第92話 ゴーレムはカッチカチでした。
信之達が一度自宅に戻ってから数日が経ち、今日は再度経験値の間の攻略を行う日だ。
因みにこの数日間、信之はイリスやソフィアに大いに搾られたが、救精守スキルのおかげでミイラにならずに過ごせている。
「野郎ども、準備はいいか!」
「おー!たっくさんレベル上げるよー!」
「ええ、問題ないわよ。」
「…大丈夫です。お姉ちゃんは…」
「ちゃんと、ハンカチもティッシュも持ったよ~。あと、みんなでやるゲームも持った~!」
「わふっ!」
各々やる気に満ち溢れていることを確認した信之は、満足そうに頷きながら経験値の間へと向かう。
「なあ、イリス。直行直帰って三階層は入り口の一か所にしかないよな?四階層への地下道はそこから遠いし、テレポートで行きたいんだが。」
直行直帰を使用して三階層に来た信之は、四階層の地下道まで距離があったためテレポートを使用していいか念のためイリスに確認を取る。
確認を取った理由は、直行直帰以外でのテレポートを使用した際に恐ろしい目にあったからである。
「道中レベル上げができるとはいえ、確かにちょっと面倒ではあるわね。」
ソフィアもどちらかと言えば信之に賛成のようだ。
「あー!信くんって例えば、RPGのゲームで町から目的のダンジョンに行くときに、モンスターが出にくくなるアイテムを使ってダンジョンに向かうタイプだ!」
「ま、まあそうだな。だって雑魚敵なんだし、倒さなくたっていいだろ?」
イリスの推理があっていたため肯定する信之。
「じゃあ、そのアイテムを使う理由って何かな?」
「使う理由?…敵と戦うのが面倒なのと、戦っている時間がもったいないし、経験値も少ないし…かな?」
「うんうん!なら、今この時に当てはめてみよう?敵と戦うのは信くんじゃないよね?そもそも信くんは武器が無いし、倒さなくても経験値が入るよ!」
「ぐっ…まあ、そうだな…。」
自分が何もしていないことを再確認された気がして地味に精神的ダメージを負う信之。
「それに戦っている時間については、経験値の間なら時間経過は無いよね?」
「そうだな。」
「で、ここにいる敵は雑魚敵かもだけど、経験値が凄く多いモンスターばかりだよ!こんなの得しかないよね!?」
「…あれ?確かにそうだな…。よくよく考えてみたら俺はなんてもったいないことをしようとしていたんだ!良し、三階層はテレポートを使わず進もう!」
「うんうん!経験値を美味しく頂きながら、先を目指そう!」
「おうよ!」
イリスの言葉に乗せられてレベル上げに燃える信之。
「…イリス姉さんに毒されてきてますね…。」
「洗脳~?」
「レベル上げオタク…恐るべしね。」
「わふっ?」
◇◆◇◆◇
「よし、着いたな。恐らくこの階段が四階層に続く道だ。」
レベル上げをしながら三階層を進んだ信之達は、四階層への地下道まで辿り着いた。
距離はあったが、二人ともメタルクイーンが現れてもすれ違いざまに瞬殺できるほど強くなっている為、思った以上にすんなりとここまで来れたのだ。
「前回と同じなら、地下道に番人みたいなのがいるのかな?確かメタル系だったよね?」
「恐らくいるだろうな。もしかしたら非常に強いモンスターが出てくる可能性もあるから、その時は俺に剣を貸してくれ。」
「ええ、わかったわ。」
信之達は階段を降りると、二階層や一階層の時と同じように開けた道へ出た。
「いるな。」
「すっごい番人って感じだね!」
四階層への出口の前に立っているのは、巨大なゴーレムだった。
「色は鈍色だし、差し詰めメタルゴーレムってところだろうな。」
「そうだね!見るからに経験値が美味しそうだよ!」
メタルゴーレムを見る瞳がEXPの文字となっているイリス。
「どのくらい強いのか未知数ね。」
「魔纏の瞳を使ってステータスを見ようか?」
「その必要はないわ。あまりそれに慣れてしまうのもよくない気がするのよね。」
信之の提案を断るソフィア。
「まあ、確かにそうだな。自分で相手の力量を見定める能力も必要だし、ステータスを隠せたり偽装するスキルがあってもおかしくないからな。」
「そう言う事よ。スキルばかりに頼っていると痛い目を見そうだしね。」
「…そうですね…。僕も相手の力量を見定められるように努力します。」
ソフィアの考えに感銘を受ける蒼汰。
「PK〇ァイヤ~!」
その横でゲームをやっている奏。
「わふっ!!」
吠えて気合いを入れたモルは、いつも通りに先陣を切ってメタルゴーレムに先制攻撃を仕掛ける。
「…。」
目の色が無かったメタルゴーレムは、モルが近づくと赤く目を光らせ拳を振り落とす。
―――ドガッ!!
地面には大きなクレータができるがそこにはモルはいない。
「わふぅ!」
モルは、ゴーレムが振り下ろした腕の上を走り、ゴーレムの顔に向けてメタルハントショートソードを振りぬく。
モルの一撃で、メタルゴーレムの片目に傷がついたが、気にせずモルに拳を再度振り落とす。
「硬いな。弱点であるメタル系特効の武器でもあの程度か。」
「…ダメージ1って感じですね。ここにきて本当にメタル系っぽい感じがします。」
「ダメージが1でもあるなら何回も攻撃すれば倒せそうね。」
「うんうん!たくさん攻撃するよ!」
全くダメージの通らない敵ではあるが、ソフィアとイリスはやる気があるようだ。
「あ~!カー〇ィにバット取られた~。」
奏は変わらず暢気にゲームをやっていた。
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