第4話 MOBゆきの力

「そういえば、どうやったら帰れるんだろう…。」


剣士になってからそこそこメタルスライムを狩り、お金もある程度貯めた信之は呟いた。


ーーーーーーー

平信之


職業 剣士

種族 デブを卒業せし凡人(筋肉質)


Lv 1/30 →17

HP 180 →305

MP 90 →102

ATK 100(165) →180(245)

DEF 46 →80

INT 30 →35

AGI 25 →40

スキルポイント 350 →200


スキル

「鑑定」、「獲得経験値増加Lv1」、「スラッシュ」、「十文字スラッシュ」

ーーーーーーー


「ネックレスが原因でここに来たとなると、ネックレスを使えば家に帰れるのかな…。」


信之は、誘いの門鍵を握って帰りたいと願った。


ーーーーーーー

自宅に転送が可能です。

転送しますか?

ーーーーーーー


「はい、お願いします。」


帰れることにほっとしたせいか、何故が丁寧な返しになってしまった信之。


承諾した瞬間体が光った。


「…お、帰れてる…。いや、帰ってきてしまったか…。」


周りを見ると、狭く汚い部屋にいた。紛れもない信之の家だ。


「あ!体…。」


経験値の間では痩せていた体をすぐさま確認する。


「痩せたままだ…。てか手に剣持ってるし…!これそのまま外出たら銃刀法違反だわ…。てか家でもショートソードって持ってていいのか?」


銃刀法違反について考えてみたが内容を知らないし知ろうとも思わなかった。それよりももっと大事なことがある。


「てことは…樋口センパイも持ってこれているのでは…?(ごくっ)」


財布を見てみると、中には5000円札が大量に入っていた。150万円以上はありそうだ。


「うはー!ヤバすぎる!!…あとはこれが本物かどうかか…。明日会社行く前にATMに行って預けてみて、正常に処理されるか確認してみよう…。てか今何時よ…。」


スマホで時間を確認したところ、仕事から帰ってきた時間から進んでいない。どうやら経験値の間に行っている時はこちらの時間は止まっているようだ。


「なるほど、現実の時間は止まったままなのか。とりあえず、汗も流したいし、ご飯も食べたい…。明日も仕事だから、お風呂入ってご飯食べて寝よう…。」


汗を流し、ご飯を食べた信之は、泥のように眠るのであった。


次の日、信之は止む負えず仕事を休むこととなった。


その理由は、下着やスーツが大きすぎて少し歩くだけで脱げてしまうからだ。


仕事を休んだ信之は、大きすぎる服で(とは言ってもいちファッションとしてそこまでおかしくは無い。)下着やスーツ、普段着を購入した。また、靴においても少し良さげのものを買った。


ちなみにお金は本物であった。ATMにお札を入れる際に本物じゃなかったらどうしようとかなり狼狽したのは内緒だっ。


「痩せたし、なかなか気に入ったスーツも買えたから、少しモチベーション上がったなぁ。明日の出社が楽しみになるなんて、何年ぶりだろうか…。いや、今までにそんなこと無かったな…。」


今までにない、仕事へのモチベーションを感じながら、渋谷をうろついていると…。


「泥棒だ!!捕まえてくれー!!」


大声が後ろから聞こえてきた為、振り向くと帽子被り、サングラスと黒いマスクをした男がナイフを振り回しながらこちらに走ってきた。


「邪魔だクソっ!殺すぞ!どけぇー!」


今までの信之なら確実にMOBゆきとして、何もせずに傍観や避難をしていただろう。だが今は痩せていて、レベルも上がっている剣士だ。


確実にこの強盗犯を組み抑えることが出来る自信があった信之は、強盗犯の前に立ち塞がった。


「邪魔だァ!!死ね!!」


強盗犯はナイフを振り回しながら信之に切りつけようとするが…。


「遅すぎ…。ほれ。」


信之は人差し指と中指で白刃取りをし、更にそのままナイフを握り捻る事で強盗犯からナイフを奪った。


「なっ…何しやがる!!クソが!」


焦った強盗犯は信之に殴りかかる。


「…やっぱり遅いな。ボディがガラ空きだわ。」


誰にも聞こえないような声量で呟きながら、信之は強盗犯の鳩尾へ拳を突き立てる。


ドゴッ!!


「…おえっ…。」


強盗犯は白目を剥いてその場に倒れた。


「すげー。ナイフどうやって奪ったんだよ。」

「あのパンチやばすぎだろ。見えなかったぞ!」

「動画上手く取れたわ。Twitterに上げるわ!」


渋谷なのでかなりの人が集まっていたようだ…。


「君が強盗をやってくれたのか!?本当にありがとう!店の売上金が盗まれずに済んだ!」


ちょっとお金持ち風なナイスミドルからお礼を言われた。


話を聞いたところ、どうやらブランド品の買取ショップのオーナーだったらしくかなりの金額を持ち運んでいたそうだ。


流石に人も多く、スマホでこちらを撮っている人も散見されあまり気分も良くはなかったので、ナイスミドルの御礼話は途中で切らせてもらって帰路に着いた。強盗犯は周りの人が警察を呼んでいたのでそのまま御用だろう。


「やっぱり俺…とんでもなく強くなってるな…。全く本気で殴ってないし…。本気を出すと色々と問題があるかもしれない。もしかしたら捕まって人体実験とかされたり…。目立たないようにしないとな。」


明らかに現実離れした強さに軽く辟易した信之であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る