第21話 イリスはホラーが苦手なので経験値に換えますね

イリスは無心でゾンビたちを倒している。


「ウインドスラッシュ、ウインドスラッシュ、ウインドスラッシュ、ウインドスラッシュ、ウインドスラッシュ、ウインドスラッシュ、ウインドスラッシュ、ウインドスラッシュ、…」


「ちょ、イリスさん?だ、大丈夫??」


「ハイ?ナンノコト?」


(あ、ダメだ…。この子、無心スイッチ入ってる…。)


「ゾンビ苦手なら違うところ行こうか?」


「ううん、大丈夫!ゴブリンより経験値がおいしいから頑張れる!」


どうやらイリスは正気に戻ったようだ。


それにしても頑張るベクトルが、普通の女の子ではないなとツッコミが出かけたが、頑張って飲み込んだ信之。

ツッコミを入れても明るい未来は待っていないと判断したからだ。


ただ、確かに経験値は良さそうだ。

ここに来て数時間ほどで3レベル上がっているとの事で、ゴブリンの時より数倍経験値はありそうだ。

更に幸運の指輪の効果も乗ってくる為、さらにレベルは上がりやすい。


「このまま頑張れば、1ヶ月位でイリスの魔法士をレベル30まで上げれそうじゃない?」


「んー、お仕事の忙しさにもよるけど、確かに1ヶ月あれば出来るかも!次はどんな職になろうかなぁ!」


魔法士のレベルMAX(イリスはまだ突破機能を獲得していない)が目前となって次の職業は何になるかを考えながら、ゾンビ達を片手間の如く屠っていくイリス。


「魔法士のレベル上げが終わったらここのダンジョン攻略しようか。」


「うん!ここよりももっとレベル上げられるところあるといいなぁ!」


目をキラキラさせて頬を赤らめるイリス。

その容姿は本当に綺麗なのだが場所と現状が…。

何せ、目をキラキラさせて鼻歌歌いながらゾンビの首を跳ね飛ばしているのだから…。




それから1ヶ月も経たないうちに、イリスは魔法士のレベルがMAXになった。(突破機能を持っていないため、30レベルが限界である)


この1ヶ月程の期間で、日本各地で色々と動きがあった。


各地でダンジョンが発見され、それが世に公表されたこと。

また、一部の一般市民がゴブリンなどのモンスターを倒してステータスを獲得しているという事だ。


ダンジョンが発見された事の発端としては、淡路島のボスモンスターが討伐された事からだ。


淡路島ではゴブリンリーダーがボスモンスターだったようで、警察や自衛隊が淡路島の占領されている一区画を解放する為にゴブリンやゴブリンリーダーと戦い、ゴブリンリーダーを倒した所、周りのゴブリン達が一斉に消滅したことからダンジョンという概念が生まれた。


政府は、淡路島の例を基に日本全体でモンスターが集合したエリアを確認した所、大雑把に100近くのエリアがあるという事で、そのエリアをダンジョンと命名し公表した。


そしてそのニュースを見た一部の喧嘩自慢等の一般市民は、ダンジョンに赴きモンスターを倒し、ステータスを獲得しているようだ。


一方で、もちろん返り討ちになってしまう人も多数いて、結構な死者や行方不明者が出ているようだ。

政府は一般市民がダンジョンに行かないよう、法律を作ろうとしているが、作ったとしてもあまり効力は無さそうに信之は思っている。


モンスターを倒したら、ステータスの獲得やスキル、魔法が使えるようになると言われたら、法律を破ってもモンスターを倒しに行く人はいると思ったからだ。


因みにだが、信之はイリスと行動を共にしてから、経験値の間でレベル上げを行ってはいない。理由は大きく3つある。


一つ目は、レベルを上げを行い過ぎたことによる飽きが来てしまったことだ。例えばゲーム同様、同じ場所で同じことの繰り返しをしているとどうしても飽きが来てしまう(イリスは違うようだが)。さらに、前回のレベル上げでかなり強くなっているので現状今のレベルで満足しているという点も理由に挙げられる。


二つ目は、イリスがレベル上げ仲間になったことだ。イリスが仲間になってから信之はイリスを連れて富士樹海やこの無人島のダンジョンでの補佐や指導が楽しくなってしまい、自身のレベル上げについて向上心が薄れてきているのだ。


イリスを経験値の間へ連れて行けるかどうかを試そうとしたこともあった。いきなり連れて行くのは危険なので、この話をする前に生物と一緒に経験値の間へ行くことができるかを検証した。検証した結果、生物と一緒に経験値の間へ行くことはできなかった為、イリスを連れて経験値の間へ行くという計画は潰れた。勿論この件は、計画が潰れたのでイリスには話していない。


三つ目は、経験値の間がただひたすら寂しいという事である。魔法士を☆7まで上げたときは、現実の世界で換算すると約一か月の間(勿論これは信之の体感で、現実の世界で一か月が経ったわけでは無い)ただ黙々とメタルヒュージスライムを狩っており非常に寂しかった。


それらの理由で、最近は経験値の間へ行かなくなってしまった。




「信くん!今日はボスモンスター倒しに行くんだよね?」


「そうだね。今回も頑張ってイリスにはボスモンスター倒してもらおう!」


「はい!頑張りますっ!」


今日はボスモンスターであるワイトを倒すべく、無人島に来ている。


ちなみにイリスは、魔法士のレベルが MAXとなった為、武闘家へと転職している。


武闘家へと転職した理由は、近接戦でもある程度戦えるようになりたい為らしい。

剣士の職でも近接には強くなるのだが、流石に日本で武器を持って歩くのは警察のお世話になる未来しか見えないので、武闘家に至った訳だ。


「じゃ、いこうか。」


「うん!」


信之とイリスは、ワイトの元へ向かう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る