第55話 奏さんは升(チート)です!!

「わ~!凄い凄い!」


「…こ、ここが経験値の間ですか…。」


信之とイリスは、奏と蒼汰を連れて経験値の間へと赴いた。


「そうだ。俺とイリスはここでレベル上げを行っている。」


「…た、確かになんだか、とあるゲームに出てくるような色のスライムがいますね。形状は全然違いますが…。」


蒼汰がスライムを知っているのは、信之が二人を経験値の間へ連れて行く前にある程度話をしておいたためだ。


「この動く液体みたいなの~?なんだかちょっと気持ち悪いね。」


奏は、気持ち悪いと言いながら、イリスから借りたメタルハントショートソードでメタルスライムを突いている。


「メタルスライムの中にうっすらと丸いものがあるだろう。それが核だ。それを破壊するとメタルスライムを倒せるよ。」


信之は二人にメタルスライムの倒し方を教える。


「は~い!」


奏が先にメタルスライムの核を破壊する。


「…ふぉ~!?なんだかすっごい力が湧いてくるよ~!?あ、なんかうるさい声が聞こえる?」


どうやら奏はステータスを獲得し、レベルが上がったようだ。


「声はなんて言っていた?」


「えっと、ステータス獲得したよ~っていうのと、専用職業?っていうの取得しましたっていわれたよ~!」


「…ん?専用職業?」


「聞いたことないね、信くん。」


奏の話に信之とイリスは驚く。


「ちょっと奏のステータスを見てみるか。」


信之は魔纏の瞳を使用して、奏のステータスを確認する。


ーーーーーーー

音羽奏


職業 旋律士☆0

種族 人間

称号 友達100人


Lv 8/30

HP 68

MP 38

ATK 18 (83)

DEF 10

INT 7

AGI 10

スキルポイント 960


スキル

「調律」

ーーーーーーー


「旋律士…これが奏の専用職業なのか。…ん?初めての職にも関わらず突破の星があるぞ。」


職業の横にある突破の星は、通常複数職のレベルを30まで上げないと解放されない機能であるため、初めから星があることに驚く信之。


「星があるんだ!専用職業だから特別なのかな?ねねっ、信くん、他にはどんなのがあった?」


妹(正式な妹ではない)が特別であることに喜ぶイリスは信之を急かす。


「あとは調律というスキルだな。最初から獲得しているという事は恐らく先天性のスキルだな。」


「先天性のスキル!凄い!」


「せんてんせい?なんだろ~。」


ーーーーーーー

(名)

調律


(概要)

先天性スキル

楽器を使用する場合、他を圧倒するほど綺麗な音を奏でる事が出来る

また、その楽器のメンテナンスが不要となる。

楽器を使用した攻撃を行う場合、ATKが1.25倍上昇

楽器を使用した攻撃を行う場合、攻撃範囲が10メートル増加

ーーーーーーー


「ふ、普通に強スキルだろ…。」


「妹はチートでしたっ!?」


「?」


奏の先天性スキルに驚く信之とイリス。奏は何のことだかさっぱりわかっていない。


「…お姉ちゃんが演奏するの好きだからそういう職業になったのかな?」


一方で冷静に解析をする蒼汰。


「ん?ちょっと待てよ?音楽…。奏、フルートって吹ける?」


信之は気になったことができ、奏に問う。


「うん!吹奏楽部でフルートやってるから吹けるよ!」


「ッ!の、信くん!もしかして!?」


信之の問いにイリスは気付く。


「使えるかもしれないな…。」


「うん!試してみよう!」


信之は、異次元収納から経験値の間三階層で獲得したエウテルペの神笛を出す。


ーーーーーーー

(名)

エウテルペの神笛


(概要)

音楽の神の力を宿すフルート

エウテルペに認められたものだけが神笛を奏でる事ができ、その者は神職へと至る

神器の一つ

ーーーーーーー


「…凄い綺麗なフルート…」


神々しいフルートに目を奪われる奏。


「奏、これは持ち主を選ぶフルートで認められた場合にのみ吹くことが出来るらしいんだ。吹いてみるか?」


信之は、奏にフルートを渡す。


「うん、吹いてみたい!どんな音が鳴るのか凄く気になる!」


信之の提案に、奏は乗り気だが…


「あっ!ダメだよ、信くん!これ、もし認められなかった場合は大変なことになるよ!?」


イリスは信之に起きた事件を思い出し、引き留める。


「でも、唇がとんでもなく腫れたくらいだし、エクスヒールで回復できるんじゃないか?」


「それは信くんが、かなり高いレベルだったからだよ!奏ちゃんのレベルで認められなかったら大変…」


イリスが止めようとしていると、フルートの音が鳴る。

どうやら奏は待ちきれずに吹いてしまったようだ。


「ッ!奏ちゃん!?大丈夫なの!?」


「え?大丈夫だよ?それにしてもすっごく綺麗な音色~!…あれ?また声が聞こえた。」


ーーーーー

音羽奏がエウテルペに認められた為、エウテルペの加護を獲得しました。

音羽奏はエウテルペの神笛を使用できるようになります。

また、神職「神奏士ムーサ」へ転職できる権利を獲得しました。


レベルが規定に足りていない為、エウテルペの神笛は本来の力を発揮できません。

レベルが規定に足りていない為、神奏士への転職ができません。

神奏士に転職する為には特定のアイテムが必要です。

ーーーーー


ーーーーーーー

(名)

エウテルペの加護


(概要)

音楽の神であるエウテルペに認められた者だけに与えられる加護

全てのステータスが2倍となる

また、スキル獲得時における必要スキルポイントが1/2となる

ーーーーーーー


奏はシステム音の内容を三人に話す。


「…強すぎない?」


「強すぎだよね…。」


「…お姉ちゃん凄い。」


流石の信之とイリスもドン引きである。蒼汰はどこか誇らしげな表情をしている。


「え?強いの?やったぁ!信にぃ、奏の事頼っていいからねっ!」


「う…うん、頼らせてもらうよ、奏…。」


「えへへ~!任せて!」


口では言っておきながらも、中学生の妹に頼ることは絶対に回避したいと思った信之であった…







「ちなみにその神笛の攻撃力ってどのくらい?」


「えっと、今で1200ってなってるよ?」


「…ちょっと死刻さん?刃物だよね!?なんで負けてるの!?」


信之は、木管楽器(フルートは金属だが木管楽器に分類)が死刻(攻撃力1000)を上回っていた事実に数時間は立ち直れなかった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る