第93話 四階層の悪魔

「はぁッ!」


ソフィアがメタルゴーレムに攻撃を行う。

武器はもちろんメタルハントソードだ。


ガキンッという音を立てて、メタルゴーレムの腕に傷を作る。


「かったいわね…!一箇所に集中して攻撃をすべきかしら…。」


「任せて!」


イリスがすかさずメタルゴーレムの懐に潜る。


「爆裂拳!」


メタルゴーレムの腹部に連続でメタルハントクローを突き刺す。


「す、凄い速さね…。メタルゴーレムのおなかが一気に削られたわよ…。」


「わふ!」


イリスのステータスはソフィアやモルとは比べ物にならないほど高いので、攻撃力も早さも桁違いであった。

これにはメタルゴーレムも堪らず、直ぐに目標をイリスに切り替え、拳を振り下ろすが…。


「そんなに攻撃力は高くなさそうだね!」


イリスは片腕でメタルゴーレムの攻撃を受け止めた。


「よいしょーー!」


イリスはそのままメタルゴーレムの腕をそのまま引っ張り、一本背負いを放つ。


―――――ズドンッ!!


メタルゴーレムは頭から地面に叩きつけられ、胸あたりまで地面にめり込む。


「これで攻撃し放題だね!」


再度爆裂拳を放ち、腹部に集中攻撃するイリス。

メタルゴーレムは足をばたつかせるだけで何もできない。


とてつもない速度で削られた腹部から赤い球体が姿を現す。

赤い球体はメタルゴーレムの核であり、偶然イリスの狙っていた部分にその核があった。

拳打の嵐に巻き込まれた核は簡単に破壊された。

足をばたつかせていたメタルゴーレムの動きは止まり、黒い霧となって消滅する。


「なによ、そのハメ技…。」


「くぅん…」


メタルゴーレムの攻撃を回避しながらも連携しながらダメージを与え奮闘していたソフィアとモルは、イリスのパワープレイにドン引きである。


「三人ともお疲れ様。これで四階層へ行けるな。」


「そうね。なんだか気が抜けてしまったけれど、四階層は初めてなのよね?気を引き締めないとね。」


「うんうん!楽しみだね!」


「…お姉ちゃん、行くよ?」


「くぅ…メテオされた~。緑の帽子被ってるやつ許すまじ~。」



四階層に出ると、荒れ果てた荒野に出た。

空は夜の暗闇と炎の赤が混じった色で不気味な気分にさせられる。


「…なんだか危険な臭いがしますね。」


「今までとは雰囲気が全然違うね!」


「火山のエリアか…ラスボス前のダンジョンという雰囲気だな。あのひと際高い山が怪しそうだ。」


信之が差した山は頂上が見えないほど非常に高い山であった。


「という事で、一旦あの山を目指すか!」


「おー!」


イリスが気合いを入れた瞬間、信之の表情が変わる。


「…ッ!イリス、上にマジックウォールだ!」


「う、うん!マジックウォール!」


イリスは上空にマジックウォールを唱えた。

マジックウォールが完成したと同時に炎を纏った岩が上空から落ちてきた。


落ちてきた炎の岩はマジックウォールに阻まれて消滅する。


「び、びっくりした…。」


「本当ね、信が言わなかったら全員気付かなかったんじゃないかしら。」


「二人とも、気を抜くなよ。来るぞ。」


翼をはためかせて何かがゆっくりと降りてくる。

体は赤黒く、顔は山羊のようでその表情は凶悪である。

二本の角は後頭部にカールしながら伸びており、とても禍々しい。

二足歩行をしており、その姿は悪魔を想像させるモンスターであった。


「まるで悪魔ね…。とてつもない殺気を感じるわ…。」


ソフィアは額に汗を浮かべながら話す。


「まるで、というより正真正銘悪魔のようだ。」


信之は鑑定を使用した結果を伝える。


ーーーーーーー

(名)

ゴートデビル


(概要)

バフォメットの眷属

高い魔力を持っており、強力な魔法を使用する。

人間の肉を好み、貪り喰らう。

ーーーーーーー


「こいつはメタル系じゃないことだし、本気装備でやれるな。」


信之はそう言って死刻を取り出す。


「強そうだけど、近づいちゃえば勝てそうだね!」


「…久々に腕が鳴りますね。」


「わふっ!!」


「ふふ、みんなやる気ね。私だけ恐れているのがなんだか恥ずかしいわね。」


皆のやる気に感化され、恐れが消えたソフィア。


「さあて、この悪魔がどんなものか試してみるか!」


信之が先制攻撃を行おうとすると、笛の音が鳴る。


「メエェエエエエ!」


ゴートデビルは、自分の体が勝手に動いていることに驚き、声を上げるが止まらない。

信之達がいる場所から離れ、先ほどの炎を纏った岩を召喚する魔法を自分に向けて放つ。


「メエェエエエエッ!」


大きなダメージを負ったゴートデビルは悲鳴のような声を上げるが、体は言う事を聞かず、二度、三度と魔法を自分に放つ。


「メ…メェ…。」


体力が尽きたゴートデビルは、黒い霧となって消滅した。


「これ…傀儡のカプリッチョだね…。」


「…お姉ちゃん…。」


「私の覚悟…。」


「くぅん。」


「ん~?どうしたの~?」


なぜみんな自分を見るのだろうと、疑問に思う奏。


「奏…俺らのやる気、返して…。」


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