第87話 イリスの話を遮ることはできませんでした。

「さて、三階層の突破の前に、まずはソフィアのレベルを上げないとな。」


「それなら、二階層からにする?ソフィアさんは強いから、二階層からでも問題なさそうだよね!」


「そうだな。二階層である程度レベル上げをして、三階層で本格的にレベル上げをする流れにしようか。」


信之は、イリスの提案を採用した。


「わふっ!わふっ!」


相も変わらずモルは、広大な草原に興奮して走り回っている。


「はぁ…なんて可愛いのかしら…。」


その雲のように白い毛をふわふわ靡かせながら走る姿に見惚れたソフィアは、スマホで写真を撮り始める。


「ソフィア、モル。先に進むぞ。一階層の地下洞前に石があるから、まずはそこを目指す。」


「わふ?」


「石?なにか理由があるの?」


モルとソフィアが疑問を呈した際、奏と蒼汰はやってしまったという表情となる。

イリスは爛々と目を光らせ始める。


(まずい!スイッチが入った!)


「説明しよう!!」


イリスが大きな声で二人に教えようとする。


「あ、いや…イリス、すまんが今回は俺が説明する。」


信之はソフィア達を守るために、イリスが話し始めるのを遮る。


「えー!?なんで!?直行直帰さんのことを説明するのは私の義務だよ!?」


一瞬にして涙目となり、信之に訴えるイリス。


「義務って…。イリス、考えてみるんだ。モルはイリスの言葉が分からないだろ?俺が説明すれば二人とも一回の説明で済む。それなら俺が二人に一緒に説明した方がいい。」


それっぽい理由を話して、イリスを納得させようとする信之。


「むぅ…確かにそうかも…。んー、じゃあ信くんにお願いするね…。」


その言葉にほっとする信之と奏と蒼汰。

しかし、イリスの落ち込んだ姿を見て同情してしまったソフィアは取り返しのつかない言葉を発してしまう。


「あら、それならモルちゃんは信が話してあげて?私はイリスちゃんから話を聞くわ。」


「なっ…!?」


ソフィアがイリスを援護してしまったことに驚く信之。


それを聞いたイリスは表情が一変し、すごい速度で

ソフィアの元へ向かう。


「そっかそっか!じゃあ、説明するね!!こほん…。石というのは直行直帰さんの事でね、直行直帰さんというのは、この階層と二階層とか三階層を一瞬でテレポートしてくれるとても優秀な石さんでね!直行直帰さんはいつでも私たちの事を…」


イリスの急な変わりようと、早口で話し始めたことに対応しきれないソフィアは、唖然としながらイリスの話に相槌を打つ。


「…結局こうなってしまったか。30分は終わらないだろうな…。俺たちは適当にここら辺でモルと遊んでようか…。」


「わふっ!」


「は~い!」


「…ソフィアさん、あなたのことは忘れません…。」


30分後、イリスの怒涛の説明に生気を失ったソフィアを連れて、信之たちは二階層へと赴いた。


「なんで一階層の下の階層に空とか雪があるのよ…。」


「俺も最初はそう思ったよ。次の階層なんてアマゾンみたいな広大な森と川だからな…。ここでは常識は通用しないぞ。」


「アマゾンって…。どれだけ広いのよ…この経験値の間は。」


常識が全く通用せずに呆れるソフィア。


「まあ、とりあえずレベル上げをしていこう。上げているうちに楽しくてなっていって、そんなことは些事だと思ってくるぞ。」


「些事だとは思わないだろうけど、そうね。早速レベルを上げさせてもらうわね。」


信之はソフィアにメタルハントソードを渡す。


「ここにいるメタルヒュージスライムは攻撃してくるから気を付けろ。攻撃自体鈍いし、そこまで攻撃力も無いから大丈夫だと思うが。」


「わかったわ。とりあえず倒してみる。」


「わふっ!」


どうやらモルもやる気のようなので、メタルハントショートソードを渡して、レベル上げが始まった。

因みにイリスは、ある程度離れてすでにレベル上げを開始している。

離れているのは、ソフィアとモルの周りのモンスターを狩らないようにだ。


信之達はその間特にやることが無いので、ゲームを持ってきてローカル通信で遊ぶことにした。


「待て待て待て!今の攻撃はまずい!ちょっと回復薬使うから、その間耐えてくれ!」


「わ~!なんか死んだ~!」


「…タックルだね。あのタックルは当たり判定がおかしくて、亜空間タックルって呼ばれてるんだよね…。」


「あと二回やられたらクエスト失敗だ。気を付けて倒すぞ!」


「「おー!」」


信之達の狩りはまだまだ続く…。

因みに一死したクエストについては失敗で終わった。

亜空間タックルで二人同時にやられたためだ。



「信―!聞くのを忘れていたわ。メタルヒュージスライムはどうやって倒すのー!?」


「よし、ここだ!大タル爆弾を使うぞ!」


「え?大タル爆弾…?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る