第98話 マサル外伝_1

「うっ…。ここは…?知らない天井だ…。」


目を開けると、白い天井が目に入った。

いや、天井ではない。空間と言った方が適切のようだ。


私はなぜ全く見知らぬ場所にいるかを思い出すために今までの事を振り返る。


確か私は現在27歳で、小さい頃に母と父は離婚した。

父親に引き取られたが酒癖が悪く、私は毎日暴力を振るわれていた。

小学校低学年の時に殴られた痣を見た先生は児童相談所に連絡し、結果的に父親は逮捕され、私は親族に引き取られた。


その親族とは特段仲が良かったわけでもなかったため、私はいつも一人で過ごしていた。

アニメを見ることが唯一の楽しみで、いつもアニメを見ては主人公ではなく、少し闇を抱えたライバル的存在の者に憧れ、妄想やモノマネをしていた。


そんなことをしていたせいで私は親族や周りからは痛い奴だと…。

おっと、振り返るにしては昔過ぎたか。

最近の事を振り返ろう…。


会社で仕事をしていた私は、モンスターがこの世界に出現するようになってある程度たった時、天動社長に個別に呼ばれ現在の日本の状況やこれから日本をどう変えていくか力説された。


感銘を受けた私は天動社長に…

「ふっ。これも運命さだめか…。マイマスターよ、私の力が必要であればいつでも力になろう。」


と忠誠を捧げたら、天動社長や秘書が固まった。

恐らく感動しすぎて息もできなかったのであろうな。


その後、私はチュウニビョウのスキルでどんどんのし上がり、すぐにテロリストの幹部となった。


だが、今考えてみれば天動社長の話していた未来像は杜撰で、誰も幸せになどならないような内容だった。

なぜ天動社長のあんな話に私は感銘を受け、幹部としてテロ活動をしてしまったのか甚だ疑問だ。


テロ活動中におかしな仮面を付けた者が現れた。

その者は、ピエロのような仮面の者とおかめの仮面の者がいた。


正直言って恐ろしかった…。

仮面を付けた者は二人いたのだが、その中でもおかめは別格だ。

あんなにも死の匂いを放つ者は見たことが無かった。


下にいると思ったらいつの間にかに屋上まで来ているし

「私は元の世界へと戻る。あとは任せたぞ勇者たちよ!」 (家に帰ります。あとの事はよろしくお願いします。)


と言って家に帰りたい気分だった。


そんなことを考えていたら瞬く間に部下がやられてしまい、士気が大幅に下がった。

実は少し前からなぜ私はこんなテロ活動に加担してしまったのかと悩んでいたが…もはや手遅れであった。


ここまで来たらやり通すしかない。

本当は前に出たくはないが、幹部たるもの堂々と敵に立ち向かわねば士気は戻らないと思い、気持ちを奮い立たせて前に出た。


大丈夫、私にはチュウニビョウスキルがある。

これを使用すれば敵は怯み、隙ができるはずだ。


と、思っていたら何かとてつもない衝撃を受けていつの間にかに気絶していた。

起きたときには搬送されている途中だった。


その後、刑務所に送られた私は暇だったので毎日筋トレをしていた。


何に影響されたのかわからないが、腕立て伏せ100回、腹筋100回、スクワット100回、ランニングは外に出させてくれなかったので、脳内で毎日10キロ走っていた。


それを繰り返していたある日、いきなり光に包まれた…。

そうして俺は今、ここにいる…。




「ねぇ…。回想長すぎじゃない?」


「む…。」


横を見ると、白い椅子に座った者がこちらを見ていた。

その者は光輝いていて、顔を確認することが出来ない。


「私が今の今まで気づかないとは…。貴様、何者だ。」


「気付かなかったのは君がずっと自分の回想をしていたからだろう?あほ面しながらぼーっとしていたし、時々ニヤけたりして正直気持ち悪かったよ。」


光り輝く者は私をディスってきた。

しかし、この程度はいつも周りにコソコソ言われているので何とも思わない。

寧ろ誉め言葉だ。


そういえば中学生の頃に私が授業中におしっこが我慢できずに漏らしてしまった時は―――


「こらこら、言っている傍から回想に入らないでよね…。」


「おっと、そうだった。それで…何者だ?いや、言わなくていい。私の封印されしこの邪眼で貴様の正体を見極めてやろう!」


私は眼帯を外そうとするが…。


「君には邪眼は無いし、君の眼帯は警察に取り上げられたでしょ…。あぁっ!これだけは取らないでぇっ!って警察にしがみついていたじゃないか。」


「…くっ!殺せ!」


「はぁ…。こんなに疲れる人間は初めてだよ…。そろそろ自己紹介するよ。僕は君のいる世界と、別の世界を管理する者さ。神様って呼んでくれていいよ?」


ん?こいつは何を言っているんだ?

自分を神などと…痛い、痛過ぎるぞ。


「まさか、貴様も私と同類…なのか?」


「一緒にしないでくれるかな!!?」


ふむ。自称神はツッコミもできるようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る