第95話 再度現れた山羊さんは結局何もできませんでした。
「みんな…もう大丈夫だ。済まなかった。」
「あれは仕方ないよ…。」
「…そうですね、流石にあれは騙されます。」
「よく分からないのだけれど、信が立ち直ってくれてよかったわよ。あんな動揺した信は見たこと無かったから。」
あの後信之は動揺しすぎて、
「期待した俺が馬鹿だったんだッ!穴があったら入りたい!!」
と言い出したと思ったら、10メートルの垂直ジャンプを行い、身体強化を行った状態で頭から垂直落下して穴を作り、上半身半分を地面にめり込ませるという奇行に走った。
周りを確認しても穴が見当たらなかったので、自ら穴を作ったようだ。
その後、皆から手厚い励ましを受けて漸く立ち直った信之。
「それにしても、あの行動は何だったの?いきなり地面に刺さるから私、驚いたわ。」
「…ん?何のことだ?」
少し間を置いた信之は、何のことだかわからないという反応をする。
「え?だから、地面に…。」
「ン?ナンノコトダ?」
どうやら奇行に走った事は無かった事にするようだ。
「い、いいえ、何でもないわ。さぁ、火山を目指しましょ…?」
「そ、そうだね!火山に行こー!」
「うむ。」
信之の奇行について掘り返しても何もいい事はないと思ったソフィアたちは、話題を変えて火山へと向かうのであった。
因みに奏は、信之が地面に刺さった時から今の今までずっと笑い転げていた。
火山を再度目指していると蒼汰は敵の反応を確認する。
「…皆さん、気を付けてください。ゴートデビルです。」
信之達は上空を見ると、ゴートデビルがこちらに向かって飛んでくるのを確認した。
「またか。この階層はもしかすると、ゴートデビルが雑魚敵として湧くのかもな。」
「えー!?メタル系湧かないのかな?ゴートデビルはそれなりに経験値はくれるけど、それなら三階層でメタルクイーン狩ってた方が経験値美味しいよー…。」
「そうね、メタルクイーンとゴートデビルでは危険度も全く違うし、三階層の方が安心ね。」
「まだわからないぞ。メタル系が出現するエリアとかがあるかもしれないからな。とりあえずは目の前の山羊を倒すか。さて、奏さん。お願いがあって…。」
「大丈夫~、今度は操らないよ~。」
奏は空気を読んで傀儡のカプリッチョは使用しないようだ。
「サンキュー!じゃあやるか!」
「…とりあえず、翼が邪魔ですね。落とします。」
蒼汰は、ゴートデビルの後ろに魔蟲を一匹召喚する。
その魔蟲は、剣魔蟲というカブトムシのような蟲で、角が剣のように鋭利な魔蟲だ。
大きさは1メートルほどで単体でもそれなりに戦闘力が高い。
召喚された剣魔蟲は、剣のように鋭い角をゴートデビルの翼に向けて振り下ろす。
「メェエエエエ!」
不意に現れた剣魔蟲に対応が出来なかったゴートデビルは、翼を切られて落下する。
「敵の真後ろに召喚できるのか、えげつないな…。それにしてもあの蟲、動きも早いし結構強くないか?」
「…基本的に蟲は僕のステータスに比例して強くなるので、僕が強くなればなるほど召喚する蟲も強くなります。剣魔蟲は大量の召喚が出来ませんが、その分一体のステータスが高いですね。」
「そうなると、蒼汰が強くなったら強いハエを召喚できるってことね…。市販の殺虫剤効くかしら…。」
「…ぜ、絶対やめてください…。」
殺虫スプレーを見ながら真面目に考えるソフィアに、蒼汰は怖気が走る。
「メエエエエェエ!」
その隙に落下したゴートデビルは魔法を使用する。
雷を落とす魔法だ。
「お、ちょうどいいな。その雷、もらうぞ?アブソーブマジック!」
信之は、ゴートデビルが放った雷魔法を吸収する。
「メエェエ!?」
「ほい、返すわ。リリース!」
手をゴートデビルに向けるとそこから吸収した雷の魔法が放たれた。
「メ…メエ…」
「チャンスね!モル、いくわよ!」
「わふ!」
自身の放った雷魔法にうたれて感電し、動けなくなるゴートデビルを見てソフィアとモルが動く。
「ハァッ!!」
「ガウッ!!」
ソフィアはゴートデビルを斬り付ける。
ソフィアの装備しているダーインスレイヴは、血を吸収する毎に攻撃力が上昇するため、始めは浅いダメージであっても、斬り付ける度にダメージが上がっていくのでゴートデビルはどんどん深い傷を受けていく。
ソフィアの攻撃を避けようにも感電とモルからの攻撃に邪魔をされ、さらにダメージを負ったゴートデビルは力尽き、消滅した。
「やったわね!」
「わふぅ!」
「…お疲れ様です。」
「私の出番なかったよー!」
「奏も無かった~。」
イリスと奏は出番が無かったようで落ち込んでいた。
「つ、次はイリスと奏で倒そうな?」
「…!今回は四人だったけど、今度は奏ちゃんと二人だけってことだね!奏ちゃん頑張ろうね!」
「頭爆発させる~!」
「それはえぐいからやめてくれ…。」
次回は二人だけで戦えるという事で、イリスと奏のやる気スイッチが入ったことに安堵する信之。
「…信之兄さん、少し距離があるようですが、ゴートデビルが現れた方向に洞穴があるようです。」
「洞穴?んー、財宝探しのスキルを使用したが、特にアイテムがあるわけではなさそうだが…一応行ってみるか。」
信之は、洞穴に向かうことにした。
「ここだな。」
「あれ?宝箱があるよ?」
洞穴の中には宝箱があった。
色は黒と紫の異様に禍々しい宝箱だ。
「探知魔法には引っかからないし、宝箱に偽装したミミックではなさそうだな…。何があるかわからんが、開けるか?」
「信くんに任せるよ!」
皆、イリスと同じく信之の決定に従うようだ。
「よし、なら開けるか!戦闘準備しておけよ!」
信之は宝箱を開けると、膨大な黒い魔力が開いた宝箱から放出される!
「わわわっ!!」
「…これは、かなり強いモンスターが出そうですね…。」
「くぅ~ん…」
「かなりヤバいわよ…。」
「本気で倒す~!」
黒い魔力は人のような形を形成すると、法衣のようなものを着た骸骨が現れた。
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