第13話 天使様でした。
信之が向かう大型スーパーは大きな商店街にあり、その商店街はかなり有名で良くテレビで撮影されたりする。
どうやら現在も撮影がされているようで、かなり混雑しているようだ。
「ここにイリスちゃん来てるんだってさ!」
「マジ?!神谷(かみたに)イリスちゃん?超絶美少女の!?」
「今グルメ番組で商店街を歩いてるんだって!見に行こう!!」
現在超売れっ子アイドルの神谷イリスがここにいるようだ。
神谷イリスは現在20歳で、フィンランド人とのハーフでとても美しい容姿だ。
目は大きく二重で青い瞳。鼻は高く唇は少し薄めだが色気がある。
また、髪がとても特徴的で銀髪、プラチナブロンドなのだ。
これにより、ファンからは天使様と呼ばれることもある。本人は恐れ多いのでやめてほしいと言っているようだが、効果は無さそうだ。
そんなことを考えながら歩いていると
「きゃーー!」
前方から女性の叫び声が聞こえてくる。
人が多いため、信之はその場には向かわず探知魔法を使用した。
探知魔法は魔力にて周りの状況を知ることができる魔法であり、このような状況下であれば目で見るよりも正確に状況を把握することができる。
「女性が何かに追われている…。この感じ人じゃない。ゴブリンか!?」
ゴブリンと推測した信之は、人気のいないところへ瞬間移動した。ゴブリンを倒すつもりなのだが、そのままの格好でゴブリンを倒してしまった場合、顔が特定されてしまい、面倒なことになると判断した為だ。
「魔装召喚!外見は…タキシードとローブを着て、顔はピエロの仮面をつけておくか。武器は大鎌持ってっと。あれ、俺のほうが不審者感でてるかも?まあ人を助ければ、不審者と思われないだろ。」
使用した魔装召喚のスキルは、使用者が装着したい装備を想像することでその通りの装備となる。込めた魔力量により強度が変わってくるようだ。
信之が考えたのは、シルクハットにタキシード。その上にローブを纏い、手には大鎌を持ったものだ。顔はピエロのような仮面をつけることにした。
「よし、行くか。」
信之は瞬間移動して、その女性のもとへと向かった。
信之が到着したとき、ゴブリンは女性に向かって鉈を振り下ろす瞬間だった。
「ひっ!!」
「おっと。」
間一髪(といっても信之にとっては全く間一髪ではないが。)、振り下ろされた鉈を信之は大鎌の持ち手部分で止める。
「ぐぎゃ?」
いきなり現れた信之にゴブリンは対応できず、首を傾げる。
信之は女性の方を向いた。
(あれ?この子、イリスちゃんか。)
ゴブリンに追われていた女性は神谷イリスだった。イリスはおもっていたよりも身長は低いようだ。
しかし、身長とは反比例して胸の方は素晴らしい成長を遂げているようだ。髪はとてもサラサラの銀髪で、天使様と呼ばれるのもあながち間違ってはいないなと思ってしまった信之であった。
「大丈夫かい?すぐ終わらせるよ。」
なるべく優しくイリスに声をかける。
「は…い?」
勿論イリスは状況がわかっていない。ゴブリンに鉈を振り下ろされたと思ったら、ピエロの仮面をした不審者がいつの間にか現れ、右手には大鎌をもっている状態で紳士的な対応をされたのだから。
「さて、ゴブリン君はさっさと死んで…ね!」
信之は大鎌でいとも簡単にゴブリンの首を刎ねた。
刎ねた瞬間ゴブリンは黒い煙となり、ドロップアイテムを落とす。
信之はそのドロップアイテムを異次元収納に入れた。
「ふむ。全然レベルが上がらないな。雑魚だしメタル系でもないから全く旨みが無いのかもな。」
そう呟きながら、信之はイリスの方を再度向く。
「君を襲う化け物は倒したよ。もう安全だ。」
そう言って、信之は腰が抜けているイリスの方に向かって手を出す。
「あ、ありがとうございます!!おかげで助かりました!」
イリスは自分が助かったことを認識し、信之にお礼を言って手を握る。
「怪我は無さそうだけど、念のために治療しておこうか。キュアヒール」
キュアヒールは、状態異常の回復と体力の回復を両方とも可能とする魔法だ。
通常のヒールと比べると回復量は低いが、普通の人なら全回復できる回復量となっている。ゴブリンから何か病気をもらっていないかと思い、ただのヒールではなくキュアヒールを唱えた。
「あれ?疲れが消えて…。なんで?」
初めての魔法にイリスは動揺する。
「うん、問題なく回復したようだね。」
その時周りが騒がしくなった。どうやら警察が到着したようだ。
「じゃ、警察も来たようだしお暇させてもらうよ。どろん。」
信之は瞬間移動でその場を去った。
どろんなんて言葉は今の若者はわかるはずもないが。
「警察です!道を開けてください!…あれ?化け物は?それに、今ここにピエロがいませんでしたかっ!?」
警察がイリスに声をかける。
「はい、ピエロさんが私を怪物から守ってくれました。お暇すると言って消えてしまいました。あのピエロさんは一体誰なのでしょうか?」
「わかりません。本官も初めてみたもので。情報もありません。」
「そうですか。きちんとお礼をしたかったのですが。」
イリスはそう言い、肩を落とす。もう会えないかも知れないからだ。
だが、イリスと信之の再会はそう遠くは無いのであった。
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