第97話 レベル上げ開始!
「…で、結局お前は俺らの仲間になるってことでいいのか?」
「(うむ。
信之は死の支配者に話しかけると、死の支配者は念話を返す。
「なんでそのネタ知ってるの!?…てか念話が出来たのなら最初からそうしてくれ…。」
「(いや、仲間になったことによって念話が使用できるようになった。主と対峙している最中に何度か念話は使用していたのだが弾かれたのだ。)」
何度か念話を使用していたというのは、死の支配者が信之と出会った際や瞬間移動でソフィアたちの後ろに移動した際に歯を鳴らしていたタイミングである。
因みに内容としては、「主に危害を与えるつもりはない、一緒に行動をさせてほしい」と懇願していた。
「なんだそれ?システム音にて仲間になった通知がトリガーで念話が可能となるという事であれば、俺はイリスたちに念話はできないはずだ。念話にそんな枷は無いはずだが…。」
「(恐らく、この経験値の間を創った者による、我への制限かと思われる。)」
「経験値の間を創った者?」
「(うむ。以前我は嘆きの大杖に魂を宿したであろう?杖が使用されるのを待っていたのだが…主たちはいつまでたっても使用しなかった。)」
「う…。」
「あう…。」
信之とイリスは異次元収納の肥やしとした嘆きの大杖を思い出し、気まずい雰囲気となる。
「(使用されないことに嘆いていた我に声をかけてきたのが、経験値の間を創った創造者だ。その者は我が使われないのは惜しいと言って経験値の間へ我を連れて行ったのだ。)」
「一体何のために…。」
「(それは我もわからぬが、我が死の支配者となり、主たちの仲間になることを創造者は想定していたはずだ。恐らく、創造者は主たちに今以上に力をつけてもらいたいのだと我は推察している。)」
「今以上に力を…か。ラノベなら強敵が出現するからって感じか。」
「…テンプレなら魔王ですかね…。」
蒼汰は顎に手を添えながら呟く。
「それなら、力をつけなきゃってことだね!レベル上げだね!!」
イリスは目から炎を出すのではないかと思うくらいにやる気に満ち溢れている。もちろん、強敵を倒すことにではなくレベル上げにである。
「その創造者は、本当に強敵が出現するから信に力をつけて欲しいなんてことを考えているのかしら…。鑑定の内容とか今まで信から聞いた話を聞くと、そんな真面目な性格をしていなそうに思えるのだけれど。」
ソフィアは今までの創造者の行動から、死の支配者の推察に懐疑的なようだ。
因みに奏とモルは寝ている。長い話は聞けない体質のようだ。
「(いづれにしてもここから先の階層に行くのであれば、力はつけておくべきだろう。メタル系がいるエリアを知っているので案内しよう。)」
「ふぉおお!やっぱりメタル系がいるんだね!!」
メタル系がいることを聞いて、やる気ゲージが天元突破するイリス。
「ん?この先の階層に何があるのかを知っているのか?」
あたかも先の階層の事を知っているかのような言い方が気になった信之は死の支配者に問う。
「(うむ。この先の階層には創造者がいる。)」
「なるほど、この経験値の間を創り、あんなふざけた鑑定内容を記載した奴のご尊顔を拝謁できるわけか。確かにそいつを殴るためには力が必要そうだな。」
「(それでは、案内しよう。)」
「…あれ、もしかして出てくるのは今度こそキングじゃ…。」
蒼汰はふと思ったことを呟くと…。
「蒼汰…キングの事は忘れるんだ…いいな?」
「…はいッ!」
信之のあまりにも恐ろしい迫力に声を裏返して返事をする蒼汰であった。
◇◆◇◆◇
「(主よ、ここだ。)」
信之達は、洞穴から西に進んだところでクレーターのような穴が空いた場所にメタルクイーンよりもさらに大きいサイズのメタルスライムを確認した。
ーーーーーーー
(名)
メタルエンペラー
(概要)
メタルクイーンが突然変異したもの
メタルクイーンをも超える経験値を所持する
攻撃手段はメタルクイーンと変わらないが、攻撃力と素早さが上がっている為注意が必要
キングが来ると思ったかな?かな?
ーーーーーーー
「ふっ…想定通りだな…。全く芸がないな、創造者君。」
想定通りメタルスライムの名前にキングが無いことを確認し、勝ち誇った顔をする信之。
「今まで散々振り回されたことは…言わない方がいいよね?」
「…そうですね、なにも言わないようにしましょう…。」
「実は、逆にツッコミがほしいのかしら…。」
「奏は空気読めるから言わないでおく~。」
「…お姉ちゃん程空気読めない人はいないと思うよ…。」
イリスたちに気を遣われていたことに気付いていない信之は、軽い足取りでメタルエンペラーの元へと向かう。
近づいてきた信之に気付いたメタルエンペラーは鈍色の触手で信之を突き刺そうとする。その触手の速度はメタルクイーンとは比較にならないほど速いが、信之は余裕で回避する。
「おっと。恐ろしく速い触手、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。」
上機嫌の信之である。
「私たちもたくさんレベル上げようね!」
「…そうですね。メタル系を倒す武器は依然足りませんが、交代で倒してレベルを上げましょう。」
「(メタル系を倒すための武器が無いのか?)」
「…はい、僕たちが所持しているメタル系特効の武器は、剣が二本とクローが一本なので、三人分足りていません。」
死の支配者の問いに答える蒼汰。
「(ならば、我が倒せる力を授けよう。メタルエンチャント!)」
死の支配者が魔法を発動させると、奏の神笛とソフィアのダーインスレイブ、そしてモルの爪が鈍色に光る。
「(メタルエンチャントはメタル系モンスターにダメージを与えられるようになる補助魔法だ。これで皆レベル上げができるだろう。)」
「そんな事が出来る魔法があったなんて、骸骨さん凄いね!!」
「(い、いや、それほどでも―――)」
「さ!みんなレベル上げガンバロー!!」
死の支配者が話し終わる前に話を断ち切ってメタルエンペラーを倒しに行くイリスたち。
「(実態化しても、あまり相手にされない未来が見えるのは気のせいだろうか…。)」
肩を落としてイリスたちの後を追う死の支配者に覇気はなかった。
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