第96話 骸骨の正体
「さっきのゴートデビルとは比べ物にならないほどの魔力だな…。」
「ふざけてる余裕はなさそう…だね!」
イリスは額に冷や汗を浮かべながら、構えを取る。
「カタカタ…カタッカタ…」
骸骨は歯を鳴らせている。
見た目は少し黒っぽい骨であり、額には縦に穴が空いている。まるでそこには目があったかと思わせるような穴であった。
着ている法衣は黒を基調としているが、ところどころに金の刺繡や飾りがあり、かなり豪奢な雰囲気を出している。
身に纏う魔力は、触れたものを死へと誘うのではないかと思うほど漆黒で濃密であった。
「…い、今の私では手も足も出なそうね…。」
その魔力を肌で感じたソフィアは、体の震えが止まらなくなる。
モルもおびえてしまい、体を丸めて震えている。
「ソフィアとモルには荷が重いだろうな。下がっていてくれ…俺らで倒す。」
「…ええ、不甲斐ないけどそうさせてもらうわね。」
モルを抱きかかえて、出口まで退くソフィア。
「さあ、どうでてくるかな…。」
「カタカタ…カタカタ…。」
目の前の骸骨は何かを訴えるかのように歯を鳴らしている。
「こっちからの攻撃を待っているのかな!?それならこっちから行くよ!」
イリスは素早く骸骨の目の前まで迫り、蹴りを放つ。
「あれ!?消えた!?」
骸骨は瞬間移動でソフィア達がいる洞穴の入口に移動する。
「ソフィア達を狙うつもりか!」
「カタカタカタカタ…!!」
骸骨はソフィアの後ろへと瞬間移動をしたが、ソフィア達ではなく信之を見ながら何かを訴えようと歯を鳴らす。
信之はそんな骸骨の様子を確認する余裕もなく、直ぐにソフィア達の元へ瞬間移動し、死刻を骸骨に振るう。
骸骨はひらりと避け、信之と距離を取る。
「身体強化をしているな。かなり素早い…。ソフィア、モル、大丈夫か?」
「わふぅ!」
「えぇ、大丈夫よ。…信、何かおかしくないかしら?あのがいこ…」
「ソフィア、話はこの骸骨を倒してからだ!」
信之はソフィアの話を遮って、瞬間移動で骸骨の真後ろに移動する。
「くらえっ!!」
信之は骸骨の後ろに回って死角から攻撃をするが、骸骨は刀が触れる紙一重のタイミングで瞬間移動を使用する。
「くっ!魔力で感知能力を向上させているのか…つくづく厄介な骸骨だな!」
「カタ…カ…タ…」
「な、なんだか落ち込んでないかしら…?」
肩を落とす骸骨を見たソフィアが呟くが、信之は戦闘に集中しているため、その声は届かなかった。
その後は信之が一方的に攻撃を仕掛けるが、骸骨は攻撃をしないという鬼ごっこのような状態が続いた。
信之としては、骸骨がどのような攻撃を仕掛けてくるのかを知りたかったが、全く攻撃してこないため、しびれを切らす。
「ふぅ…攻撃はしてこないか。なら、いい加減決着をつけないとな…。」
信之の纏う空気が一気に変わる。
本気で骸骨と戦う事を決めたようだ。
その空気を骨で感じた骸骨はすぐに行動をとった!
「…は?」
骸骨は土下座をしたのであった。
(な、なぜ土下座を…?いや、まさか土下座スタイルにならないと発動できない攻撃魔法とかがあるのか?)
信之は骸骨が土下座式攻撃魔法を使用してくると考え警戒するが、一向に土下座式攻撃魔法は発動しない。
「一体なんなんだ?鑑定!」
信之は骸骨に鑑定を使用する。
ーーーーーーー
(名)
(概要)
嘆きの大杖の中に宿る死皇帝が最終進化を果たし、死の支配者となった
死の支配者となったことで、魔力で骨を創造し自身の魂を定着することに成功した
どうにかして杖の所持者に使ってもらえないかと考えていたその者は、いつしか所持者を主と考えるようになっていた
主に仕えるために死の支配者となり体を得たその者は、主の傍から離れることは無い
ーーーーーーー
「あの時のワイトかよ!?てか、普通にこえーよ!?傍から離れないって呪いみたいなもんだぞ!?」
「の、信くん…その…おめでとう?」
「嬉しくないわ!!」
「次はだれを堕とすのかと考えていたけれど、まさか骸骨を骨抜きにするとは思わなかったわよ?」
「うまくねーし、こいつ元は男だからな!?」
「…」
「蒼汰!?なんかしゃべって!?ドン引きした顔しないでくれ!」
「信にぃに突っ込みの才能があったなんて…。」
「俺もびっくりだよ!こんな状況じゃ全然うれしかないけどなッ!」
「くぅーん…。」
「あ、うるさいって?すみません…。」
一人一人に丁寧に突っ込みを入れた信之は、見たくは無かったが今まで放置していた死の支配者の方を見てみると…。
ーーーーーーー
死の支配者が仲間になりたそうにこちらを見ている。
…仲間になった!
ーーーーーーー
「え、なに?ちょっと待て!そこは仲間にするかしないかを聞くところだよな!?なんで聞くこと飛ばして勝手に仲間にした!?」
ーーーーーーー
死の支配者はうれしそうに馬車に駆け―――
ーーーーーーー
「馬車なんぞないわッ!!」
システムへの突っ込みもしっかり行う信之であった。
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