第45話 絶望
灰色のフードを来た男の人は銃を持っているようだけど、あんな銃は見た事ないよ。
なんだか、SFに出てくるような銃だなって思った。
「一体あなたたちは…?」
先生のひとりが勇気を出して、男の人に聞いてる。
「我々は天動衆!!」
天動衆って言いながらコートの後ろの文字を見せてる…凄くドヤってるけど、やっぱりダサすぎるよ…。
「天動衆は、この弱国である日本を最強の国にすべく立ち上がった!!君たちにも天動衆の一員となってもらって、将来活躍してもらう!」
天動衆(笑)の人はなんだか、今の自分が凄くかっこいいって感じの顔してる…。僕知ってるよ。そういうの自己陶酔って言うんだよね。
「…え?何あれ…厨二病かなんかかな?」
「しッ!聞こえちゃうでしょ!」
クラスメイトも引いちゃってるようだ…。
…僕は一つ学んだよ。体や歳が大人だったとしても、必ずしも心の部分が大人だとは限らないんだって。この人を反面教師にして生きていこうって強く思ったよ。
「…静かにしてもらっていいかね…。」
聞こえちゃったのか、天動衆の人が青筋を立ててる。あぁ、ダメだよ、聞こえるように言っちゃ。
「舐められてるようだからね。少し我々の力を見せようか。」
そう言うと、天動衆の人は銃を向ける。向けた先は誰もいない場所だった。
パーンッ!!
銃を打った瞬間大きな炎の槍見たいなものが銃口から出てきて、体育館の壁に穴を開けた…。なに…これ?
「ふ、ふふふ、ふははははっ!やはり素晴らしいなこの魔石銃は!!魔法を覚えていなくても魔石銃があれば魔法を使用することが出来る!更に別属性に変えることも可能!試作品でここまでの事ができるとは!良い時代になったものだ!」
あの銃の威力を見て、みんな静かになってしまった。
「おいおい、意味の無い銃の使用は禁じられてるだろ?」
後ろからゾロゾロと人が入ってきた。たぶん、10人近くはいると思う。さっき外をのぞいた時にいた人たちだ。
「大丈夫だ。ここにお集まりの皆さんに黙ってもらうように行ったのだから、意味のある使用だろ?」
「まったく…屁理屈言いやがって。」
「うるさいなら銃を使うまでもない、素手でいいだろう。」
そう言って別の男は、壁を殴った。大きな音がしたその壁を見てみると、ヒビが入っていた。
「これで、無意味な使用になったな?」
壁を殴った男は、銃を撃った男に笑いかけて言ってる。
「…これは、逃げた方がいい。」
僕はそう思ってお姉ちゃんに伝える。
恐らく、あの人たちはニュースでやっていたステータスって言うのを獲得しているんだと思った。
「…このままだと、見つかるのは時間の問題だし、あれは普通の人の力じゃない。見つかってからじゃ逃げきれない。今のうちに窓から逃げよう。」
「みんなどうなっちゃうのかな…」
お姉ちゃんは他の子たちが心配のようだ。お姉ちゃんはみんなとすっごく仲がいいし、優しいから、気になっちゃうんだよね。
「…あのローブの人が言うには、従っていれば問題ないって言ってた。僕らはこの事を警察に話そう。後、うちに帰ってお母さんとお父さんが無事かも確認しておきたいな。」
「お母さんとお父さん…うん!そうだね。行こう!」
僕とお姉ちゃんは、窓から外に出た。フードの人達は確認したからか、周りには誰も居ないみたいで少し安心した。
「…いこう。」
僕達は、見つからないよう家近くの交番に向かった。
「町が…。」
「…こんな事が現実で起きるなんて…。」
僕たちが住んでいる町は色んな建物から煙が上がったり、火が上がったりしている。壊れた車とかもあったり、なんだか現実じゃないみたいだ。
「交番!あったよ!」
お姉ちゃんは交番を見つけて、中に入ろうとする…けど…。
「きゃっ!!」
「…お巡りさん…。」
交番の中で警官は倒れていた、血を沢山流して。
お姉ちゃんが顔を青くして凄く震えてる。人が沢山血を流して倒れているところを初めて見たんだ…それはそうだよね。
「…お姉ちゃん、見ちゃダメだ。家に行こう?」
お姉ちゃんは震えながらも頷いた。
特に何も無く家に着くことができた。外は荒れてるけど、全然人がいなくて静かだった。
もしかしたら、みんなどこかの場所に集められてるから、あまり人がいなかったのかもしれないなって思った。
鍵を使って家に入ろうとしたら、逆に鍵が閉まった。おかしいな…いつもなら絶対鍵がかかってるのに…。
普段こんな時間に帰らないから、きっとまだ鍵が開いていたんだ、と僕は自分に言い聞かせて扉を開けた…。
玄関に血だらけ人が二人倒れてる…。
紛れもない、お母さんとお父さんだ…。
「…え?」
お姉ちゃんは状況を理解出来ていない。僕は理解したくない…。
「ねえ、蒼汰。嘘だよね?こんなの…嘘だよね?夢…だよね…?」
「…」
僕は答えられない…。答えたく…ないよ…。
「いや…いやぁああぁああああ!!」
お姉ちゃんは、現状を把握して泣き叫んでいる。
どうしてだろう、僕は涙ひとつ出ない…。全然実感無いよ。お姉ちゃんより、もしかしたら僕の方が状況を理解出来ていないのかな。それとも理解は出来ていても、それを受け入れたくないのかな…。
「あっ?まだほかのやつ居たのか?」
しまった!?近くに人がいたんだ!お姉ちゃんの声を聞き付けて人が来る!
「…お、お姉ちゃん、人が来る!隠れなきゃ!!」
「いや!もういや!なんでこんな目に遭わなきゃ行けないの!!奏たちが何したって言うのよ!!」
だめだ…。お姉ちゃんは動けそうにない。来る人が天動衆じゃなければ良いけど…。
「あー、さっき殺っちまったとこのガキか?へへへっまた試し打ちできちまうじゃねーか。」
僕の願いは打ち砕かれた。目の前に現れた人は天動衆のローブを着ていた…。
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