第40話 未熟者

「イリス!魔装召喚しろ!」


そう言いながら信之も魔装召喚する。


「う、うん!」


イリスも魔装召喚をする。

イリスの魔装は、銀色を基調とした軽装で、ところどころに青色が入っている。この青は信之とイリスで買い物をしたときに最初に選んでもらったワンピースが青色であり、二人が気に入った服だったため、魔装でも青色が使われている。


信之は、モンスターに鑑定と魔纏の瞳を使用する。


ーーーーーーー

(名)

キングリザードマン


(概要)

大きな体に似合わず素早い行動で相手を翻弄する。

近接戦のみではなく、魔法を使用するため注意が必要

ボスモンスターのため経験値が豊富

ーーーーーーー


ーーーーーーー

キングリザードマン


職業 槍使い

種族 とかげ

称号 とかげの王様


Lv 55/60

HP 2950

MP 1500

ATK 1610 

DEF 980

INT 880

AGI 1000

スキルポイント 1200


スキル

「なぎ払い」、「三段突き」、「串刺し」、「烈風槍」、「水迅槍」、「竜華槍」、「アイスニードル」、「泥弾」、「自己再生」

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「お前がキングの名前とるんかーーーい!」


メタルスライムではなく、リザードマンにキングの名前がついていて、思わず突っ込んでしまう信之。


「え?何のこと?」


いきなり突っ込みが入って、なんのことを言っているのかわからないイリスは首をかしげる。


「いや、何でもない。それにしてもこいつ普通に強いぞ…!」


「うん。なんか、見た目が強そうだもん…」


信之は大鎌ではなく、剣を構えて、イリスは拳にナックルを付けて構える。

イリスのナックルは、手の甲の人差し指と小指の第三関節部分(根本の部分)に鋭利なモンスターの牙のような形の装飾がされており、その分リーチは長くなっている。


「ギャアアァァァァァ!」


キングリザードマンの鳴き声とともに戦闘が始まる。


「イリスは正面から攻めてくれ!俺が先に後ろから攻撃してヘイトを稼ぐ!」


「わかった!」


信之は、バックスタブのスキルを使用し、キングリザードマンの後ろを取る。


「こっちだ!」


信之はキングリザードマンの足の付け根を深く切り裂く。


「グギャアアアァッ!」


キングリザードマンはダメージを負ったような動きを見せるが、すぐに信之の方向を向き反撃をしてきた。槍に風を纏わせ薙ぎ払う、烈風槍というスキルだ。


「…!やっぱり早いな!」


信之はそれを後方にジャンプし避ける。

しかし、キングリザードマンの攻撃は終わらない。


薙ぎ払った槍は水を纏い信之の方向に突いた。信之は後方にジャンプしている為、槍のリーチは足りず当たらないはずだが…。

キングリザードマンが使用したスキルは水迅槍というスキルで、槍の穂先から水が勢いよく飛び出し信之に向かっていく。その勢いは凄まじく当たったらただでは済まない。


「げ!ジャンプしている時にそれは反則だぞ!!」


信之は咄嗟に風魔法のサイクロンを水の進行方向に放ち、強制的に向きを変えることで回避する。


「狼双牙!」


イリスは後ろを向いたキングリザードマンにスキル狼双牙を放つ。

狼双牙は、両腕を高く上げエックス字に拳を振りぬく。イリスのナックルについている牙がキングリザードマンの背中を切り裂く!


後ろから攻撃されたキングリザードマンは、イリスの方を向く。


「わぁ!?こっち向いたっ!」


向くだろうとは思ってはいたが、本当にイリスの方を向かれて思わず声に出してしまう。


「ギャギャギャアァアアアアアッ!」


先ほどよりも増して声が大きく、激しい鳴き声を出す。非常にお怒りだ。

キングリザードマンは口から泥弾を発射する。


「ふぇええ!?やだやだ、浴びたくない!!」


泥弾は当てた対象のスピードを下げる効果があるのだが、イリスとしてはそれよりも口から出ていること、泥を浴びたくないことから当たらないように細心の注意を払って避けている。


イリスにヘイトが向いていることを確認した信之は再度攻撃を行う。


「よし!今度は俺が!…え?」


信之が攻撃をしようとしたところ、キングリザードマンは信之の方向を向く。


「そっち向くなら私が…きゃぁ!」


キングリザードマンが後ろを向いたと思い攻撃を行おうとするイリスだが、尻尾の薙ぎ払いを食らい吹き飛ぶ。


「イリス!」


「ん、大丈夫!」


しかし、尻尾が当たる直前にオートプロテクションが発動したため、大きなダメージは無さそうだ。


キングリザードマンは信之に槍を振り下ろす。

槍に風属性や水属性も付与されていないことを確認した信之は、横に避けて反撃を行おうとしたが…


「な、なんだ!?」


振り下ろされた槍の衝撃波で信之は上空に飛ばされる。竜華槍のスキル効果である。

上空に飛ばされて無防備となった信之に、キングリザードマンは串刺しのスキルを使用して槍を投げる。

串刺しのスキルを使用して投げることで、普通に槍を投げるより2.5倍の威力が発揮される。


「やばッ…!?」


流石にこの威力となると、すぐに発動できる威力の低い風魔法などでは軌道がずらせない。




槍が信之にあたる瞬間、信之は消えた。


「…はぁ…。今回の戦いでは瞬間移動は使いたくなかったんだけどな…。」


信之はキングリザードマンから少し離れた位置にいた。


上空に飛ばしたはずの獲物が突然消えた事に、首を傾げるキングリザードマン。


「反省点が多すぎた…。ほい」


信之は瞬間移動を使用し、キングリザードマンの後頭部に移動する。


「竜鏖撃滅斬ッ!相手は死ぬっと。」


キングリザードマンの首を刎ね、着地する信之。着地すると同時にキングリザードマンは黒い煙となって消滅する。


「信くんやったねっ!」


イリスは嬉しそうに信之の方に走ってくる。


「イリス。…おつかれさん。」


信之はイリスに笑いながら声をかけるが、元気が無いようにイリスは思った。


「どうしたの?」


「いや~、今回の戦いは反省だらけだわ~。」


今回信之は瞬間移動と、竜鏖撃滅斬を使用するつもりがなかった。理由はそれを使用した場合、戦闘技術も何もなくただの力技で終わってしまうからだ。


キングリザードマンのステータスはかなり高いものの、総合的に信之の方が勝っていた。そこで信之は、強力な技はなるべく使わずに倒すよう心がけていた。


今まで信之は、自分と対等と言えるほどの敵と戦ったことは無く、すべて一撃程度で終らせていたため、戦闘技術が皆無なのだ。天衝銀竜との戦いでそれを痛感したため、今回は戦闘技術を培うべく、スキルの制限を行っていた。


「結果として、ステータス格下相手に翻弄されてチートなスキルを使ってしまった…。」


がっくりとうなだれる信之。


「し、仕方ないよ。私も全然だったし…。それに今回は全く何も残らなかったわけじゃないよね!失敗をして、それの反省ができたならそれはちゃんと学んでいる証拠だよ!」


「…そう…だな。あとは反省してそれを活かしてどれだけ昇華できるかだな!ありがとうイリス!」


「うん!少しずつ技術をつけていこー!」


「おう!それにしても、キングリザードマンの経験値美味かったな!」


「あ!それ、私も思った!メタルクイーンより経験値良かったよ!?」


メタル系ではないが大量の経験値を獲得することが出来た。


「ボス系モンスターだからかな?別の遺跡にもいるかもしれないし、居たらまた狩るか!…あ、そういえばキングリザードマンの戦利品って…ん?」


信之はあたりを見渡すと腕輪が落ちていることに気付く。

その腕輪は、歪な形をしており虫のような彫刻が施されている。


ーーーーーーー

(名)

蠅王の腕輪


(概要)

大悪魔の力を宿す腕輪

蠅王に認められたものだけが装着ができ、その者は神職へと至る

魔神器の一つ

ーーーーーーー


「ち、チートアイテムきたぁあああ!」


「概要がとても凄そうだよ!?」


明らかにチート能力が搭載されていそうな腕輪にテンションが上がる二人。


「よ、よし。つけてみるか。」


「うん…。」


信之は蠅王の腕輪を装着しようとする…。


バチッ!!


「いったぁああ!?」


強烈な電流が流れ飛び上がる信之。


「の、信くん大丈夫!?」


「あ、あぁ。大丈夫。いてて…。これってまさか、蠅王に認められなかったってことか?」


「そ、そうなのかも…。もう一回つけてみる?」


「無理無理!!この電流めっちゃ痛いから!」


本気で嫌がっている信之。外傷は見当たらないが、かなりのダメージを負ったようだ。


「わ、わたし…つけてみる!」


イリスは明らかに緊張した面持ちで腕輪を装着しようとする。


バチッ!!


「い~たたたたたたたたたっ!!!!」


百裂拳でも出しそうな掛け声で、ダメージを負った手を振る。


「イリスでもダメか…。認められるためのスキルとかあるのかな…。」


「でも、痛過ぎて検証はしたくないね…。」


「確かにな…。いったんは保留か。」


明らかに強そうな雰囲気の出ている腕輪を装備できないことに落胆する二人であった。



「そういえば信くん。」


「ん?」


「その真っ黒な魔装…どうしたの…。なんか肩に角みたいなのとか、おなか辺りに顔みたいなのとか…」


「あ、えっとこれは…その…」


「信くん…大丈夫だよ?私、信くんが厨二病でも…その…き、気にしないよっ!」


「…ぐはぁ!!!!」

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