第109話 神の復讐

その後イリスは、ソフィアに謝罪した。


ソフィアは

「なら、これからは一人で考えずに、一緒に考えて行動しましょうね。」

と、言ってイリスの頭を撫でて、その懐の深さにイリスは再度泣く。


数分後、泣き止んで部屋に戻った際、イリスの足に何かが当たり、何につまづいたのか確認したところ、頭蓋骨が地面から生えており、イリスはまたまた泣くこととなった。


「(主、我の事忘れていたのだろう?)」


「ち、違うぞ!まずは、ソフィアたちへの謝罪が先かなと思ってそっちをだな…。」


「(主…。)」


ディースには眼球や瞼が無いので目の形はわからないはずなのだが、ジト目をされている気がしてならない信之は観念した。


「ディースの事、忘れていてすみませんでしたー!!」


頭を下げで謝罪する信之。


「(ふむ、まあ許してやろう。さ、我の事をイリス殿に説明すると良いぞ。)」


「…謝ったけどその頭蓋骨、カチ割っていいかな?いいよな?」


握りこぶしを作る信之。


「(済まぬ。少々からかいが過ぎた。イリス殿、我は生前貴族であった。もし、イリス殿が望むのであれば淑女の嗜みというものを教授しよう。)」


「淑女の嗜み?」


「(うむ。淑女の嗜みを身につければ、いきなり暴挙に出るようなことはすまい。)」


「えっと、もうあの神様にそんなことしないよ?」


イリスとしては、テオスの件は既に反省をしており、同じことは行わないと心に決めている。


「(ルスティヒテオスに対してはこの先、そのようなことは行わないであろうな。しかし、別の者には行ってしまう可能性もある。それを行わない為には今の考え方を変えなければならない。考え方を自分で変えることは非常に難しいのだ。他の者の観点があり、指摘を受け続けることで考え方が変わってくるだろう。)」


「なるほど…。」


(それに…)


ディースは、イリスだけに念話を使用する。


(しっかりと淑女の嗜みを身につけないと、主に愛想を尽かされてしまうぞ?)


「なななっ…!?」


「…?」


驚きながら信之を見るイリス。

何故イリスが驚いているのかがわからない信之は、反応に困る。


(愛想を尽かした結果、別の女性の事を…)


「やる!!私はやるよ…信くん!絶対に淑女の嗜みを身につけるからねっ!!」


目に炎を宿すイリス。


「お、おう…。イリスがやる気になってくれて何よりだ…。」


「ふふ、イリスちゃん凄いやる気ね。」


(ソフィア殿、頼みがあるのだが。)


さりげなく、話を聞いていたソフィアにディースは念話を使用する。


(あら、何かしら?)


(ソフィア殿にも協力を願いたい。イリス殿が淑女になるという意欲が無くなってきた際に、やり過ぎない程度にイリス殿に発破をかけてもらえないだろうか。ソフィア殿はまさしく淑女だ。そんなソフィア殿に発破をかけられればイリス殿はより淑女になろうと考えるだろう。)


(別に私は淑女だなんて思ったことはないのだけれど…。でもイリスちゃんが変わろうとしているのなら私は協力するわよ。)


(よろしく頼んだ。)


「(では、明日から講義などを始める。楽しみにしておくのだぞ、イリス殿よ。)」


「うん!お願いします!」


ディースは信之の影の中に入っていった。


「よし、話も終わったことだし飯にしよう。」


「うん!お腹空いちゃったね!でも、その前に蒼汰君と、奏ちゃんにも謝っておきたいな…。行ってきていい?」


「そうだったな。わかった、俺も行こう。あの二人がまだ飯を食べてなかったら誘うか。」


「そうだね!」


「なら、私は食材を下準備をしとくわね。」


「ありがとう、ソフィアさん!」


信之とイリスは、蒼汰と奏の元へと向かった。


その後は、イリスが蒼汰と奏に謝罪し、二人を誘って信之の家でご飯を食べ、

夜には二人を家に送り届けた。


夜も更け、信之が寝ようとすると扉をノックする音が聞こえる。


「ん?開いているよ。」


「遅くにごめんね。」


「お邪魔するわね。」


扉を開けて入ってきたのは、イリスとソフィアである。


(あ、この流れ…。絶対に搾られる…いや、絞られるわ…。)


未来を察した信之は心を決める。


(久々だが、大丈夫か?いや、大丈夫だ。俺には救精守がある。)


そう自分に言い聞かせるが、なぜか不安が拭い切れない。

信之は、救精守スキルを鑑定した。

鑑定したのは、概要を見て自分の精神を安定させるためだった…はずなのだが…。


ーーーーー

(名)

救精守


(概要)

搾り取られて死が確実である男が、奪われるであろう精を何とか守り、生き延びようと必死にスキルを求めた時に取得が可能となるスキル


取得することで精が尽きることが無くなるよ!やったね!

絶体絶命のように見えるから、助け船出しとくね!


―追記―

そういえば僕、信之君に殴られたんだよねー。

痛かったなー、神様を殴るなんてひどいなー。

てことで、今回だけは救精守の効力弱めておくね!

ーーーーー


「おい!!マジで俺死ぬぞ!!?」


テオスの追記に対して盛大にツッコミを入れる信之。


「ん?どうしたの?信くん?」


「いや、何でもない。そ、それよりさ、ちょっと今日はやめとかないか?」


「あら、何かあったの?」


「実は俺の救精守スキルだが、テオスが今回だけ効力を弱めているらしいんだ。その状態で二人を相手にするのは厳しい。すまない、明日なら効力が戻るかもしれないから待ってくれないか?」


事情を説明すればわかってくれるだろうと信之は正直に話す。

話を聞いたイリスとソフィアは、一拍置いてニヤリと悪い笑みをする。


「ふーん、そっかそっかぁ!信くんは今効力が弱まってるんだぁ?」


「…お、おう、その通りだ。だから…明日に…な?」


「信が救精守のスキルを取得する前は、事後にミイラになっちゃってたっていう話をイリスちゃんから聞いていて、その姿を見たいって話していたところなのよ。だから、その姿見せて…ね?」


ゆっくりと近づいてくるイリスとソフィア。


「ひぃ…待て!止まれ!!ストップ!!!ハウス!!!!」


ハウスと言われて顔を上げて反応するモル。


「違う!モルじゃない!二人の事…ちょ、やめ…アーーーーッ!」


過去最高傑作のミイラが誕生するのであった。

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現代にモンスターが湧きましたが、予めレベル上げしていたので無双しますね。 えぬおー @enuoh

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