第73話 おかめは魔族ではありませんからね!

「ここがトランシルバニア大迷宮か。」


信之達は、テレポートで大迷宮の入口に来ていた。


「凄い大きさだねぇ!まだ入口なのに…。」


信之とイリスが大迷宮の規模に驚いていると…


「…あ、あの…早く入りませんか。その、すごい見られてます…。」


周りを見ると、大迷宮に入ろうとしていた探索者達が皆こちらを見ていた。


「おっと、仮面にローブの四人組なんてそりゃ目立つよな…入ろうか。」


「う~、わふっ!」


モルは自分を忘れるなと吠える。


「おっと、ごめんごめん、四人と一匹だよな。もちろんモルのことは忘れていないさ。」


「信にぃ、周りの人達ちょっと何言ってるか分からないよ~。」


確かにわからないのだが、相変わらず奏は何処ぞの漫才師のような言い方をすると信之は思いながら、言語を理解するスキルは無いかと確認する。


「外国の言葉を理解するスキルは…っと、これかな。」


ーーーーー

(名)

言語理解(人)


(概要)

様々な国の言語を理解することが出来る

また、発言する際も対象の言語での発言が可能となる

ーーーーー


信之は言語理解(人)を取得し、周りの人達へ聞き耳を立てる。


「おい、アレはなんの集団だ?」


「いやわからん、なんだか妖しい仮面をつけているぞ。」


「あれは近づかない方が良さそうだ、特に笑っていて頬が赤い仮面。あれは不気味すぎる。」


「確かに、あれが一番不気味だ。」


「イリスが聞いていたら、いじけていたな…。」


イリスはまだスキルを取得していないので、話をされていることに気付いていない。

そのことにホッとした信之は、皆にスキルを取得するよう話しをする。


「よし、全員取得したな。じゃあ、行こうか。」


「おー!」


信之達は、トランシルバニア大迷宮の洞窟の中に入った。


「ひろ~い!」


「…かなり広いですね。道に迷わないように気を付けないと。特にお姉ちゃん。」


「わかった~!」


蒼汰は、非常に広い大迷宮で迷わないようにと気合いを入れるが…。


「蒼汰…気合い入れてくれたところ悪いんだが…。目の前に階段がある…。」


「…はい?」


蒼汰は、信之に指を指された方向を確認すると、下への階段が目に入った。


「…え?こういうのって、広大なマップを探索するのが定石では…?」


「私もそう思う…。」


「なんでこんなところに階段があるの~?」


「わふ?」


「いや、それは俺もわからないけど、どうするか…。」


階段を見つけたが、先に一階層のマッピングを行ってしまおうかと悩む信之。

その時、目の前が光った。


「なんだろう?敵かな?」


全く緊張感の無いイリスは、構えることもなく光を見つめる。


現れたのは、気絶して倒れている大柄な男性と、足に怪我をした男性、シスターの格好をした女性で、それは、ソフィアがアルカードとの取引で逃げることに成功したアドリアン、エドワード、モニカであった。


「何かの魔法でここに来たのかな?」


イリスはどんな魔法かと首を傾げる仕草をする。


「ヒィ!今度はいったい何の魔族なの!?」


「くっ、折角ソフィアが僕たちを逃してくれたのに…。」


イリスというおかめを見たモニカとエドワードは魔族だと勘違いし、絶望する。


「え?魔族?」


自分の事だとは思っていないイリスは、後ろを向いて魔族を探す。


「俺らは魔族ではない。そもそもこれは仮面だ。とりあえずお前らを治療する。」


後ろで魔族を探しているイリスをそのままにして、信之は話を進めた。


「な、なんだ仮面か…。」


「ワイドヒール。」


範囲回復魔法を使用して、三人を回復する。


「こ、これは魔法?君は魔法が使えるのか!攻撃魔法とか使えないかい!?」


足が回復したエドワードは、必死の形相で信之に尋ねる。


「使えるが…。」


突然の反応に戸惑う信之。


「なら頼む!仲間を…ソフィアを助けてくれないかい!?金ならあるだけ払う!」


「ソフィア…?仲間に何かあったのか?」


「十階層にヴァンパイアが出たんだ!」


「ヴァンパイア~?」


「…さっき言ってた吸血鬼だよ。お姉ちゃん。」


「そのヴァンパイアは恐ろしく強くて、僕らでは全く歯が立たなかった。さらに奴は、僕らの仲間であるソフィアを気に入って、自分のものにすると言ってきた。ソフィアは僕らを逃がすことを条件に奴のものになると言って…ヴァンパイアに首を噛まれてしまって…。」


「そんな強引なの、許せない!」


いつの間にか話を聞いていたイリスは、ヴァンパイアの非道な行いに憤りを見せる。


「ちゃんと恋愛は相思相愛じゃないとダメだよ!私がそのヴァンパイアさんに会ってお説教してくるね!」


「お、おう…まあ助けることは賛成だし、行くか。」


ヴァンパイアに会って説教するというイリスの言葉に少し困惑する信之。


「すまない…本当にありがとう。」


「ありがとうございます。」


「いいさ、必ず助けるよ。」


エドワードとモニカに見送られながら、信之は十階層へと向かった。


「…ここが十階層ですね。扉があります。」


信之達は、十階層に着いた。

下への階段については五階層のみ少し離れており、階段を探している間にゴブリンやゾンビが現れたが、モルがすべて片づけてくれた。


「この奥にヴァンパイアがいたんだよね~?」


「ああ。探知魔法を使ってみたが、反応が二つある…まだいるな。じゃあ、開けるぞ。」


「わふっ!」


信之は扉を開けた…。

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