第47話 おかめ仮面は何気に怖いです。

「…ん…ここは…。」


「蒼汰!!良かった…!本当に…よかった…。」


「…お姉ちゃん。無事だったんだね。」


蒼汰が目覚めたことを確認した奏は、すぐに蒼汰を抱きしめた。

蒼汰は奏が無事であったことに安堵する。


「…やぁ、初めまして。とりあえず、二人とも無事でよかったよ。」


「…ピエロ?テレビで見たことがあります…。大鎌を持ったピエロ。」


「あぁ、そのピエロだね。テロがあったと聞いてここに来たんだが、その時に襲われている君たちを見つけて助けたんだ。」


信之はなるべく優しく蒼汰と奏に語り掛ける。

奏は蒼汰を抱きしめて泣いているので反応は無く、代わりに蒼汰がレスポンスを返す。


「…助けていただきありがとうございます…。」


「ぐすっ…あいあと…ございます…。」


蒼汰と奏はお礼を述べる。奏は泣いているせいで口が回っていない。


(さて、どうしたものか…)


信之は悩んでいた。この子達をどうすればいいか分からなかったからだ。


(信くん、おうちに連れて行っていいかな?この子達が落ち着くまで、私が見るね。)


(…わかった。)


「ここにいるのは危険だ。一旦別の場所に君たちを移動させたいと思うが、良いかな?」


「…お父さん…と、お母さんが…。」


奏は両親をそのままにしておくことが気がかりのようだ。


「…お姉ちゃん、行こう。このままここに居たら危ないよ。」


「でも、でも!二人あのままにして置けないよ…。」


「私に任せなさい。君たちのご両親は責任をもって病院に連れていくよ。」


信之は、亡くなった奏達の両親を病院に引き渡すことを約束した。


(信くん、近くの病院って…)


(ああ、探知で人が多くいた場所だ。)


「…わかりました。…お父さんとお母さんの事、よろしくお願いします。」


奏は泣き止んで信之にお辞儀をする。遅れて蒼汰もお辞儀をする。


「任せておきなさい。」




イリスは、奏達を連れて信之の家にテレポートした。


「着いたよ。ここが私たちの家。」


「…凄く…広い。」


「おかめさんの家、とても大きいんですね…。」


厳密に言うと信之の家だが…と思い、イリスは苦笑する​(と言ってもおかめの仮面をしているので、外見からは分からないが)。


今飲み物を用意しますね。

イリスはおかめの仮面をしたまま飲み物を用意する。傍から見たら異常である。


「はい、どうぞ。」


「…あ、ありがとうございます。」


「ありがとう…ございます…。」


飲み物を渡すが、二人はなかなか手に取らない。あれだけ色々あったのだからのどは乾いているはずだろうに何故だろうと首を傾げるイリスは、自分の様相が原因だという事に気づけない。


「…あ、あの。あなたは…あなた達は何者なんですか?」


「え、えっと~…。」


蒼汰の質問に困り果てるイリス。


(ど、どうしよう…お面とってバラしても大丈夫かなぁ?流石にまずいかなぁ…)


なんと答えるか迷い、体をうねらせるイリス。黒ずくめおかめのその動きを見て、戦慄する奏と蒼汰であった…。


一方信之は、すでに病院を解放していた。


解放というのは、信之が病院内を確認したところ、フロントにかなりの数の一般市民とみられる人たちが座らされており、6人の天動衆が見張っていた。


天動衆達の能力を魔纏の瞳で確認したところ、大体がレベル4から8程度だったため、信之はすぐに天動衆を無力化した。


「ピエロさん、ありがとうございます。本当にありがとうございます。」


今は、病院の院長にたくさんのお礼を言われている最中だ。


「いえ、ちょっとこの病院に用事があって、そのついででしたので。」


「用事…とは?」


「はい、実は…」


信之は院長に理由を話す。


「なるほど…。その助けた子たちの両親のご遺体を預かってほしいと。」


「ええ。そして正式な手続きを踏んでいただければと思います。」


「わかりました。承ります。」


院長は快く引き受けてくれる。


「ありがとうございます。あとで亡くなった方の子供たちが来るかと思いますので、その時はよろしくお願いいたします。」


信之はそう言うと、集めておいた気絶した天動衆とともにテレポートした。


信之がテレポートした先は、都内の大きな警察署だ。

ここに来た理由としては、ステータスを獲得した人間でも拘束ができる場所を開発したというのを以前テレビで見たからだ。


「な、なんだ!?」


「え!?ピエロ!?」


いきなり現れたピエロに警察達は動揺する。


「皆さんごきげんよう。」


信之は動揺する警察を気にせずに挨拶をし、話を続ける。


「テロ活動を行っていたテロリスト共を一部捕獲したので、こいつらを捕まえていただけますか。あ、ちなみに皆ステータスを獲得しているのでそこは気を付けてくださいね。」


「…」


信之の言葉に対してレスポンスは何もない。どうしようかと思っていると…


「わかった。承ろう。」


筋骨隆々な男がこちらに向かって歩いてきた。


信之は魔纏の瞳を使用してステータスを確認する。


(レベル26!かなりレベルを上げているな。この人もオタクの一人なのかな?とりあえずこの人に任せておけば、問題は無さそうだ。)


「では、お願いしますね。」


信之は去ろうとするが。


「まて!ひとつ聞きたい。」


マッチョマンに呼び止められる。


「なにか?」


「お前は、このテロを鎮める気か?」


「そうですね…。天動衆が日本を支配しても碌な未来がなさそうなので、鎮めることにします。」


信之はテレポートを発動させる。


「…お前にそれができる実力があると?」


「愚問ですね。」


そう言って信之は姿を消した。

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