第82話 ソフィア…恐ろしい子!

「よし、コントラクトが終わったぞ。」


「ありがとう。これで、経験値の間へ行けるのね。」


レベルが上げられることを喜ぶソフィア。


「そうだな。ただ、もう時間も遅いし、さすがに疲れた。経験値の間へ行くのは明日以降にして、晩御飯を食べよう。結局ルーマニアではご飯にありつけなかったからな。」


「うんうん!私もうお腹ペコペコだよー…。じゃあ、ご飯作ってくるね!」


「あら、それなら私も手伝うわよ。」


イリスとソフィアは晩御飯の支度しようと台所へ向かう。


「奏も手伝う~!」


奏も手伝おうと台所へと向かおうとするが。


「…ダメだよ。お姉ちゃんが手伝ったら料理が劇物になっちゃうよ…。」


「げきぶつ~?」


「…そこから教えなきゃだね…。」


蒼汰は奏を止めようとするが、そもそも言われていることが分からない様子であった。

とりあえず引き止めが成功しただけでも良しとする蒼汰。

ちなみに劇物について説明をしたが、奏から返ってきた答えは「ちょっと何言ってるか分からない。」であった。


晩御飯が作り終わり、食べ始める。

美味しいご飯に皆箸を進めるが、ソフィアだけ箸が進んでいない事に信之は気付いた。


「どうした?食欲がないのか?」


「お腹は空いているのだけれど、食べても味がほとんどしないのよ。」


「ん?十分味が濃いと思うんだが…そうか、ヴァンパイア化の影響か。」


「ええ、恐らくそれね。職業の内容を見た際に好き嫌いが多くなるって言っていたけれど、これの事かしら?味が無いのなら、好きも嫌いも無いと思うのだけれど…。」


「確かにそうだな。もっと食材を食べることで好き嫌いがわかってくるかもしれないし、今のところは様子見だな。」


「そうね。」


その後晩御飯が終わったので、奏と蒼汰を家に帰し就寝する時間となった。

いつもは信之とイリスは一緒に寝ているのだが、今日はソフィアもいるので女性二人はもともとイリスが使っていた部屋で一緒に寝てもらうことにして、信之は一人で寝ることにした。


———夜が更けた頃…。


信之は眠っていたが、人の気配で起きる。


(イリスか?)


信之はイリスが来たのかと思い、体を起こして気配がした方向を見ると、そこにはイリスではなく、ソフィアが立っていた。


「ん…?ソフィアどうしたんだ?」


予想外の人物に目が覚めた信之は、ベッドサイドランプを点ける。


「はぁ…はぁ…。ダメ…ッ!もう我慢できないッ!」


ソフィアは信之が寝ているベッドへ飛びこみ、信之に抱き着く。


「なっ!?どどどどうしたぁ?」


流石に焦る信之。

焦るというのは抱き着かれたことにではなく、これをイリスに見られた場合の事を想定して焦っているのである。

イリスに見られたら「悪・即・斬」されるのではないかと冷や汗が止まらない。


「お腹が空いて眠れないの…。イリスの部屋にいてもあなたの匂いが漂ってきて…お願い…吸わせて?」


「くふぅ!?」


ソフィアの潤んだ瞳と、上目遣いに大ダメージを受ける。


(待て、落ち着け、俺にはイリスがいる。……良し、落ち着いたぞ!血は腕のところを軽く切って飲ませればいい…。)


昂る心を落ち着かせた信之。


「よ、よしそれならまたあの時みたいに腕を切るから…ん?どうした、ソフィア…。」


ソフィアは信之を見て固まっていた。

いや、厳密に言うと信之の口の中を見て固まっていた。


「信…ほかにも美味しそうなところがあるじゃない…。」


「お…おい!待て待てそれはおかしい…むぐぅ!?」


ソフィアに口付けをされる信之。

そして気付いた時にはソフィアの舌も入ってきた。


「!?」


そのまま数分程、信之を舐ったソフィアは満足して口付けを終える。


「やっぱり美味しいじゃない…。もっとくれてもいいのよ?」


「…あぁ。好きなだけくれてやる…。」


そう言った信之の目はハイライトが消えている。


(おかしい…急にソフィアの事が異常に艶めかしく感じてめっちゃ興奮する。いや、そんなことはどうでもいい。はやくソフィアを抱いてしまおう。)


実はこの信之の思考は、ソフィアがヴァンパイア化した際に発現したスキルである誘惑テンプテーションが影響を与えていた。


信之はソフィアを抱こうと腕を伸ばした時…。

二人は急に北極に来たかのような極寒を感じた。


「のおぉぉおぶぅううぅゆぅぅううきいぃいさぁん?」


「ぴ!」


変な声を出した信之は一瞬で性欲が収まり、ソフィアへの欲情も消え去る。

声がした方向を見るとそこには般若が…いやイリスがいた。


「血をあげるだけかと思ったんだけどなぁ?何してるのかなぁ?」


「もっもちろん、血を渡そうとしていたよ!なっ?なっ?」


必死にソフィアに同意を求める信之であったが。


「へー。キスすることが血をあげることになるんだぁ?しかもディープキス…。」


「…イ、イリス様、ちなみにどこから見ていらしたのでしょうか。」


既に生きた心地がしない信之は、念のためにイリスがいつからそこに居たのかを聞く。


「なっ!?どどどどうしたぁ?…から見てたよう?」


「す、すいませんでしたぁあああ!」


いつもの如く即ジャンピング土下座をする信之。


「うん!今日は許さないよ!そんな欲求が出ないようにナイナイしましょうねぇ?」


「…ひぃ!!」


絶体絶命の信之であったが、そこに新勢力が追加された。


「あら、楽しそうね…。私も混ざっていいかしら?」


イリスの一方的な夜の格闘技になる所に、ソフィアという超新星が現れた。

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