第70話 ソフィア・モルモリュケ

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「トランシルバニア大迷宮…。相変わらず大きな洞窟ね。」


ソフィアは大迷宮の入口である洞窟を見てそう答えた。


ソフィア・モルモリュケは、ルーマニア中部生まれで現在25歳。

髪は濃い茶色で、瞳も同じように茶色い。

髪はくせ毛で少しパーマがかっており、長さは肩につかないくらいのボブだ。

前髪はセンターで分けており、髪をかき上げた後のようなオールバックヘアである。


目や瞳が大きく、ストレート眉でとても意思が強そうに見える。

鼻も高く、目鼻立ちのはっきりした顔立ちだ。

体はスリムだが出るところは出ており、肌は褐色である。


「ソフィア、入る前から臆するな。これからここの十階層を攻略するのだからな。」


大男がソフィアに発破をかける。


「アドリアン、私は臆してなんかないわよ。そもそもいつも来ているのだし…。エドワードは私がそんなふうに見えたかしら?」


ソフィアはエドワードの方を向く。


「少なくとも、僕はそのようには見えなかったね。アド、実は君の方が臆しているんじゃないか?初めての十階層だからね。」


「エド!俺が臆するわけないだろう!」


「ふ、2人とも、こんなところで喧嘩しないでください~、みんな見てますよ~。」


シスターのような格好をした妙齢の女性がアドリアンとエドワードを止める。


「モニカ。…コホン。そうだな、こんなところで言い争うのはみっともないな。」


アドリアンはモニカに注意されたことを気にしてすぐに争いをやめる。


「アド、君は本当にモニカに弱いね…。」


「ぐっ…。」


エドワードに憐みの目で見られるアドリアンは何も言い返せない。


「はいはい、それよりも早く入りましょう?さすがに私も恥ずかしいわよ。」


ソフィアは洞窟へと入り、後を追うように三人も洞窟に入っていった。


ソフィアたちが現在いる場所は、ルーマニアの北西部だ。

世界でモンスターが現れたのちに、ここルーマニア北西部に大迷宮は突如現れた。


ルーマニアは日本とは打って変わって、一般市民が洞窟に入ることを許している。

ただし、入るには

・ステータスを獲得している者がいること

・ステータス獲得者は当該階層のモンスターを一人で倒せること

・4人以上の構成であること

の条件をクリアしていなければならない。


これを条件にすることによって、国はステータス未獲得者を入れたチーム構成を期待しているのだ。

ステータス獲得者が4人集まらない場合、ステータス未獲得者を含めた4人となる。

その場合、未獲得者はステータスを獲得した方がチームの効率が良くなるため、必然的にステータスを獲得することになる。それはつまり、国の強化を狙えるという事につながる。


さらにこの条件であれば、人々は比較的安全に魔石を手に入れることが出来る。

条件をかみ砕いて解説すると、一人でモンスターを倒せる階層で、4人以上の構成で狩りをするという事なので、全滅する可能性が低い。


勿論、比較的安全というだけで、確実に安全なわけでは無いし、ルールを破って強いモンスターと戦ってしまう輩はいるが、それは自己責任となっている。


ルーマニアでは、魔石を用いた開発が盛んであり、現在大量に魔石が必要な状況である。

そのため国は、魔石を高値で買い取るのだ。

それを知った国民の多くが大迷宮に挑戦をしている。


国ははじめ、ステータスを獲得している警察や軍で魔石を集めようと考えたが、有事の際に戦力を残しておきたい為、一般市民でも大迷宮に入れるようなルールとしたのだ。


「あーあ、それにしても本当に恥ずかしかったわよ?」


洞窟に入ったソフィアは、アドリアンとエドワードをジト目で見る。


「私たちは国でもトップクラスの探索者なんだから、あんなことはもうやめて頂戴。」


「いや、もとはと言えばソフィアが…な、なんでもない。」


ソフィアが発端だろうと言おうとしたアドリアンだが、ソフィアに睨まれ途中で話をやめる。


「…アド…。」


ソフィアにも弱かったアドリアンに、さらに憐みの目で見るエドワードであった。


その後ソフィアたちは、ゴブリンやゾンビ等モンスターを倒しながら十階層へと進んだ。


「さて、今日はとうとう十階層ね!」


目の前にある扉を見ながら、ソフィアは嬉しそうに話す。


「十階層は、誰も入ったことのない階層と言われています。細心の注意を払っていきましょう。」


「わかってる。腕が鳴るな。」


「あぁ、そうだね。僕やアドがいるんだから大丈夫だと思うけどね。」


各々気合いを入れ、四人は十階層の扉を開いた。


扉を開くと開けた場所に出た。

その中央には、人のような姿をしたものが立っていた。


「おや?とうとうこの階層に人間が来ましたか…。」


話したのは中央にいた人型だ。

容姿は、銀髪で褐色肌の赤い目をした男であった。

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