大衆から
復讐対象者と戦闘する際に限り、最大で自身のステータスが10倍となる。
ステータスの上昇幅は、復讐対象者とのステータスの差が開いているほど高くなる。
ーーーーーーー
「俺限定かよ!?」
自分限定であることに気づき、ピエロの紳士設定を忘れて素で突っ込む信之。(正確には信之とイリスが対象者)
「ひゃーはっはっは!どうしたぁ!?逃げるだけで精一杯かよぉ!?」
上昇したステータスで圧倒する悠助。
周りでは大きな音や声を聞き、野次馬が駆けつけている。
「おい、なんだよアレ。撮影か?」
「撮影ってどうやってんだよ。早すぎて見えねぇ。人間の動きじゃねーぞ?こういうの普通はテレビのCGとかで見るような動きだろ。これは今、目の前でこれ起きてんだぞ?」
「カメラマンがいないぞ!?撮影じゃないだろこれ!?おい!警察呼べ!」
かなりの騒ぎになっている。
「あぁ?ギャラリーどもがうるせえなぁ!?ぶっころ…いや、ピエロォ!てめぇがやられる所をこいつらに見てもらえよ!ははは!」
復讐者という称号に相応しい性格しているな、と信之は心の中で毒づく。
リベンジャーのスキル内容を受け入れた信之は、気になった天賦の才についても確認した。
(先天性スキルなんてあるのか!俺にはそんなのなかったんだけど…。羨ましいんですけど!?)
自分に先天性スキルがなかった事に対して少し挫けそうになりながらも、悠助の攻撃を避け続ける。
「ちっ!いい加減喰らえよ!!紅蓮連撃斬!」
悠助は、痺れを切らし自身の持っている最強のスキルを繰り出す。
紅蓮連撃斬は、一振をするだけで5つの炎を纏った飛ぶ斬撃を放てる。
射程は短く2メートル程だ。
紅蓮連撃斬を確認した信之は冷静に対処する。
「…ストーンシールド」
地面から分厚い石の盾が出現し、炎を纏った斬撃を防ぐ。
「クソが!ちっと魔法が使えるからって調子に…」
「ストーンブラスト」
信之が魔法を唱えるとストーンシールドは崩れ、その崩れた石が悠助に向かって飛んでいく。
「…!そんなんありかよ!?」
悠助は、石を紅蓮連撃斬で切り飛ばし、間に合わないものは回避しようとするが…
ドゴッ!!
「ぐぅ…!」
ストーンブラストで放たれた石が悠助の肩に当たる。
動きを止めた悠助を確認した信之は、魔装召喚のスキルで召喚していた大鎌を解除して、瞬間移動で悠助の背後に移動し、背中に魔纏士のスキルを放つ。
「
竜頭掌底波は、魔纏士上位に属するスキルである。
両手の内側の手首同士を合わせて手は開き、前に突き出し無属性の魔力で、口を開いた竜の頭を具現化して放つ、非常に攻撃力の高い打撃属性のスキルだ。
「が…はっ!」
悠助は吹き飛ぶ…が、このスキルはそれだけでは終わらず、具現化した竜は噛みつくように口を閉じる。
無属性の魔力で固められた竜の牙が悠助の足を噛み砕く!
「うぎゃぁあああああ!」
高威力のスキルを一身に浴びて、のた打ち回る悠助。
「そろそろクライマックスかな。」
まだまだ、余力を残している信之。
「はぁ…はぁ…。…くそがぁああああ!リベンジャーのスキルで俺はてめえよりつえぇはずだ!!なんで勝てねぇ!?」
悠助は、うつ伏せになりながら地面にこぶしを叩きつける
「そりゃ君にリベンジャーのスキルがあったとしても、私のほうが余裕で強いからだよ。」
ピエロの紳士的態度を取り戻す信之。
「なん…だと…。そ、そん…なことがあるか!!俺は…今ステータスが10倍だ!誰よりもつえぇ!」
悠助は自分が最強だと疑わない。
「やっぱり君はもう少しINT値上げた方がいいんじゃないかな?スキルの説明は見たかい?リベンジャーのスキルは復讐対象者とのステータスの開きがあるほど自身のステータスが上がって、上限が10倍だよ?上限に達しており、今現在のこの状況を鑑みれば、私とかなりステータスに開きがあるということが一目瞭然じゃないかな?」
「それをリベンジャースキルで埋めてるんじゃねえか!」
「…はぁ。なんで敵に講義しなければならないんだか…。仮に私のステータスが君の素のステータスの20倍高かったとしても、君は上限である10倍までしか上がらない。ここまで言えばわかるよね?」
目を大きく見開いて驚く悠助。
「お、お前のステータスは…今の俺の…倍あるってことか…?」
「さぁ?どうだろうね。」
ーーーーーーー
平信之
職業 魔導王 ☆1
種族 デブを卒業せし凡人(筋肉質)
称号 羞恥神・大魔導
Lv 3/40
HP 5980
MP 9999
ATK 2228 ※攻撃力増加Lvアップ分含む
DEF 1680
INT 8210
AGI 1050
スキルポイント 32000
スキル
「鑑定」、「獲得経験値増加Lv9」、「スラッシュ」、「十文字スラッシュ」、「バックスタブ」、「攻撃力増加Lv9」、「異次元収納」、「シールドアーマー」、「剣技Lv9」、「ファイアショット」、「アイスショット」、「ウインドショット」、「ストーンショット」、「魔力操作」、「魔装召喚」、「テレポート」、「瞬間移動」、「ヒール」、「ワイドヒール」、「エクスヒール」、「ファイアスピア」、「アイススピア」、「ウインドスピア」、「ストーンスピア」、「ストーンシールド」、「サンダーブレード」、「エクスプロージョン」、「アブソリュート0」、「サイクロン」、「グランドノヴァ」、「魔導の極み」、「消費MP軽減Lv9」、「キュアヒール」、「ナイトアイ」、「ウインドインパクト」、「纏幻」、「魔纏の瞳」、「竜頭掌底波」、「ショックウェーブ」、「纏翼」、「メテオスウォーム」、「ゼフュロス」、etc…、「ア〇ンストラッシュ」
・転職が可能です。
・上限突破の間へ転送が可能です。
ーーーーーーー
「とりあえず、君はもう眠りなよ。ショックウェーブ」
ショックウェーブは雷属性中位の魔法で、ダメージは雷属性魔法の中でも比較的低いが、気絶させる確率が非常に高い魔法だ。
「あがががが…。」
ショックウェーブを浴びた悠助は、体から煙を出しながら気絶した。
「さて、これで終わりかな。」
信之は、ふぅとため息をつく。
(こいつどうしようかな…)
信之は、悠助を殺すかどうかを悩んだ。殺すにしてもここでは人が多いし、イリスも見ている。人を殺すところを見せたくはない。テレポートで海に沈めようかとも思ったが、それをやったらイリスは信之が殺したと気づくだろう…。
(ん?そもそもイリスはどうしたいんだろうか。)
信之の気持ちとしては、リベンジャースキルについての講義あたりで悠助があまりに馬鹿すぎて怒りがどこかに行ってしまった。
ならばこいつの生殺与奪の権利はイリスに託そうと信之は考えた(酷い人間である)。
(イリス、こいつ殺す?)
(ダメ!!そんなこと信くんにしてほしくないっ!)
即断られた。
(でもこのままにしたら、またこいつはイリスや俺を狙うよ?)
(そうかもしれない、そうかもしれないけど…。)
イリスは渋っている。イリスは優しいので、信之に人を殺める事をさせたくないというのと、悠助が更生してくれるかもしれないという思いがあるのだろうと信之は感じた。
(わかった。とりあえずは殺さないよ。ただ、念のためこいつの今後の動向は俺が監視をする。まあ、こいつ足の骨は粉砕しているからすぐに動けないだろうし、警察も流石に今度は対策すると思うからもう何もないと思うけどね。)
(うん、その、いろいろ気を遣わせちゃってごめんね?信くん。)
(全然いいよ。気にしないで。)
「なにがあったんだよ…」
「わかんねえ。現実じゃないみたいだ…」
「テレビでやってたステータスっての獲得してんだろ。ステータス獲得したらみんなああなのか?」
戦闘が終わると、野次馬が騒ぎ出す。
「どいて!どいてください!警察です!」
(あ…これ…もしかして…)
イリスは何かに気付いたようだ。
(あ、イリス気付いた?)
(また…私、事情聴取!?)
(そうなるね…がんばって~!)
手を振って、信之は瞬間移動で消えていく。
(の、信くん!?)
イリスは現在事情聴取中だ。
「イリスさん、あなたは何度もピエロに助けられているようですが、もしかして知り合いなんですか?」
警察が疑うような目でイリスを見る。
「い、いえ、知り合いではありません。」
「では、なぜ何度もあなたは助けられているのですか?心当たりはありますか?」
「えっと…じ、実は。」
イリスは必死に考える。
「実は?」
「…ピエロさんは私のファンなんですっ!」
「は?ファン?」
目が点になる警察官。
「ファンだから、危ないときは駆けつけるって言ってくれたんですっ!」
「そ、そうなんですか…。」
「そうなんですっ!」
ファンで押し通して何とかやり過ごしたイリスであった。
後日、ピエロがイリスのファンであるという話が漏れ、ニュースとなった。
そしてSNSや掲示板では、ピエロに対して願いを記載する人が多く現れた。
その内容が…。
—————どうか我々から天使様を奪った男に天誅を!
地味に傷つく信之であった。
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