第46話 信之は本気でキレました。
「なんだー?おかーちゃんと、おとーちゃんが殺されちまって泣いてるかい?ひひっ。」
天動衆の男は煽るように言ってくるが、奏はそれに構わず泣き続けている。
「うぅ…ひっく…。」
「ちっ!面白くねー!!…そこに倒れてるお前たちの親は、俺が殺したんだぜぇ!?」
反応がないことに苛立った男は、大声を出しながら二人に告白する。
「…!」
「お、お母さんと、お父さんが何をしたって言うの!?なんで殺したの!?」
蒼汰は驚き、奏は男に発言する。
「そいつらは俺に従わなかった!黙ってついてこいって言ってんのに着いてきやがらねぇ!それどころか、出ていけだの、警察呼ぶだのうるさかったからな!言うこと聞けねぇやつは天動衆には要らねえ。だから殺したのさ!ま、俺にとってはちょうど良かったけどな。試し打ちが出来たんだから!」
「…そんな…ことで…。」
奏はそれ以上言葉が出ない。
「…許さない…。僕は…お前を…絶対に許さない!!」
蒼汰は激怒し、男を睨む。
「ひゃはは!!そうかそうか!お前らも言うこと聞かねえのか?なら仕方ねぇなぁ!?殺すしかねぇよなぁ?」
男は銃を構えようとするが…。
(今だ!)
蒼汰は走り出し、銃を奪おうとする。奪ってしまいさえすれば敵を無力化、もしくは撃退できると考えた。
「あー?おせーよ!」
男は蒼汰を蹴り上げる。
「がはっ…。」
「蒼汰!?」
「ひゃーはっはっは!バカが!!銃を取れるとでも思ったか?俺はステータスを獲得してんだ!レベル4だぞ!?ステータスを獲得してねぇおめえなんかに取れる訳ねーだろ!」
そう言いながら、倒れた蒼汰の腹や顔を蹴り続ける。
「お願い!やめて!!蒼汰が死んじゃう!」
「あー?…ならお前から先に殺してやるか?」
男は奏に銃を向ける。
「…ひ!」
奏は恐怖で両目を強く閉じてしまう。
「さあて、先に死…あ?」
男が引き金を引こうとした時、足を掴まれた感覚を覚えた。男は下を見ると、蒼汰が男の足を掴んでいた。
「ちっ、めんどくせえ。やっぱりお前から殺すか。」
「…。」
蒼汰は何も話せない。蹴られ続けた結果、声も出せないくらいのダメージを負ってしまっているからだ。
「やめて!!お願い…やめて…!」
奏は何もできず、ただただ懇願することしかできない。
「まってろよ。すぐお前も殺してやるからな。」
男は奏にそう言って蒼汰に銃口を向けなおし、引き金を引こうとする。
「なにしてんだ…お前ッ!!」
ピエロの格好をした男が突然現れた———————
時は少し遡り、信之とイリスは神奈川のテロ現場に来ていた。
信之はいつも通りピエロの格好であり、イリスはおかめの仮面をしている。信之と一緒のピエロというのも味気ないという事で、イリスにどんな仮面が良いかを考えてもらった結果おかめとなったのだ。
信之はイリスにおかめにした理由を聞いたところ、「納豆おいしいからッ!」との事。その答えに対し流石の信之も、「…あ、うん、納豆は美味しいよね…。」としか言えなかった。
イリスは、始めは
真っ黒の少しだぼだぼのローブにひと際目立つおかめの仮面は、夜に出会ったら正直ピエロより恐怖だなと感じる信之。
「テレビでも見たが…ひどい状況だな。」
「うん…。町の人たち無事だといいけど…。」
信之とイリスは歩きながら町の荒れ具合を確認する。
「探知魔法で確認したが、複数の場所に人が多く集まっているようだ。一番近くには3人の反応があるな。」
「私も確認してみる…。あ、本当だ。これってみんな避難しているという事かな?」
「どうだろうな。一旦近くまで行って、様子を見…」
「——めて!!お願い…やめて…!」
信之とイリスが話していると、女の子の声が聞こえてくる。
「…!イリス、行くぞ!」
「うん!」
その声は明らかに危機的状況な叫びであったため、信之とイリスはすぐに声の元へと向かう。
信之が先に着き、状況を確認する。
中学生と思われる男女が男に銃を向けられている状況だ。さらに、男の子の方は既に虫の息ほどで非常に危険な状態だった。
信之は瞬間移動で奏、蒼汰、そして灰色のローブを着た男の元へ向かった。
「なにしてんだ…お前ッ!!」
信之は、灰色のローブを着ている男の行っている非人道的行為に怒り、ピエロの設定を忘れる。
「あ!?なんだこいつ!どこから現れた!なんだか知らねえが死ね!」
男は驚いて距離を取る。取ると同時に信之に向けて銃を撃つ。
銃からは氷の槍、アイススピアが放たれた。
(銃から氷?確かニュースで政府が対モンスター用に武器を作っているという話だったが、もしかしてこれの事か?)
信之は考えながらも、アイススピアに対して魔法を使用する。
「マジックブレイク」
マジックブレイクが発動すると、アイススピアは突如霧散した。
「…は?…なにがどうなってる…?」
男は混乱している。
銃から放たれた魔法が突然消えたのだから混乱するのも当然である。
ーーーーーーー
(名)
マジックブレイク
(概要)
下位魔法を打ち消すことができる特位魔法。
魔法の頂点を極めし者のみが扱える。
ーーーーーーー
男が混乱している中、イリスが到着する。
(イリスは、倒れている男の子を回復してやってくれ。)
(うん、わかった!)
イリスは蒼汰の元へ行き、エクスヒールを使用して回復を行う。
「なんだよお前ら!?くそッ!せっかく殺しができるってのに邪魔しやがって!」
「…殺しだと…?」
「あーそうさ!そこのガキどもを殺して親と一緒のところに送ってやるところだったのさ!お前らみたいな意味の分からねえのが来なければ、こいつらはすんなり親の元に逝けたのによ!」
男はぺらぺらと自分が行ったことについて話した。
「この子たちの親を殺した…?そんな…。」
イリスは、ドアが半開きになっている目の前の家が奏と蒼汰の家だと考え、ドアを開ける。玄関には男性と女性二人が血だらけとなって倒れているのを確認する。
(…信くん。ダメだ…この子たちのご両親、もう死んじゃってる…治せないや…)
(…)
イリスの悲痛の念話を信之は静かに聞く。
「ちッ!試作の銃だからさっきは途中で魔法が消えやがったんだな?後で報告しておくか、めんどくせえ。」
「…お前が、この子たちの親を殺したのか…?」
信之は声を押し殺しながら男に聞く。
「はぁ?お前馬鹿か?そういってんだろうが!そんでガキ共も、お前らも殺してや…」
「死ね」
信之は男を蹴り飛ばし、グラビティホールを発動する。グラビティホールは過重力のブラックホール(吸い込むのは術者が指定した対象のみ)を生み出す魔法で、飲み込まれた者は重力に押しつぶされ確実に死ぬ。
「おぼ…ぶべぇ…」
男は、過重力で体が押しつぶされながら穴の中に消えて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます