第78話 誘われたので、町に行ってきますね。
「ソフィア!」
「ソフィア、無事だったか!」
「ソフィア…本当によかった…。」
意識を取り戻したアドリアンと、エドワード、モニカの三人は、ソフィアを見つけるとすぐに駆け寄った。
「みんな、無事でよかったわ。」
「何言ってやがる!お前こそ無事で…は無いか。その瞳、ヴァンパイアになっちまったのか?あいつとは違う瞳だが…。」
アドリアンは、ソフィアの変わってしまった瞳を見ながら問う。
「ええ、残念ながら私は人ではなくなってしまったわ。」
ソフィアは少し顔を伏せて答える。
その姿を見て信之は、人でなくなったことを仲間に打ち明けるのが少し恐ろしそうに見えた。
ソフィアの答えにアドリアンは固まる。
その態度にソフィアは、アドリアンを不快な気持ちにさせたと思ったようだ。
「ごめんなさい。モンスターになってしまった私は不気味よね…。」
その言葉にアドリアンは目を見開き、ソフィアを抱きしめた。
「不気味なわけあるかッ…!お前は俺達を守ってくれたんだぞ!感謝こそすれ、お前を嫌悪するわけがないッ!本当にありがとう…本当にすまなかった…。」
「ッ…!」
アドリアンは泣きながらソフィアに伝える。
その言葉にソフィアも目頭が熱くなり、涙が頬を伝う。
「アドのいう通りだよ、ソフィア。僕たちを助けてくれて本当にありがとう。」
「ソフィア、あなたにこんなにも辛い目にあわせてしまって本当にごめんなさい…。助けてくれてありがとう…。」
エドワードとモニカもソフィアに抱き着いて感謝の言葉を言う。
「みんな…。」
感謝の言葉は言われ言葉が出ないソフィア。
アドリアンは、ソフィアから離れて信之達を見る。
「変な仮面のあんたたちがソフィアを救ってくれたんだろう?本当にありがとう。俺は気絶していて知らなかったが、エドとモニカがあんたらにお願いしたんだってな。」
「ソフィアさんにも言ったが、大迷宮の観光のついでだ。気にしないでくれ。」
「だ、大迷宮を観光とか命いくつあったって足りんぞそれ…。」
信之の言葉に呆れるアドリアン。
「そうね、私達レベルなのであれば命がいくつあっても足りないでしょうね。けれどこの人たちのレベルは私達とは次元が違うわよ。」
「魔法が使えるから僕はダメもとでお願いしたのだが、そんなに強かったのかい?ソフィア。」
依頼した張本人であるエドワードは信之達の強さが気になった。
エドワードだけでなく、アドリアンやモニカも興味深そうにソフィアからの返答を待っている。
「ええ。あのアルカードを無傷で倒してしまうのだから異常よ。とはいっても、私も気絶していたから内容はわからないのだけれど…あっけらかんと倒したと言われちゃったわ。」
「無傷ってマジかよ…。あんたらいったいどんな方法で倒したっていうんだ!?」
アドリアンの言葉に信之達はアルカードを倒したイリスを見る。
「えーっと、お説教してる間に消滅しちゃったよ?」
「「「「お説教!?」」」」
ソフィアも含めて驚く探索者パーティ。
「あ、あんたのお説教っていうのは何かの攻撃魔法なのか?それとも物理…いや、スキルか?」
お説教という何かしらのスキルがあるのかを確認するアドリアン。
「え?普通に言葉で言っただけだよ?あ、でもおとなしくしてほしかったから、少しだけ攻撃したよ!でもそんなに力入れてないよ?」
「…」
軽く殴った程度ですと言わんばかりのトーンで話すイリスにアドリアン達は言葉を失う。
「わ、私の想像以上だったけど…ね?次元が違うでしょ?」
「違うどころじゃねえ…。」
「これは敵にしちゃいけないね…。」
「…本当に人なのですか…?」
アドリアン達は驚きを通り越して、どう反応すれば良いかわからなくなったのであった。
「そこまで強いなら、もしかしてソフィアをヴァンパイアから戻す方法とか知っていたりするか?」
アドリアンは、信之達にソフィアをヴァンパイアから人へ戻す方法が無いか聞いた。
「スキルを漁ってみたが、残念ながらヴァンパイアを解く方法は無さそうだ。一応、こっちの仮面がアルカードと戦っている時に状態異常を回復する魔法を使ってみたが効果は無かった。」
信之はイリスがアルカードに説教をしている時にソフィアに対してキュアヒールを使っていたがヴァンパイアについては治せず、体力が回復するだけであった。
「そうか…。」
「私は平気よアドリアン。実は、この体になって相当強くなったのよ?」
「なんだと?俺より強くなっているのか?」
「あなたなんてもう目じゃないわね。三人で来ても勝てるんじゃないかしら。」
「ほほう、それは聞き捨てならないね。アドだけでなく、僕もいっしょに倒せるなんて。」
「もう、三人ともまたそうやってすぐ喧嘩を始めて…。ふふ。」
そんなソフィア達の会話を聞く信之達。
「なんだか、みんな明るくなったね!」
イリスは信之に話しかける。
「あぁ。ヴァンパイアとなってしまったがソフィアさんは生きていたし、もともと明るく仲の良いパーティなんだろうな。」
「あ!あなたたち、今日はどうするの?もしよかったら泊まっていかない?ごちそうするわよ?」
イリスと信之が話しているとソフィアは信之達を誘った。
「いや、泊まると言っても俺らはこのように変装しているんだ。だから…」
「おうおう、いいじゃねえか一泊くらい!ごちそうさせてくれよ、なっ?」
信之が断ろうとするところを阻んで真っ白な歯を見せてサムズアップをするアドリアン。
「はぁ…、まあルーマニアの街並みも見てみたかったしな。少し付き合う程度だ、泊りもしないし、長居もしないぞ。」
「よかったぁ!じゃあ、町に行きましょ!」
満面の笑みとなったソフィア。
絶世の美女の笑みに見惚れて鼻の下を伸ばす信之。
「…ジロリ。」
イリスが信之を見る瞬間に信之は真顔となる。
「怪しい。」
「…さて、なんの事かな?」
信之達は町へ向かった。
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