第44話 音羽姉弟

「蒼汰おきろ~~!!朝だぞ~~!!」


ドアが開いたと思ったら、僕のおなかに衝撃が走った…。


「グフッカスッタムッ!…い、痛いよお姉ちゃん…。」


僕のベッドにダイブしてきたのは、お姉ちゃん、音羽奏おとはかなで。お姉ちゃんと言っても双子なので学年は一緒だよ。


僕の名前は音羽 蒼汰おとはそうた。中学2年生だ。

僕たちは神奈川県の県立の中学校に通っていて、今日も登校日。


「…おはよう。お母さん、お父さん。」


「おっはよう~!お母さん!お父さん!」


「おはよう、蒼汰、奏。ほら、早く朝ごはん食べちゃいなさい。遅刻するわよ。」


「おはよう。二人とも。」


お母さんとお父さんに朝の挨拶してご飯を急いで食べる。

朝は毎日テレビニュースを見てるんだ。


「…ふーん、とうとう魔石で武器の製造に成功したんだ。…どんな武器を作ったんだろう。そもそもどのようにして魔石のエネルギーを武器に変換するんだろう…。」


「蒼汰~!また難しいこと考えてる~!そんなの中学二年生が考えることじゃないよ~!学校行こうよ~!」


僕が考え込むと、いつもお姉ちゃんはつまらなそうな顔をして思考の邪魔をしてくるんだ。僕としては思考を巡らすのは楽しいことなんだけどな。


「いってきま~す!」


「…いってきます。」


いつも通りの通学路を歩いていると、飛んでいる虫がいた。ミツバチだ。


「わぁ~!ミツバチも朝から元気にはたらいてるね~!」


「…そうだね。かわいいな。」


お姉ちゃんは朝から頑張って働いているミツバチに尊敬の念を抱いたようだ。すぐ忘れるだろうけど。


僕は虫が大好きで、いつも観察とか、スケッチとかしてる。本当は家に持って帰りたいんだけど、虫がかわいそうだし、何よりお父さんとお母さんが絶叫する。お姉ちゃんは、虫については得意でも不得意でもなさそうな感じかな。


「あ!奏ちゃんおはよう!」


「奏!おはよう!」


「二人ともおはよう~!」


お姉ちゃんはとても人気だ。女の子からだけじゃなくて、男の子からも人気なんだ。友達の話をそのままいうと…。


黒髪のセミロングでサラッサラしていて超絶いいにおいがする!身長は146㎝で小さくて目はクリックリしているところがこれまた超絶キュート!おうとつは乏しいがそれがまたエクセレントッ!性格も明るくて誰にでも優しい!特に、特にいいのは俺にも話しかけてくれるところッ!女子で俺に話しかけてくれる子は奏ちゃんしかいないッ!たぶんきっと、いや確実に!奏ちゃんと俺はりょうおも…


これ以降は聞く必要ないかなって思って聞かなかったけど、とりあえずお姉ちゃんは人気だ。


「奏ちゃんの弟君もおはよう!」


「弟君おはよう。」


「…おはよう。」


「もう~、蒼汰!もっとハキハキ挨拶しなよ~。」


対して僕は、髪は黒で目元まで前髪がかかってる。目は姉さんと同じように大きいようだけど、人の目を見て話すのは苦手なんだ。今のようにいろいろ頭の中では考えてはいるんだけど、話すことが苦手で声が小さくなっちゃう。おかげで学校では影が薄くて、呼ばれるときも名前じゃなくて弟君なんだ…。


学校について授業が始まった。お姉ちゃんとは同じクラスだ。

今日は朝からテストらしい。テストは僕の得意分野なのでスラスラ書ける。


書けるんだけど、今日はなんだか救急車とか、消防車のサイレンの音がすっごく鳴ってて集中ができないなぁ。カーテン閉めてるから外は見えないんだけどね。


そういえばお姉ちゃんは…


「くかー。」


うん、いつも通りよだれ垂らして寝ているね。テスト用紙は白紙のようだ。あっ、白紙じゃないや。名前書いてあるから。


この間のテストでは、名前を書いている間に寝ちゃって、名前すら書けないのかって先生に怒られると言うより、凄く心配されてた。流石に僕も心配になったよ。


テストの問題を解いていると、放送が鳴った。基本的にテスト中に放送なんて鳴らないから、お姉ちゃんも飛び起きた。とりあえず、よだれ拭いて。


内容は、この学校付近でテロが発生したから、避難しろという内容だった。


「おい!あそこ見てみろよ!めっちゃ煙上がってる!」


「ほんとだ!見に行ってみるか!?」


「こら!!止めなさい!!すぐに避難するから、名前の順に並んで!!」


窓際の人達がカーテンを開けて、面白半分で話しているのを先生が注意した。


流石に興味半分で行くには危ないよね。


僕達は並んで、とりあえず体育館に行く事になった。


「お父さんと、お母さん大丈夫かな…。」


「…大丈夫だよ。むしろお父さんもお母さんもお姉ちゃんのこときっと心配してる…。」


「そうだよね。心配してるよね…ん?ちょっと~!なんで奏だけなの~!?」


良かった。安心したのかお姉ちゃんはいつも通りに戻ってくれた。


始めは授業が無くなって、喜んでいた子達も段々と不安になってきたり、つまらなくなってきたのか、ここにいるんじゃなくて家に帰ろうかと話してた。


僕も家に帰ってお父さんとお母さんが無事か確認したいな。


と、思っていたら、突然周りが騒がしくなった。知らない人の声が聞こえてくる。

僕はちょっとだけ体育館のドアを開けて覗いて見た。


遠くて分からないけど、10人近く人がいた。その人たちは、統一された服なんだけど警察とか、自衛隊じゃないことは一目瞭然だった。


これは逃げなきゃいけないと思った僕は、お姉ちゃんを呼んだ。


「…お姉ちゃん、ここは危ない。いったん隠れよう。」


お姉ちゃんは僕の目をまじまじと見る。


「…うん、わかった!」


お姉ちゃんはすぐに何かあったのだと気づいてくれた。僕が本気で発言しているというのをお姉ちゃんはわかってくれる。これは姉弟だからかもしれないね。


僕とお姉ちゃんは、体育館の倉庫に隠れた。倉庫の壁には低い位置に窓があって、そこから外に出れるんだ。何かあったらすぐにそこから逃げれるように倉庫で様子をみることにした。


ギギィーー。


体育館の扉が開いた。少しさび付いていて重い扉だから、開けるとかなり大きな音が鳴る。みんなも扉が開いたことに気付いて、一斉に扉の方を見ている。


「いたな…。こんにちは、学生諸君。悪いけど君たちは私たちの言う事に従ってもらうからね。」


入ってきた男は、灰色っぽいローブを着てる。今の時期にそんなの着たら汗だくだと思うんだけど…もしかして汗腺閉じてるのかな?


え、なんか背中に書いてある…。天動衆って文字が墨で書かれたような書体で、白字で大きく書かれてる。え…凄くダサい!僕なら絶対あんなダサいローブ着ないよ!?


「え…ださッ…」


あ、お姉ちゃんもぼそって言っちゃってる…。



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