第5話 もう、MOBじゃない!

次の日、信之は出社した。


信之は窓際社員である。頼まれた仕事も普通の人なら2時間で終わる仕事が、今までの信之の場合は3時間以上かかる。


これはPCのスキルや記憶力、頭の回転が悪いなど様々な原因があった。しかし、今の信之は違う。レベルが上がったことにより、INT値が文字通り桁違いに上がっているのだ。


「あ、すみません。明日中までに確認が必要だった書類ですが、確認して問題がなかった為、データ化しました。ついでに次の資料も確認して、そちらも既にデータ化済みです。」


「…え?もう?MOB…信之さん、ありがとうございます…。」


「いえ、大体のタスクは終了してますので、また何かお手伝い必要であれば声掛けてください。」


「わ、分かりました。」


「(MOBどうしたんだろ。めっちゃ痩せたと思ったら、いきなり仕事できるマンになってるんだけど!)」

「(ほんとだよね。痩せたら結構かっこいいし、全然アリだよね!)」

「(Excelの使い方分からなくてMOBさんに教えて貰っちゃった。なんかいい匂いした!)」

「(ごめん、それはちょっとキモイかも…。)」

「(えー!?)」

「(でも、仕事も早くなったし、かっこよくなったからもうMOBさんって呼べないかもね。)」

「(たしかに~!)」


「なんだか、女性社員達がこっちをちらちら見ながらコソコソ話してる…怖い…。まあ、いきなりこんなに痩せちゃったしな。そりゃ噂くらいされるか。」


着々とMOBを卒業しつつある信之であった。


仕事から帰宅した信之は、ご飯を食べて、経験値の間へと行く準備をしていた。


「よし、靴も履いたし、剣も持った!経験値の間へ転送してくれ!」


ーーーーーーー

経験値の間へ転送を開始します。

ーーーーーーー


意識が一瞬飛び、目を開けると、青い空、白い雲、そして草原の中。間違いなく経験値の間だ。


「よし、着いたな!今日もいっぱい稼ぐぞ!!メタルスライムカモン!!」


テンション爆上がりの信之はそこら中のメタルスライムを根絶やしにしていった。





「よし、こんなもんかな…ん?」


そろそろ狩りを終了しようとした信之は、ふと辺りを見回すと前方にぽっかりと穴が空いている箇所を確認した。


近づいてみると、そこは階段となっており下に続いているようだ。


「2階層に行ける道か?ちょっと怖いけど…行ってみるか…。念の為、スキル取っておこう。」


ーーーーーーー

平信之


職業 剣士

種族 デブを卒業せし凡人(筋肉質)


Lv 17/30 →28

HP 305 →475

MP 102 →110

ATK 180(245) →250(315)

DEF 80 →120

INT 35 →38

AGI 40 →45

スキルポイント 200 →50


スキル

「鑑定」、「獲得経験値増加Lv1」、「スラッシュ」、「十文字スラッシュ」、「バックスタブ」、

「攻撃力増加Lv1」

ーーーーーーー


今回の狩りで、バックスタブと攻撃力増加Lv1のスキルを獲得した。


バックスタブは相手の後方からダメージを与えるものであり、攻撃力増加Lv1は文字通りでパッシブスキルだ。


「バックスタブはまだ使ったことないけど、背後からの攻撃だろうし、何となくわかるから大丈夫だろう。…よし、行くか。」


階段を降りていくと、少し大きめな空間へと出た。壁面は輝く石があちこちにあった為、そこまで暗くはなかった。


「こういう空間って、基本ボスキャラいる気が…あ、いた…。」


前方に鈍色の蛇を発見した。蛇は3メートル程の大きさでとぐろを巻いてこちらを見ていた。

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